COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.02.26

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第49号 薬物はときには国家を滅ぼす! 『覚醒剤の検挙人数年間1万3000人』

 クマネズミと少女売春と覚醒剤の密売は、複雑化した日本社会の中で、それなりに姿かたちを変え、闇の中でその繁殖率を高めている。

 今回、取り上げるのは覚醒剤。先日、都内有数の住宅地である世田谷区を舞台に公然と密売を行っていたイラン人が検挙された。客は会社員やOL、さらに大学生である。この事件の場合、ボスといわれるイラン人が携帯電話で客と売買交渉をし、薬物の保管先と住居を兼ねたアパートから覚醒剤を持ち出して買い主と接触する。
近所に小学校や中学校があり、売買の場所は主婦などが利用する生活道路とくれば、ほとんど疑う人もいない。

 密売人の背後には大掛かりな密売組織があることが簡単に予想がつく。しかも年間売り上げは数億円といわれる。

 一連の薬物事犯の検挙者数は、覚醒剤、コカイン、ヘロイン、アヘン、大麻などの合計で年間1万5803人(平成17年)である。芸能人が大麻で逮捕される事件も相次いだ。

 薬物がときには国家すらも滅ぼすということは、すでに歴史で証明されているが、薬物の中でももっとも恐ろしいといわれる覚醒剤が全体の8割を占めて、1万3346人と圧倒的な数となっている。

 警察庁刑事局組織犯罪対策部では、来日外国人による不法輸入の取り締まりを強化している。イラン人、ブラジル人など、海外の薬物密売組織への対応は積極的ではあるが、残念ながら大きな効果はみられていない。

 知人の医師から、日本人はこの手の薬物を使用した場合、酩酊状態よりも覚醒状態を嗜好する民族である、という話を聞いた。依存性が強く、いったん毒牙にかかったら、地獄から抜け出せなくなってしまう。さらに覚醒剤犯の増加は、次の凶悪犯行を誘発する恐れがある。これ以上、事態を放置してはダメだ。一日も早く有効な対策を講じていかなければならない。


2008年2月26日号


2008.02.19

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第48号 住宅不況でダチョウが人気 『ダチョウ飼育場日本全国450ヵ所』

 行政不況ともいわれる昨今であるが、中でも建設業界の売り上げ不振は著しい。住宅建設許可がシビアになるだけではなく、認可が遅れるため全国の戸建て業者をはじめ、マンション業者まで、2年前、3年前の建設ラッシュがウソのように、大幅な売り上げ不振にあえいでいる。

 そんな中で、ダチョウを飼育する建設業者が急増中だ。全国で450ヵ所の飼育場があるという。なぜダチョウなのか。それにはいくつかの理由がある。ひとつは折からの健康ブームにあって低カロリーであること。
しかも鉄分やミネラルも牛や豚と比べて、かなり豊富。2つ目の理由は、肉がやわらかく臭みもないこと。全国チェーンの外食店やスーパーから肉の引き合いが相次いでいる。

 さらに良いことに、繁殖率も高い。ある業者は10羽のひなを入手し、せんべいや野菜をエサに今では35羽になっているという。

 ダチョウ自身の適性も大きい。気候の変化に極めて強く、極端な話、零下から夏の猛暑まで耐えられる。性格的にも寂しがり屋で、一度飼うとオリから逃げようとしないらしい。

 このダチョウブームに建設業者だけでなく、各自治体も注目し始めている。例えば山形県の朝日町は、閉校になった県立高校の跡地を県内の建設業者に無償で貸与し、地元特産のリンゴで育てたダチョウの肉を「アップル路鳥」としてPRしている。

 さらに山形県の建設会社は約3ヘクタールの敷地に「しろとりだちょう村」を建設し、週末には100人以上の来場者を迎えている。ダチョウの肉を加工したサラミやダチョウの皮の財布、ダチョウの卵を使ったアイスクリームなどアイデアも豊富だ。

 考えてみると、3年ほど前、BSEがわが国で問題になった頃、牛以外の肉を確保するために候補のひとつとしてダチョウの肉というのも議論された。今回のブームをきっかけにダチョウの肉の認知度が上がり、外食チェーンがメニューに加えたり、有名人のダチョウ肉ダイエットでも始まれば、日本人の食源のひとつとして広く普及するかもしれない。


2008年2月19日号


2008.02.05

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第47号 米クリスマスセール同様の巨大なニューイヤーマケット 『小中学生のお年玉2500億円』

 萎縮する日本経済の中で、無視できないマーケットがある。
お年玉の“市場規模”だ。

 小学館が昨年、小学生に実施した調査によると、別居している祖父母からもらったお年玉の金額は平均約1万1500円。その他の親戚からは約1万9000円。ちなみに隣近所の人からは約3300円で、それ以外の知り合いから約5500円と大変な臨時収入となっている。

 調査を始めた2003年と比べると、祖父母や親戚は600〜900円増、一方、隣近所の人に関しては800〜900円ほど少なくなっている。また、もらったお年玉の総額は平均2万5300円で、2003年より1500円も増えている。

 少子高齢化を境に悩ましい問題もいくつか抱えている。例えば、自分の家には子供がいないが、3人の子供を持つ友人がお正月に遊びに来たとしよう。正直に言って金銭的にも負担だし、先方からのお返しもない。こうした場合のお年玉に関するマナーについても、儀礼的なものなのか、義務的なものなのか、子供の権利なのか、はっきりとしたルールはない。さらに1、2歳児などのプレゼントやお年玉のありがたみがわからない子供たちにはどう対応していいかも難しい問題である。

 さて、もし1人が平均2万円のお年玉をもらっていると仮定すると、小中学生のお年玉市場は2500億円もの市場となる。このお年玉の大半は一体全体何に使われるのであろうか。オモチャや洋服、あるいはゲームセンターなどの遊興費だと仮定すると、アメリカのクリスマスセールと同様に、実は想像以上に大きなニューイヤーマーケットが存在していることとなる。

 お年玉をあげることが必ずしも義務でないとするならば、子供たちに読んでほしい本をプレゼントしたり、見てほしい映画のチケットをプレゼントしたりして、大人たちから子供たちへ金銭感覚より、文化感覚をプレゼントするのもひとつの知恵ではなかろうか。


2008年2月5日号