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2013.03.07
第9号 ギター☆マン
ギター☆マンの始まりは、15世紀のポルトガルの宮廷音楽のときに奏でられたリュウトとも言われているが、実は、人間の本能は打楽器にしろ、弦楽器にしろ、管楽器にしろ、音を出すことでコミュニケーションをするのではなかろうか。
そして、この音に群がる瞬間に人々は時代を変えるいくつかの歴史的な事変を迎えることになる。
ギターを手にした人は、日本だけでもおそらく数千万人を数えているはずだ。新宿のゴールデン街を店から店へとギターを弾きながらまわる商売のことを「流し屋」といい、数万人の聴衆をまるでヒトラーのように巨大な音で取り込んでしまうロックギターリストもいる。
女性のエネルギーと神秘性を激しいリズムに変えていくフラメンコのギターリストもいる。
協会の片隅で、懺悔をする少年に聖歌をアレンジして弾いているクラッシカルなギターリストもいる。
薔薇の咲かない北の街の吹雪の中で、僅かな木漏れ日をたよりに、愛する人にギターを奏でる兵士もいる。
こんな具合に考えていくと、ギターの音は、弦というメディアを通して、新聞やテレビや雑誌やラジオでは伝えることもできない心を、気持ちを伝えてきたのではないかと思う。その意味では、地球に住むすべての人々が、ギターマンなのである。
1965年以降、第二次世界大戦のあたりで生まれた巨大な青年の層が、人口的には25億人とも言われている。彼らは、エルビス・プレスリーや、ビートルズといったヒーローを作り出し、そのヒーローは戦う兵士の勲章の変わりにギターをかざした。
その後、日本にも彼らに憧れたたくさんのギターマンが生まれた。彼らと一緒に日本を探しにいく旅に出るのが、ギターマンである。
2013.03.04
第8号 カロライナ
スパゲティナポリタン、ミートスパゲティ。いずれも野菜の小皿付き。
僕にとってはちょっと辛めのビーフカレー。これも野菜の小皿付き。
これらのメニューに、粉チーズを数十回ふりかけると、お皿は粉チーズ以外見えなくなる。この辺りの喫茶店としては珍しく、深夜12時くらいまで開店している。
お酒も飲みたくない、歌も聴きたくない、テレビも観たくない。
しかし、広告を制作しなければならない。
そんな中途半端な気分のときに、僕は、粉チーズをかけることで、少しずつ自分を盛り上げていく。
その意味で、カロライナは僕のクリエイティブの聖地であり、粉チーズに語りかける僕は、少し変わり者かもしれない。
2013.02.22
第7号 銀座きいちのラーメン
きいちの経営者の千葉さんのこと。
もう30年近くも昔のこと。エレベータのない雑居ビルの5階にある深夜の飲み屋があった。飲み屋は、数席のカウンターと10人程度が座れるくすんだ色のソファ席があり、いつも常連で代わる代わる歌を歌っていた。
当時は、今のカラオケの始まりの時代で、それぞれの客が持ち歌を歌っては、深夜まで酒を酌み交わしていた。サントリーホワイトや、所謂だるまと言われたサントリーオールドが、主流の時代で、その中にあって私と千葉さんはなぜかケンタッキーのバーボンを飲んでいた。
カウンターに肘をついて、うずくまるように物静かな黒い陰のような存在の千葉さんは、同じようにカウンターの隅で、腰を丸めて飲んでいる私とどこか意識しあったライバルであったかもしれない。
ちばき屋のラーメンをいただくと確かに日本で一番と味わえるほどの絶品であるが、このラーメンの存在は、私の若い日の悩みや焦りや希望をいつも澄んだスープの中に溶かし込んでいるように思える。
2013.02.13
第6号 光る増上寺
増上寺が光っている。
あの人は夜空を宇宙に向かって歩いていく。
瞼をシャッターのように閉じると、
粉雪が海のように揺れる雪原に、
落ちては溶け、
雪底を凍らせていく。
今度は、瞼を二回開閉すると、
狂乱する群衆の声をかき消すように、
甲高いテノールのオペラ歌手が
乾杯の歌を歌っている。
次に瞼を開閉してみたが、
シャッターの音も、
上瞼と下瞼の開閉音が聞こえない。
笹の葉のような瞼を透かして、今宵は増上寺がライトアップされていた。
