DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2008.12.20

【第47号 「美楽」1月号】

「羽子板」

 羽子板は、室町時代に我が国に伝わってきたと言われているのだが、現在では東京の浅草寺「歳の市」などで売られているように、スポーツと言うよりは、縁起物としてしかその存在を留めていない。

 少年の頃、かすかに羽子板をした記憶はあるものの、何故か手毬などと同様に女性的な遊びのような気がして、少年たちには人気がなかったように思う。西洋のスポーツであるテニスや中国の卓球とは異なり、羽子板は鳥の羽を上手に重力に合わせながら、相手の羽子板の拾いやすいところに落とす、思いやりのスポーツでもある。決して、相手の隙をついたり、目にも留まらぬ速さで打ち返したりしてはならないところが実に品と格を感じられるのである。
 
私の耳の奥で今でも元気のいい、木の板の響きが鳴っているのは、僅かに残された本来あるべき日本人の姿をまだ期待しているからかもしれない。