DIARY:夕焼け少年漂流記

古い10件 | 新しい10件

 

2012.12.03

第40号 カーコンカップ

 カーコンカップが開催された。
 関東地方のゴルフ猛者がざっと200人。豪華絢爛の商品を狙い、やってきた。
 幸か不幸か、この日は朝から冬模様の12℃。昨晩から泊まり込んだスタッフが口から白い息を吐きながらコースをチェックしている。企業が開催するゴルフコンペとしては、今年最大級のもので商品総額も数百万円規模と冗談でプレーをする訳にはいかない。・・・・だけに、コースをチェックするスタッフも真剣そのものなのだ。

 中山カントリークラブは千葉県の中でも名門のパブリックコースで、クラブハウスの柱も黒く鈍く、歴史を感じさせる色調、2階にあがると奥の控え室で体を温めるとコーヒーを飲んだ。

 「いいコンペになりましたね」
 林さん(カーコンビ二倶楽部代表取締役)が、僕のタバコに火をつけた。レストランのスタッフが妙に騒々しいと思ったら、今日のゲストの上田正樹さんがでてきた。カーコンビニ倶楽部のテレビコマーシャルの主題歌を午後のパーティで歌ってもらう。

 僕にとっても今年の締めくくりになるイベントである。




2012.11.20

第39号 月刊「美楽」2012-12月号

『焼き芋』

 枯葉を集めて路地の一角で、焚き火をしている子供たちがいた。
 煙たそうな目をこすりながらも、貪欲な微笑を浮かべている。
 
 つむじ風が足もとを通り過ぎると、焦げた葉っぱの向こうに、
 今にも飛び出しそうな焼き芋の“黄色”が覗いている。





2012.11.09

第38号 Peach Aviationの未来

 Peach Aviationの井上社長と話をしていると、やや古いと思われがちな航空業界にも、無限の未来を感じる。
 世界の鉄道市場が200兆円レベルといわれているが、将来の近距離間の移動、つまり一人乗りの人間飛行機のようなものから、2000人から3000人の大量の人を運ぶ大型旅客機まで、この航空コミュニケーション業界の未来は、明るい。

 美楽東海版の大山くんが、若い人材のネットワークを持っていることもあって、富山大学のペンネーム・あんこさんに桃のイラストを書いてもらった。桃の中には、まるで地球のようにたくさんの国や宗教や人間が住んでいて、交通機関が発展すればするほど、それぞれの人々は分かりあい、溶け合い、手のひらの上の桃のようにやがて地球はなっていくのかもしれない。

 そんな話をしながら、僕は、半ば奉仕の精神と好奇心と、井上さんに対する尊敬が入り混じった心でこの会社のクリエイティブを毎日のように考えている。





2012.11.06

第37号 セントラルサービスの広告

 セントラルサービスの広告は、用心しなければならない。気を配らなければならない。気をつけなければならない。
 
 ホテルや宿泊施設やレストランなどで、日本ほど食器の清潔な国はない。どんなに豪勢な材料を使った料理でも、そこに5ミリのまつ毛が付いているだけでぶち壊しである。
 
 先日40年ぶりに行われたIMFの東京大会でも、東京の景色や日本人のホスピタリティや、ましてや富士山などにも真っ白に輝く日本食器の美しさに見惚れたVIPが多数いたという。

 セントラルサービスは、日本の玄関であり、門である。
 この会社が真心を込めて、食器を清潔にし、磨き上げることで、車や時計やカメラやそうそう・・・あのiPS細胞だって随分助けられるのだ。
 
 日本という国がなくなっても、日本人の歴史と伝統はたった一枚の”白い皿”でも受け継がれていく。




2012.10.22

第36号 TMI の遠山友寛先生

 TMIの遠山先生は、簡単にその人柄を語れるような気がするだけに、実は深遠なる弁護士キャリアを歩いてこられたに違いない。
 そのお人柄をあえて簡単に言わせてもらえれば、

「強くて、明るくて、逞しくて、繊細で、情がある」

 この朝も、行きつけのサウナの中で世間話。
 「テレビは本当に軽くて、面白くなくなりましたね」(T)
 「そうですね。テレビが変われば、少しはこの国もよくなりますね」(H) 「大体この政治的な問題は、そこがポイントじゃないんですよね」(T)
 「制作しているディレクターの問題意識がないんじゃないですか」(H)

 この夜、先生の弁護士事務所の近くにあるホテルで“Entertainment/Team Japan”という会合が先生の主催で行われた。この会合の趣旨は月刊「美楽」11月号の3ページ目に御執筆頂いたのだが、要は
“目立つことを何となく避けてしまう「日本人」が主流になってしまい、日本人の文化度が企画商品化してしまった・・・・・”。

 よって、この会合でコンテンツと言われている業界に所属している人が一堂に会し、“もう一度日本人のつまらない文化感を打破するためのエネルギーを結集しよう”という趣旨。
 
 「発起人もいなければ、主催者もいないのが、自然ですよね」(T)
 「・・・・・・・・先生しか出来ないプロデュースですね」(H)