天に向かって伸びる灯明がまるで螺旋階段のように回転しながら宙に続いている。
流れきれない星が一つ。
僕の瞼に突き刺さった。
2013.02.08
第5号 MKタクシー様
MKタクシーの広告を創るときに、いつも気にするのが、この会社の爆発的で、奇想天外な、そして何より豪腕怪力で繊細な青木社長の評価である。
外国での事件やトラブルに巻き込まれる日本人が増えていく中で、近い将来、間違いなく起きるのがタクシーを使った凶悪な事件であるように思う。そんな奇妙な予感の中で、エムケイタクシーが上海、韓国、ロスで運行業務を始めるのは、頼もしい。
この広告は、やがて外国での犯罪をモチーフにした社会広告に発展させようと思っている。
2013.01.21
第4号 美楽実演会
古庄幸一さんの実演会を開催した。
昨年の夏から、半ば瞑想的にあたためていた企画で、今年に入ってやっと実現できた。
あらゆる情報が中途半端に大量に、都合不都合関わらず、人間の尊厳から国家の威信まで全く無神経に浮遊している社会。その中にあって、生の話を、生の人から聴ける機会が少なくなった。
古庄さんは、月刊「美楽」の執筆者でもあり、彼の海上自衛隊というキャリアを通しての人間のあり方や、ものを見る視点は、私にとっては教科書であり、時に聖書でもある。
この日、古庄さんの話を聞いて、体が火照るのを感じながら、東京湾の上の黒い大きな島のような船を見ていた。
2013.01.15
第3号 東京で大雪
東京の大雪は、予想通りになってきた。
というのも、地球の温暖化現象により、雲の流れが変わり、その雲に含まれた水分の量が変わり、さらにはエルニーニョなどの海水温度に伴う異常気象が日常茶飯事なのである。
朝の天気予報を見ていても、私の田舎の鹿児島の方が東京よりも温度が10度も低いことが頻繁にあるし、北海道の千歳空港は29年ぶりにマイナス27度を記録し、飛行機も凍結した。
台風のときも、大雨のときも、日照りの深夜も街に出かける。
さすがにこの夜はスリップを避けたせいか、タクシーの数も少なく、繁華街の代表格でもある新橋にも人影がまばらである。
やがて東京の降雪量も記録的な事態を招くことは必至で、さすがのアベノミクスも?雪にはかなわない。
2013.01.10
第2号 2013年海上自衛隊
2013年、海上自衛隊のリクルーティング広告を手がけている。
ふと、考えてみると、日本を守るための組織だということは、誰もが何となく認識しているものの、それでは日本の何を守るのかと、即答できる人は少ないように思う。
人の命を守るのは当たり前なのだが、そのために国土を守るのも何となく理解はできる。その上で、経済を守り、文化を守り、文明を守り、歴史を守る。これらは一体、どのような優先順位で、守るべきなのであろうか。
すべての経済を下部構造として基本概念を置くならば、経済活動なきところに政治、文化は保守できないということに一旦は落ち着いた学説も以前はあった。しかしながら、今世紀に入り、特にIT関連を牽引している経済人のルーツが、国土のないユダヤ人系が大半なのを考えても、やはり守るべきなのは、まさに”日本人間”そのものではないかと妄想したりもする。
1月20日発行の2月号の美楽で4ページもこの広告を連載するにあたり、仮にでも美楽が自衛隊のリクルーティングを手伝う意味を考えておこうと思う。
久しぶりに深夜の書店で、本を数冊買い込んだ。
2013.01.07
第1号 年の初めの食欲
年の初めの食欲を満たしてくれる3軒の店がある。
いずれも銀座と新橋の裏通りにある。
社会人になって、すぐに覚えた牛めしのなんどき屋。
昨年の暮れに発見した銀座三越裏の紫龍。
お歳暮で人にばかりに食べていただくうちに、ついつい悔しくなって、自分で食べにいく魚久の食堂。(これは紫龍の隣にある)
2012.12.05
第41号 芝公園の銀杏2012
篤姫も和宮もこの銀杏を悲しげに、しかし気丈に眺めていたのであろうか。
この場所で、秋の落ち葉を見るたびに、いつも必ず文明開化のことを考える。
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