COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.03.25

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第53号 シニア族にますます高まる健康志向 『フィットネスクラブ売上高2886億円』

 4月から「特定健康診査・特定保健指導」が始まる。この制度が追い風となって、日本のあらゆる会社がシニア向けの健康支援プログラムなどを始めようとしている。それにともなってフィットネス業界やスポーツ用品業界もシニア向けの営業を強く促進している。

 健康志向は強まる一方だ。昨年は「7日間集中してエクササイズすればダイエットが可能」をキャッチフレーズに「ビリーズブートキャンプ」がテレビ通販で爆発的な人気を呼んだ。映像ソフトも見る間に100万セットを売り上げたという。
ま、ブームが去るのも早かったが・・・・・・。

 1980年代のバブル時代、年間200施設が新規開業して活況を呈していたフィットネス業界は、バブルの崩壊とともに大低迷期に突入したが、十数年経って再びにぎわいをみせ始めている。

 続々と定年退職を迎えつつある団塊世代や、急速な高齢化、さらに医療費の負担などの増加を考えると、今後どんどんフィットネスクラブやスポーツクラブがシニア世代の会員を増やしていくのは明らかである。

 平成17年の経済産業省による特定サービス産業実態調査のフィットネスクラブ編では、40歳以上の個人会員数が約155万人で、総個人会員数約385万人の4割を占める。これに法人会員利用のシニア世代も加わればかなりのものになるだろう。

 経済産業省の特定サービス産業動態統計調査では、平成19年の総売上高は2886億円。いわゆるメタボリックシンドローム対策として、またストレス解消として都市型のクラブは続々と会員を増やし、いまや接待先にまでなっているという。

 私なども確実にメタボのひとりであるが、いまだにたばこも酒もやめられずにいるのは、ストレスを発散させる方法を見つけられずにいるからである。

 政治も経済も不透明感が強まっている。この先、社会不安が増せば増すほど、個人の「守り意識」から一段と健康志向が強まり、フィットネスブームに拍車がかかる。
世の中の風潮が薄っぺらな「健康至上主義」に走らなければいいが。


2008年3月25日号


2008.03.18

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第52号 ネット利用者は常に被害の恐れ 『不正アクセス認知件数1818件』

 耳慣れない言葉ではあるが、平成12年2月に施行された不正アクセス禁止法。IDやパスワードなどの不正な使用やその他の攻撃によってアクセス権限のないコンピューター資源へのアクセスを行うことを犯罪とした法律である。そもそもこの法律自体が施行されて数年間経っており、ドッグイヤー的にいえば、数十年前の法律ともいえるほど老廃化している。

 不正アクセス行為の認知件数は年々増加している。警察庁によると、平成17年に592件であった不正アクセス行為の認知件数が平成18年には946件、昨年は1818件と、ここ数年倍増に近い数値を重ねている。

 不正アクセス後の犯罪行為で最も多いのはインターネットオークションの不正操作件数。平成18年の593件から昨年は1347件。次いでオンラインゲームの不正操作が246件。インターネットバンキングの不正送金は前年の39件から113件と急増。水面下の数をカウントすれば、おそらくこの数倍の不正アクセスが行われているともいわれている。

 これはそもそもハッカーによるハッキング犯罪であるが、その定義は他人のID、パスワードを盗み取り、その者になりすましてアクセスを認知する高度な犯罪である。認証サーバーをだまし、そのシステム内にある端末を不正に利用するなど、高度に学習をした犯人によるものである。

 不正アクセス禁止法によると、罰則規定は1年以下の懲役または50万円以下の罰金と極めて軽い。一家に1台パソコン、1人1台携帯電話の時代になっている今日、ハッカー等の犯罪者とそれを利用する一般庶民の知識の差は、大人と乳幼児ほどの開きがある。パソコンや携帯電話などのメーカー側でよほどのセーフティネットされたものが販売されない限り、インターネットに手を出した瞬間にハッカーのターゲットになるというケースは今後とも増加するのであろう。

 警視庁では平成12年にハイテク犯罪対策総合センターを設立し、優秀な技能者を数千人採用しているが、不正アクセス犯とのイタチごっこは終わりそうにない。


2008年3月18日号


2008.03.11

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第51号 首長は「宣伝部長」になった方が評価される時代 『宮崎県庁観光客1カ月3万人』

