DIARY:夕焼け少年漂流記

 

2002.06.04

6月4日(火)何が起こるか解らないので3時間前に芝のホテルを出て埼玉の日本、ベルギー戦に向かっている

高速のアクセスが良くなって東北自動車道の浦和までものの40分。埼玉サッカースタジアムまで多少渋滞したものすんなり到着。プレステージ・ゴールドのVIPテントで試合開始を待っている。さすがに食事をサービスするスタッフは手馴れているが、それ以外の受付や場口のアルバイトは緊張しているせいか表情が硬い。冷淡で機械的で乱暴にすら感じる。6万人という観戦客の数は別に特別多いわけでもないだろうがなんといってもそれぞれのサポーターの胸にある巨大な勝利への期待感が異常な殺気となってぞろぞろとゲートに向かっている。こんな熱気を受け止めるのは経験でしかないだろう。
ほんの数年前まで農村地帯だったようなエリアに突然WC用の競技場が作られたようで、先程までスタジアムの上空を田園風景の方がマッチしそうな薄い朱の夕焼けが頬紅のように染めていたが、試合開始が近づくにつれ、少しずつ群青色にかわり、美しいスタジアムのスポットライトが大きな蛍のように宙を照らしている。
満腹になって、どきどきしながら早足で、テントからゲートまでそれなりの何重ものチェックを受け数百メートル歩いただろうか、席につくと日本代表、ベルギー代表各選手がウォームアップの為の練習をしている。或る者はリフティングをしたり、2人でキャッチボールをしたり、突然走り出したりしているのだが、日本代表の青いユニフォームと反対のピッチで練習するベルギー代表の赤が緑の芝生に鮮やかに生え、スタジアムライトの燭光の中でまるでゲームの中に入り込んだような錯覚を覚える。この現象は目の前の現実を脳が理解できないでいるのだ。いわゆるバーチャル・リアリティが全ての感情を押さえ込んでしまった状態だ。
ゲームの話はさておいてとなりの岡田氏と君が代を聞くのは何回目なんだろう。そして、このワールドカップで最後に国家を聞くのは何処の国なんだろう。僕は、試合開始までにすっかり疲れてしまったせいか、途中でうつらうつらやってしまった。不謹慎であるが。