2007.04.24
日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第14号 女性スモーカー増加のワケ 『全国の喫煙者数2733万人』
飛行機の中はもちろん、ホテル、レストラン、場合によってはマンションにおいて、スモーキングエリアが少なくなってきている。というよりも圧倒的に禁煙である。
JTの2006年全体たばこ喫煙者率調査によると、喫煙者は男性が41.3%(2066万人)、女性が12.4%(667万人)、全体が26.3%(2733万人)。成人男女の4人に1人がスモーカーである。
1日に吸うたばこの本数が最も多いのが50代で、男性が25本。最も喫煙者率が高いのが30代(57.3%)である。
たばこの総販売本数のピークは、1996年で3483億本。日本人1人あたり1日8本吸っていたことになる。そしてこのピークを堺に総販売本数も1人あたり消費本数も減少傾向に向かう。特に50代の喫煙率は前年比約7%の減少だ。
昔は、未成年であるにもかかわらず親の目を盗んで、喫茶店にたむろしてたばこを吸ったものだが、その動機は、早く大人になりたいという憧れであったり、社会に対する反発だったような気がしてならない。
最近は、どうも様子が違うみたいだ。たばこの銘柄数も増え、さらに嗜好にうるさい女性をターゲットにしたたばこが増えた。パッケージやデザインもおしゃれになった。こうしてたばこの選択肢が増える中、たばこをおいしく吸う純粋な嗜好者が増え、なんとなくスモーカー派が、禁煙ブームで激減したということではなかろうか。
不思議なのは、50歳以上の女性の喫煙率が増加していることだ。さらに、全体をみても男性の喫煙率は年々減少しているにもかかわらず、女性の喫煙率が逆に年々増加の一途をたどっている。たばこという嗜好品がもし、ストレス解消の道具だとするならば、社会進出をした女性や、熟年女性のストレス度が日に日に高まっているということか。
2007年4月24日号
2007.04.17
日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第13号 クルマ離れ深刻 『新車販売358万台』
クルマ離れが深刻だ。日本自動車販売協会連合会が発表した06年度の国内新車販売台数(軽自動車を除く)は、前年度より8%強減って約358万台となり、4年連続で前年度比マイナスとなった。ピーク時の90年度に比べ231万台もの減少だ。
中古車も売れない。
06年度の登録台数は17年ぶりに500万台を割り込んだ。頼みの軽自動車も07年度は2%以上の減少になるとみられている。
実は、都内に住む私の友人もこの春、長年乗ってきたジープ・チェロキーを手放した。
「子供もいないし、ホント乗らなくなった。維持費、ガソリン代を考えると年間50万円以上かかる。もったいないから売っちゃいましたよ」
彼の言葉の中に、クルマ離れの一因がある。コスト高である。
税金、保険、ガソリン代、駐車場代、高速代。都会生活では、クルマを持つことは、家計のリスク要因になっているのだ。
もちろん、それだけではない。渋滞、飲酒運転取り締まり強化、駐車違反取り締まり強化など、クルマを取り巻く環境の変化も見逃せない。
だが、最大の要因はなんといっても、魅力がなくなったことではないか。メーカーがどれだけ新車を投入しても、その販売効果は長続きしない。SUVがはやれば、各メーカーこぞって同じようなラインアップをそろえてくるから、とんがったクルマが出てこない。
慣れ親しんできたクルマが生産中止になって、知らない車名が氾濫しているメーカーもある。これでは販売店に足を運ぶ気にもならない。
一方で、「若者たちを中心に関心がケータイやパソコン、AV機器などに移ってしまい、高額商品のクルマが見向きされなくなってきている」(知人のコンサルタント)という分析もある。
「週末はカノジョとドライブ」という時代ではなくなってきているのだ。
ユーザーの関心を引き付ける魅力あるクルマづくり、画期的なカーライフの提案、これらをメーカーが行わなければ、クルマ離れは止まらない。
その結果、輸出、現地生産依存に拍車がかかり、国内生産、雇用に暗雲が立ち込めることになる。
2007年4月17日号
2007.04.10
