COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.09.22

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第76号 文部行政の見直しが不可欠  『小中学校の不登校児12万9254人』

 1年間に30日以上欠席した生徒のことを不登校児と呼ぶらしいが、この不登校の中学生が2年連続で過去最高の人数になっている。

 2007年度の中学生の不登校児は10万5328人。全生徒に占める割合は34人に1人(文部科学省「学校基本調査」)。全体の86%の中学校で不登校児が在籍している。
また、小学生の不登校児も増えており、対前年比101人増の2万3926人で298人に1人。小中学生をあわせると12万9254人という驚くべき数字だ。読者のみなさんのお子さんは大丈夫ですか。

 さらに、統計上は不登校とならないものの保健室で過ごす「保健室登校」も相当数いるとみられ、わが国の教育界の新たな課題として浮上している。しかも、時代は少子化である。

 文科省は今回の調査を受けて、不登校児が増えた要因を各都道府県教育委員会に複数回答で尋ねたところ、93%の教委が「人間関係がうまく構築できない児童・生徒が増えている」と回答。また、「家庭の教育力の低下」(82%)、「欠席を容認するなどの保護者の意識の変化」(65%)など、家庭の要因を指摘する声も多い。

 さて、日本に国公私立の小中学校は3万3680校あり、中には生徒が数人の過疎地の小中学校から、マンション等の増設による振興開発地域の新設小中学校までさまざまであるが、主に不登校児は都市・準都市に集中している。ある養護教諭は「友達との意思疎通が苦手で、携帯メールなどに端を発した行き違いで教室に行けなくなる子供が激増した」とも言う。さらに今後の景気悪化の影響で失業者が急増し、教育費を払えなくなる親の増加や、携帯電話の普及拡大を考えると、不登校児は今後とも増え続け、社会的規模の問題になるのは間違いない。引きこもりやニートにもつながっていく。

 戦後、受験体制一本でやってきた文科省の教育行政を根底的に見直す、地域住民や社会人にも加わってもらい、不登校問題解決に向けたアイデアを真剣に考える時期に来ている。


2008年9月23日号


2008.09.09

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第75号 日本はますます「へそくり国家」になる  『たんす預金30兆円』

 今や懐かしい響きがする言葉に「へそくり」と「たんす預金」がある。

 日銀は、使われずに家庭に現金のまましまわれている1万円札などを想定しているようであるが、なんと2007年度の発行紙幣残高約75兆円のうち、使われないでしまわれている銀行券(お札)が4割に上ったと推定している。つまり眠っている現金、「たんす預金」が30兆円規模に上っているということである。歴史的に低金利が続いていることや、サブプライムローン問題による銀行をはじめとした金融市場の混乱で、膨大なお金が行き場を失っているといってもいいだろう。

 ちなみに、世の中に出回る1000円札と1万円札の枚数は、約15年前に1000円札25億枚、1万円札30億枚だったそうだが、その後、1万円札だけが右肩上がりに増加、今年6月末までは1000円札35億5000万枚に対し、1万円札は倍の70億枚になった。日銀では、1万円札を用いた決済だけが急増したとは考えづらく、増えた分のすべてが貯蓄目的で家の中のたんすの中にあるのではないか、つまり「たんす預金」の可能性が高いとみている。

10年前の金融システム危機で「たんす預金」は次第に増加し、さらにペイオフ(破綻金融機関の払戻保証額)が1000万円と決められてから、「たんす預金」は増加の傾向をたどっている。一方で、120兆円がモノやサービスの売買に使われず、銀行や信用金庫などの普通預金口座に置かれたままであるとの試算もあるようだ。

 いずれにしても、あてになるのが財布の中とたんすの中という、日本人の消費気質の裏側には、スピードの遅いあいまいな経済体制への反発や防衛本能が大きく機能していると思わざるを得ない。

 さらに加えて、サラリーマンの給与が銀行振り込みに変わったのは1970年代の後半。カードや生命保険、住宅ローンなどの銀行引き落としから残った現金は、今後ともだんだんたんす預金化するともいわれている。
社会的に資産としてあてにならない不動産、加えて社会保険庁の不誠実な対応など「現金国家日本」は、ますます「へそくり国家日本」となっていくのである。


2008年9月9日号


2008.09.01

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第74号 高齢化社会対応の切り札となるか  『インドネシアから介護・看護職候補第1陣205人』

 インドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づいて介護福祉士、看護師の候補者205人が来日した。受け入れ側の老人ホームや病院など環境整備の急務が叫ばれる中での、慌ただしい来日である。

 これは、よく考えると黒船来航と同様に歴史的な転換点の開幕である。少子高齢化に伴い労働力不足は既に始まっている。
2015年には日本の総人口の30%以上が60歳以降を迎えるという切羽詰まった状態で、医療・福祉分野の人材不足は火を見るより明らかである。

 日本国内の介護労働者は、介護保険制度が導入された2000年の約55万人から、06年には117万人と倍増している。
それでも厚生労働省は、14年には140万〜160万人の介護労働者が必要とみている。一方で、介護現場での離職率は21.6%。全産業平均を5ポイントも上回り、人手不足は慢性化し始めている。

