2008年6月2日 | 2008年6月16日
2008.06.09
日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第63号 四川大地震の後遺症でさらに増える可能性 『中国のうつ病患者2600万人』
出張で北京から戻ったばかりだが、巨大な国土の中国でも今回の四川大地震のダメージは大きい。特にオリンピックで海外のメディアが注目していることもあり、その対処には古今濤国家主席も国家的な広報という観点から頭を痛めているであろう。
そんな中国でいま、注目されているのが、うつ病患者の急増だ。その数は2600万人を突破したとされているが、おそらく実数はその2倍、3倍であると推察される。
うつ病は、中国人の考える現代病のひとつとしていわれているが、その他の現代病の中身を見てみると、痴漢やフリーター、子殺し親殺し、アル中まで、経済発展でなおざりにされた現代の人々の病気がラインアップされている。
うつ病が原因の自殺者も急増しており、北京大学がまとめた統計によると、毎年平均28万人以上が自殺している。このうち女性が15万7000人で、男性よりも21%も多い。また、都市部より農村部の自殺率が3倍も高く、農薬を服用したりする自殺者が増えているという。
一方で、都市周辺部の自殺の原因も、ストレスとうつ病が全体の80%を占め、飛び降りなどを中心とした突発的なものが多い。
おそらく、急速な経済発展を遂げた裏で、精神的な発展速度が物質的な発展速度に追いつかず、バランスを崩してしまうケースが多いのであろう。
四川大地震で5000万人以上の被災者を出した中国は、日本と同様にあらためて地震国として再認識されたわけであるが、この地震が原因でさらにうつ病患者が増えることも予想される。
私の友人の中国大使館員は、こに地震の被害は向こう30年は続くと指摘する。中でも心配されるのは地震恐怖症と、地震をトラウマとした一種の精神病だ。物質的なダメージも深刻だが、精神的なダメージの大きさも見逃してはならない。
2008年6月9日号
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