DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2006.07.29

第31号「桜島への祈り」

 「これは・・・・」と思った新しい事業や商品が、芽を出し始めたときに、私は故郷の桜島の裏側にある垂水のお墓に出向き、先祖の力を借りにお参りに行くことにしている。
笑われるかもしれないが、この習慣はほとんど儀式に近いほど神がかっていて、早朝のフェリーに乗って錦江湾を渡り、日が出る前の桜島の空が紫色になる瞬間に、こうべを垂れるのがプロセスの一つになっている。
 
 この朝は、今年の中でも一番華麗な色彩を演じてくれた。
新しい商品を創るまで、私の我儘やそれから生まれる人間関係の膿や、プロジェクトのメンバー全員が共有している不安や、泥まみれになった売り上げのシミュレーションやらで、グレーのヘドロになったすべての“生まれいずる悩みが、蝋燭の火が一瞬にして掻き消されるように白くなり、やがて希望の紫に変わるのである。”

 今朝は、早すぎて弟の好きだった赤い花が買えないかもしれない、そう思った瞬間、僕の煙草の煙も紫色に変わった。