日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第12号 “ハデ婚”復活の兆し 『結婚式費用397万円』
最近のカップルが、新婚旅行までも含めた結婚式にかける平均費用は、397万円(06年)と、再び増加傾向にある。
これは結婚情報誌ゼクシィの調査結果だが、前年よりも15万円アップした。
景気回復ムードの中で、ひところはやったジミ婚は敬遠されているのだろうか。しかし、格差拡大で先行き不透明の時代の中にあって、若いカップルにとって400万円は極めて重いコスト負担である。
数字をよく見ると、結婚式に際して親や親族からお金を借りた人が全体の75%を占め、平均援助額は約180万円である。としても200万円以上が、若いカップルの負担になる計算だ。もちろん、お祝い金で相当額は回収できるだろうが。
気になる結婚費用の内訳を見てみると、増加の原因がハッキリ浮かび上がってくる。結納や会場費、婚約指輪代などは前年とあまり変わっていないのに、挙式、披露宴・パーティーの総額が跳ね上がっているのだ。招待客数は約75人で一緒だから、1人当たりの披露宴・パーティ費用が4万円から4万6000円にアップ。ハデ婚が復活し始めたかのようだ。
本人たちの意向で華やかさを求める傾向が強まっているのか、親族の顔を立て、会社の上司の顔を立て、しかたなしに高額な結婚式に望んでいるカップルが多いのか。
定かではないが、本当に必要なコストなのか、疑問に思えてしかたがない。
だいたい、いまや年間の離婚件数は26万組にも達する。結婚して5年未満で別れる人の数が4割近くになることを考えると、結婚式の高騰化を喜んでいるのは結婚産業だけではないか。
友人のJTBメディアクリエーションの平尾政彦社長が「モバイルバード」という、パソコンや携帯から挙式や披露宴に参加するという商品を扱っている。遠方からはるばる出席するコストがかからないし、老人や体の不自由な人にとっても、実に合理的な商品である。こんなスタイルがあってもいい。
手弁当で友人とパーティー形式の披露宴を行い、余ったお金をお世話になった母校や社会福祉施設に寄付するぐらいのカップルはいないものだろうか。
2007年4月10日号
2007.04.03
日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第11号 就職する前に起業のススメ 『1円起業1613件』
サラリーマンで上司に羽交い絞めにあい、部下に陰口をたたかれるよりは、ひとり気ままに好きな仕事をして食べていきたい。組織に所属する者の永遠の夢である。
資本金1円で会社を設立できる特例ができてから、この1円起業は続々と増えた。この特例は廃止されたが、新「会社法」の成立により、1円起業は恒久化された。
最低資本金等の規制に関する特例が施行されてから3年で設立された企業は3万6000社弱。うち1円会社は1613社。企業のリストラで現実に目覚め起業した中高年から趣味と実益を兼ねようとした主婦、ネット系で気楽にとグループで会社組織をつくった学生、既に一定の技研や研究成果を持ち合わせた大学の研究者など、その中身はまちまちである。
私は以前会社勤めをしていた時から、後ろめたい気持ちもなく、別に会社を持っていた。なぜならば、会社の事業やビジネスモデルに属さない能力を生かす場面が多々あったからだ。
知り合いのケースを紹介しよう。週末に高級花を育てるある企業の役員の蘭は、1本十数万円になるという。
iモードを開発し、ウーマンオブザイヤーを受賞した松永真里も、プロジェクトを離れた後に本を出版し、その印税や講演収入が、そこそこ生活の糧になったと聞いている。
大学生諸君は就職をする際に、既に会社を起業しておいて、就職した会社と業務委託契約あるいは顧問契約という形をとった方が賢明なのではなかろうか。社員じゃなくても結構ですから、うちの会社と顧問契約を結んでください、と。
会社の社長である以上、社会的責任はもちろんのこと、2年、3年、ひいては将来のことも考えた自己啓発や能力開発を余儀なくされる。
会社側にとっても新入社員の給料がたとえば25万円で年収300万円としたら、300万円の顧問契約を結べばいい。保険負担はなくなるし、失業保険もなくなる。
結果的に、日本全体のビジネスパワーを底上げすることになるはずだ。
2007年4月3日号