COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

2008年7月14日 | 2008年8月4日

 

2008.07.28

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第69号 景気悪化で中止の憂き目  『花火大会年間7000件』

 江戸時代から日本を代表する伝統芸能ともいえる花火大会が、不況のため続々と中止になっている。

 社団法人日本煙火協会のデータによると、1年間で開催される花火大会は7000件程度。隅田川花火大会のように約2万発というものから、数百発程度の小さな規模のものまでまちまちである。

 花火大会の際には、打ち上げ場所と建物などの間に安全な距離(保安距離)を確保しなければならないため、大きな河川や海岸が選ばれる。
しかし、首都圏のある花火大会では、河川の横にマンションが建設され、保安距離が確保できなくなったことで中止となった。
 また、ある大会は自治体の予算がなくなったり、スポンサーの協賛金(寄付)が獲得できなかったなどの理由で中止に追いやられた。

 花火大会というイベントは景気に非常に左右されやすい。このところの企業業績の悪化、あるいは消費の低迷で、特に地方の中小の花火大会の減少が目立つ。今後とも協賛金集めに四苦八苦するのは間違いない。

 減少の背景には、小泉内閣時代に進められた地方自治体の合併問題もある。約3200の市町村が約1800に減少した結果、支援を取りやめた自治体が出てきているのだ。

 花火は火薬を扱うため、製造保管などの厳しい法規制のもと厳重に管理されている。業界では、170社、市場規模が150億円前後の市場である。したがって零細規模の業者が多く、大きな業者でも従業員20人程度で、脈々と花火文化を受け継いできた。今後の花火大会を考える上で、原油高による製造、運営コストの上昇は深刻だ。特に花火は金属を混ぜ合わせて固めたものであるだけに、金属価格の高騰は痛手となる。

 また、イベント開催時の警備などの安全対策費用などを考えると、この夏の風物詩の運営方法も柔軟に考えなければならない時期にきている。
例えば、埼玉県秩父市では、プライベートな花火大会を受け入れており、誕生日や結婚記念日などのイベントでの利用も出始めている。

 日本の歴史と伝統を守る上でも、何とか存続して欲しいものだ。


2008年7月29日号
 

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