 ご存じの通り、宮崎県がすごい。いったい県知事の役割というのは何なのだろうか考えさせられる。就任2年目となった宮崎県の東国原英夫知事は八面六臂の活躍ぶりだ。

 県をひとつの会社としてたとえるならば、県知事の役割は社長であり、総務部長であり経理部長であると思う方がほとんどであろう。実際、現在の宮崎県の状況は、知事イコール広報室長、あるいは宣伝部長の役割も兼ね備えている。

 たとえば、県庁によると1日平均300人から600人だった県庁見学ツアーの参加者が1000人に達している。つまり1カ月に3万人の県庁観光客が訪れることになる。
もちろん、知事のイラストなどが入った商品は昨年の5月頃から前年比5倍の売り上げで推移し、現在に至っても、このブームは尻上がりに伸びている。

 プロ野球などのキャンプで、宮崎県の来訪者が増えたため、昼間はキャンプに行き、夜は宮崎県のお土産を買うという相乗効果型のマーケットが誕生している。さらに県の観光リゾート課によると、昨年は社会人や学生を合わせて446団体が宮崎県で春季キャンプを実施し、キャンプによる経済効果だけで125億円。もうこうなってくると、巨大な宮崎デパートの誕生である。主力商品の地鶏や東国原英夫グッズ、いわゆる“そのまんま経済効果”といわれるマーケットは日本全国に勢いを広げている。

 テレビの番組表で東国原知事の名前が出ていない日を探せないほど、毎日宮崎PRのためにテレビに出ずっぱりの日々である。

 宮崎県のPR効果はいまや九州全土に及ぼうとしていて、「ANAセールス」の九州ツアーの参加者が対前年同期比110%で推移しているし、九州圏内のホテルも土曜日、日曜日は徐々に満館になっていると聞く。

 昨年、財政破綻で有名になった夕張以外にも1000に近い市町村が、財政が窮乏し破綻寸前にあって、県知事はもちろんのこと、市長、町長、村長にいたるまで、経済部長というよりは宣伝部長という役割に徹した方が、行政の責任者として評価される時代なのかも知れない。


2008年3月11日号


2008.03.04

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第50号 独身オトコよりも犬や猫がカワイイ! 『ペットを飼う独身女性「恋人が欲しい」55%』

 相変わらずペットブームが続いている。完全に把握しきれない数字も含めて、どうやら3000万匹以上の猫と犬が日本で愛玩されているらしい。

 不動産開発会社「リブラン」の研究所が昨年11月、首都圏の20歳から44歳の独身女性にインターネットで調査した結果、現在、彼氏のいない人に恋人が欲しいかどうかを聞くと、ペットを飼っている女性は約半数の55%だった。裏返せばペットを飼う女性の約半分は「ペットがいるから男はいらない」というふうにも読み取れる。
ちなみに、ペットを飼っていない女性は71%が「欲しい」だった。

 さらに、結婚を「非常にしたい」と答えたのは、ペットのいない女性で29%、ペットのいる女性は7ポイントも少ない22%だった。つまり、ペットのいる女性は結婚願望も比較的弱め。ペットとの生活がボーイフレンドや結婚への関心をうせさせ、面倒くさい男と生活を共にする必要はない、と考えている。

 考えても見れば、男女平等の世の中とはいえ、炊事や洗濯、育児などはまだまだ女性の負担になるのが現実。
たとえ恋愛中であっても、会いたくない時にデートに誘われたり、さして行きたくもない店での食事など、時間を拘束されるのも気が重い話なのであろう。

 最近、街を歩くとゴールデンレトリバーやポインターなどの大型犬と早朝散歩をしている女性の姿もチラホラ目につく。また、駒沢公園辺りに行くと、小さな犬とペアルックでベンチに座る女性がいたいりする。今やペットは男性よりも完全に愛される存在となっている時代である。

 ペットを飼う理由はさまざまであろうが、独身男性にチャンスがあるとすれば、この回答に注目したい。独身女性がペットを飼い始めた理由でもっとも多かった「一人で暮らすのは寂しいから」というもの。

 こうなってくると答えはひとつ。まず好みの女性がいたら、ペットの有無を聞くこと。次にもし、その女性がペットを飼っていなかったら、あなた自身が可愛いペットになるしかないのである。「彼女ナシ独身男」の最大の強敵は、犬や猫だということをゆめゆめお忘れなく。


2007年3月4日号