DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2015.02.09

Fine Tuning♪ 撮影:指揮者・原田慶太郎氏

 歌い手が聴衆と同化した瞬間に、会場は静まり返った。
 すべての呼吸が止まり、瞬きする音すら聞こえない。
まるで、動きの止まったモノクロームのフォトグラフのような瞬間が静止している。
 
 傑作を生むのは、作曲家でもなければ、聴衆でもなければ、音楽でもない。
 音というものが昇華して、何かのはずみにすべての「あたり」を融合するのだ。

 やがて、生も死も存在しない、永遠というサムシングが聞こえるような気がした。

                        (月刊「美楽」2015年3月号より)