COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.05.19

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第60号 乳幼児だけでなく大人も集団感染 『百日咳の子供患者急増昨年の2倍664人』

 国立感染症研究所感染症情報センターの調べでは、百日咳の患者が今年は過去10年間と比較して急増していることが判明した。
国内の小児科3000カ所からの報告によると今年に入って確認された患者数は3月時点で664人。昨年同期の331人の約2倍。大人も含めた全体の患者数も急増しているといわれている。

 百日咳という風邪の一種のように思われるが、まったく異なる。症状こそ風邪に似ているものの、春から夏にかけてが流行のシーズンで、大人の場合は厳しい咳が何週間も続くが、比較的症状が軽いので何げなく放置しがちだ。このため百日咳に気がつかないケースが珍しくない。

 そのため、大人が感染源になって家に持ち帰り、ワクチンを接種していない乳幼児に感染させてしまう場合がある。感染した乳幼児は大人と比べると症状が厳しく、肺炎のほか、手足の麻痺、目や耳の障害など、後遺症が残るケースもある。さらにこのうち0.2〜0.6%の乳幼児は死に至ることもある。

 日本では生後3カ月以降に4回のワクチン定期接種の機会があるが、ワクチンの効果は日が経つにつれて減少するため、大人になってから感染してしまうケースが近年増加しているのであろう。

 大人への異例の集団感染が、大学のキャンパスなど各地で起きている。
たとえば香川大学では昨年の5月から6月、なんと120人の学生と教職員が集団で百日咳にかかり、10日間休講になった。また7月には高知大の医学部で、咳や鼻水が出ると訴える学生が146人も。調査してみるとその4割に百日咳菌の痕跡が見つかった。

 今後、この百日咳はどうなるのであろう。北里研究所では百日咳菌が変異して、ワクチンが効きにくくなっている可能性を指摘する。しかも、昨年の集団感染では菌がほとんど採取できておらず、変異菌が出没したかどうかも判明していない。咳やくしゃみの飛沫で感染力が強い百日咳であるが、乳幼児をお持ちのあなたは十分に気をつけなければならないし、少なくとも今年も百日咳が猛威を振るうことは間違いない。


2008年5月20日号