DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2009.06.29

第23号 泉川ピート氏の技

 泉川ピート氏の姿を、初めて拝見したのはブラウン管の中だった。フジサンケイ・ゴルフ選手権の最終ホール、当時30???才のピートは優勝を手中にいれ、ハーフ独特の彫りの深い顔で、日差しの強い18番ホールを歩いていた。

「今、体を作ってるんですよ。シニア向けに改造するまでに2、3年費やしながら・・・・東さんも少しシェイプアップして・・・」

 長沢純さんの、コンペに招待され北海道の空知にあるゴルフ場の芝は、このあたり独特の粘りがあって重い、ラフは禁物。というより、ラフに打ち込んだらボギーを覚悟しなければならない。

ピートの玉は、右からの強い風と、ドロー回転に迷いながら、グリーンまで120ヤードの深いラフ、しかも完全なスタイミーな杉の木の真後ろの根本に落下した。・・・・・・・チャンス到来、私は、グリーンまで130ヤードの
フェアーウェイとラフの境界線。

 さっきまで、付き合いゴルフに徹していたピートは、8番アイアンで、慎重に素振りを数回し、気の真後ろでアドレスを取った。・・・・まさか・・・。
 次の瞬間、強い向かい風のなか、ほぼグリーンの20ヤードほど左に放たれた玉は、目の前の木を高く越え、さらに強烈にスライス回転で右にブーメランし、ピンの根元に着地した。

 「生まれ変わっても、こんな芸当はできない。」

”プロとは、どんな状況でも、慌てない嘆かない技術者のこと”