DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2011.03.20

第7号 月の引力

 月の引力とは、古くからたくさんの小説やデータや映像にもなっているが、なんと言っても人間の心を一瞬にして奪う”その光の力"ではないだろうか?人は、物を見たり、聞いたりすることで、”胸の中にある心を、対象物に奪われる”。まるで、放り出すように、対象物に心を放り投げる。

 二日続きの、ゴルフで、下半身がパンパンに伸びている。車のアクセルを踏むのも一苦労。
 夜食を食べて、皇居の横を通りかかると、一人の年老いた深夜のランナーが、芝生の上で、夜の空を眺めていた。
 空を覆う雲は、青白く光り、しかもまるで大陸が移動するように、ゆっくりと流れている。
 顎を上げて、フロントガラスから、ビルの上の空を眺めると、雲の隙間から、月が見え隠れしている。思わず車から飛び降りて、僕は、皇居の芝生の上に、寝そべった。そうそう、今宵は、スーパー・ムーン・・・・・こいつが、地球を狂わせてるんだ。地震、津波、火山・・・・・満月。
 普段、ホノ優しく感じる明りが、今夜は、なんだか、”悪い占い師の鏡のように”引き込まれ、魅せられてしまう。


(注)月と地球の接近は「スーパームーン」とも呼ばれますが、今回はおよそ35万6500キロメートルと、1992年以来19年ぶりに最も接近した距離となりました。
 NASA(アメリカ航空宇宙局)によりますと、今回は、月と地球が最も遠くなった時に比べて、大きさでは14%大きく、明るさでは30%明るく見えるということです。

 確かに、確かに、いつもよりずっと大きな満月だ・・・・心が熔けて、ふやけて、吸い込まれていく。