DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2011.09.29

第29号  ピーターは駅前のギタリスト。

ピーター・ディクソンは、ラテンから、インド音楽、ジャズまで、弾きこなすギタリスト。ダブルネック・ギターで、表現する彼のテクニックは、どんな感情もメロディーに帰ることが出来るような腕前。普段は、通りがかりの音楽好きの数人が、並ぶ程度のストリートライブであるが、この夜は、20数人が、ピーターのギターの音色に引き込まれて、酔わされて、帰路に着けない。

 もし、、ピーターが、日本の童謡を奏でたら、どんな楽想になるのだろうと・・・考えるうちに、不思議と僕の頭の中には、詩が浮かんでいる。

 熱帯の海辺の家を、土砂降りのスコールが、撃ちつけている。椰子の葉が風に揺れて、寡黙な老人が、煙草に火をつける。老人は遠くの海を眺めている。停泊しているのは、錆びに色を変えた貿易船だろうか?
 老人は、遠く離れた異国の故郷を、思い出している。

「こんな感じの、詩はどうかな」ピーターに尋ねてみると、
「このメロディーに、そのまま詩をのせては?」と微笑んで食くれた。

 音楽が、どんな国境も、宗教も、民族も性も年齢も・・・障壁も越えていくように、ミュージシャンも風船のように心が軽い方が、いい。
 荷物を待たずに、ギター一本で、日本を訪れたピーターと、何処か縁を感じたのは、昔の僕を、見つけたからだろうか?