 同じ九州人として、誇りに思う先輩である。




2012.10.08

第35号 浜松町の蘇生

 浜松町の蘇生は、JR山手線の中でも最大の目玉である。
 一日に17万人の乗降客が行き交い、羽田空港も24時間化空港へと向かい、この街は、日本のどの駅よりも国際化された都市になる。

 大門から増上寺へと向かう参道と第一京浜の交差する東南の一角には、この街の住人なら誰もが知る金毘羅うどん屋がある。
 仕事を終えたサラリーマンはまずは、名物の秋田屋の目が開けられないほどのやきとりを焼く煙の中で、数本のもつの串焼きを平らげる。続いて、行きつけの居酒屋で、晩酌セットを2〜3時間ゆっくりとたしなみ、終電の確認を腕時計でチェックした後、残りの数十分で金毘羅うどんを食べにこの店の暖簾をくぐる。
 言ってみれば、この店はこの浜松町に住むサラリーマンたちの一日の最後を締めくくる“締めの店”なのだ。


 この一角に、新しいビルが建造される。名物の金毘羅うどんも三十年近い歴史を閉じることになるようだ。
 創造的破壊なのか、破壊的創造なのか、都市はいつも呼吸をしているが、それが街にとって健全なのか、不健康なのか、誰も検証しない。





2012.09.21

第34号 月刊「美楽」2012-10月号 

『秋の実』
 行きつけの小料理屋のテーブルにすすきが1本置いてあった。こんな時期にどこからすすきが舞い込んだのかと聞いたら、「先日、富士山の麓のうどん屋から頂戴した」とのこと。
 都会では、すすきも見られないし、赤とんぼも飛ばなくなった。季節もなくなり、自然も軽薄になり、人は体温すら原子力で管理されている。

 誰も泣かないし、誰も笑わない。





2012.09.16

第33号 浜松町の芝大神宮「例大祭・だらだら祭り」

 浜松町の名前は江戸時代に人工的に植え込まれた防砂林と、江戸湾から吹きすさぶ強い風から増上寺の表参道を行きかう人々を護るための防風林に由来する。

 芝大門から東京湾に抜ける東への道は、埋め立てられる前の砂浜の形状が今でもイメージできる。
 「芝えび」が豊富に収穫できたのだろうか?だらだらと200メートルほどの浅瀬が続いた後、突然“すり鉢”状の急な傾斜の坂道に変わり、現在の海岸通まで伸びている。

 芝大神宮の「例大祭・だらだら祭り」。どこにこの街の住人がこんなにたくさんいるのだろうか?貿易センターの前で、数十人の祭り人が老若入り混じり山車を、盛り上げている。この日ばかりは、愛宕警察の交通課も駐車違反を取り締まれない。

 今年も浜松町に秋が来る。





2012.09.10

第32号 銀座6丁目並木通りイタリア料理「トラットリア マルタ」

 銀座6丁目並木通りイタリア料理「トラットリア マルタ」に、招待された。
 この店は、ファンケルの宮島会長の行きつけのイタリア料理で、ランチもディナーも驚くほどリーズナブルで、気分よく、滑らかに、食事の時間が過ごせる。
 一般的に、銀座の西洋料理は隣の客人と肘がぶつかったり、時には会話が交錯したり、ひどい場合は、人の携帯電話に相槌を打ったりするほど、ゆとりもなければ、隙間もない。
 しかし、ここマルタは、1畳に1人ほどの広大なスペースにゆっくりと、イカの墨をあえたドライカレーが食べられる。

 壁にたくさんのうさぎの絵がかかっている。
 このうさぎの名前を「マルタくん」と呼ぶらしい。マルタ島のマルタなのか、丸太棒のマルタなのか、その辺はさておいて、このビルの関係者がこの絵の画家であるらしい。目の前でおっとりとワインを飲みながら、笑っている宮島さんとは、かれこれもう20年ほどのお付き合いになる。
 私の知っている経営者の中では、群を抜いて文化的で、上品な逸材である。




2012.08.10

第31号 安藤勇寿「少年の日」美術館

 安藤勇寿美術館月刊「美楽」の表紙の打ち合わせで訪ねた。
 出会ったときから何年経っただろうか。安藤美術館の周辺の山も、森も、風も安藤先生も変わらない。
 変わったのは、ほんの少し、夏が暑くなっていることだろうか。

 美術館に入ると、十数点新作の絵がかけられていた。
 今回の新作は、今までの作風と異なり、テーマが明確になっている作品が多く、いずれの絵もいわば日本人の教科書にすべき題材をモチーフにしている。

 先生は、色鉛筆で丹念に絵を仕上げるのであるが、想像してもお分かりの通り、白色を表現するのがとにもかくにも、大変な作業となる。何十もの色を重ねながら、色の科学的な調合を重ねた結果、「白」に至る。
 写真にある絵は、画面いっぱいにからたちの花が咲いている。
 花びらの白を恐れずに表現しようと思い立つ。そのエネルギーは凄まじいものがある。

 先生と森の中で、絵の話をしていると、久しぶりに海を見たくなる。


古い10件 | 新しい10件