 インドネシアとしても、人口が全世界第4位の約2憶3000万人で、当然ながら失業問題が国家的問題となり、外貨(円)獲得の狙いからもEPAについては積極的である。

 今回の受け入れ態勢は、日本人職員と同等の給料を保証する点と、介護職で4年、看護職で3年以内に日本の国家試験に合格すれば就労続行が可能といった点が特徴である。

 しかしながら、いくつか課題も残している。ひとつはランゲージバリアー(言語の壁)。来日した大半の候補者は、これから半年間日本語を学ぶ。続いてカルチャーギャップ(文化の壁)。インドネシアの大半がイスラム教徒であって、毎日の礼拝が欠かせないほか豚肉が禁止、さらにジルバブといわれるスカーフを首に巻いた女性も多い。

 現地の約10倍の給料が魅力的で、なおかつ高度な医療技術が学べ、そして食料事情も治安事情も良い日本での仕事は、彼らにとって天国の職場のようにもみえる。

 しかし、介護される日本国民にとっては、国家試験の質を下げないようにし、医療現場、福祉現場でのトラブルは絶対に避けなければならない。
なぜならば我が国にとって今回のEPAは、高齢化社会対応の最大の切り札になる可能性があるからだ。


2008年9月2日号




2008.08.25

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第73号 水が日本人のライフスタイルを変化させる  『ミネラルウォーター・国内生産1500億円、輸入400億円』

 日本は昔から水の豊かな国であった。ヨーロッパのように上下水道を完備しなくとも、井戸さえ掘れば米も炊けたし洗濯もできた。しかし、現在、水道水で満足している人は全体のほぼ半数。特に飲料水においては、水道水をそのまま飲んでいる人は全体の4割に満たない37.5%である。それ以外の人はというと、浄水器設置(32%)、水道水沸騰(27.7%)など、なんらかの工夫をしている。

 されに注目すべきは、ミネラルウォーターをはじめとした水の購入者が全体の3割近くに及んでいることである。ミネラルウォーター類の国内生産高は2007年度で約1500億円。1990年に146億円だったものが10倍以上になっている。さらに輸入の推移を見てみると90年にわずか16億円しかなかったものが、現在では400億円近い輸入額となっている。

 このミネラルウォーター、まだまだ歴史は浅い。70年代前半に業務用市場で販売されたのが初めてで、その後、自然健康ブームに加え、海外旅行などの増加でミネラルウォーターに接する機会が増えたことで輸入量が急増した。

 さらに最近の水質汚染問題、食品偽装問題に加え、マンションの貯水タンクの汚れなどで、国内生産および輸入も含めたミネラルウォーター市場が、今後1兆円市場に向けて成長していくことは間違いない。

 さて、輸入ミネラルウォーターの動きを見てみると、なんとその7割近くがフランスである。続いて、アメリカ、イタリア、カナダという順。

 爆発的な人口増加や地球環境の変化で、今後、世界的な水不足は恒常的な問題となり、海水を淡水化したり、排水や下水を再利用したりするなどの、いわゆる水処理プロジェクトは、日本の将来の命運を左右するといっても間違いない。

 高度経済成長によって日本人のライフスタイルはいまだに大量生産、大量消費の枠から変化できないでいるが、江戸時代のようにムダのない合理的な経済生活を送るだけの知識と知恵は、今の日本人に残っているのだろうか。
水が日本人の生活を強制的に変化させるカギとなるかも知れない。


2008年8月26日号


2008.08.18

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第72号 48年間で5分の1に減少してしまった  『日本の農業就業人口299万人』

 江戸時代には士農工商と、武士に次ぐ身分を保障されていた農民。それが、いつしか農業就業人口は299万人(農林水産省)と、ピーク時の1454万人(1960年)から48年の間に、およそ5分の1に減少した。

 全就業人口6451万人(総務省統計局)の4.6%にしか過ぎない。
しかも、農業就業人口に占める65歳以上の高齢者の割合が60%であり、このまま放置していると農業就業人口は確実に200万人を切る。わが国の職業問題を基本に考えるよりむしろ、産業別労働力のゆがみ、ひずみともいえるのが現状である。

 この数字を追いかけていくと、大まかな計算ではあるが、現在の食料自給率(カロリーベース)40%は、10年後に確実に30%を切る。

 さらに日本の人口は、今後、大幅に減少すると推定されているので、2012年に200万人を切ると予測される農業就業人口は、20年には150万人を割り込む可能性がある。マスコミがどんなに騒ごうが食料の自給率は減少の一途をたどり、われわれの家計の食料に占める割合、つまりエンゲル係数は近未来的には50%を超えることも起こり得る。

 私の故郷、鹿児島県を例にとると、農業人口は8万8000人。県の人口が157万人なので農業人口率は5%。このなかで他の業種と見合うだけの収入を得ているのは、わずか3800人。つまり4.3%の人しか農業単独で生計を立てるのは不可能な状態となっている。

 根本的には若者の意識レベルを変革し、特に小中学生に危機感を持ってもらうための農業教育を迅速に開始し、労働人口比率の側面から打開策を講じなければ、前途は真っ暗といっても過言ではない。

 アメリカの食料自給率120%、フランスの100%をはじめ、先進国は圧倒的に食料供給が安定している。どこかの総理大臣が、先進国首脳会議で最重要課題と意気込んでいた環境問題。結局、満足な成果を挙げられなかった。

 日本にとって必要なのは途上国首脳会議に参加し、安定した食料の供給を踏まえながら、農業人口増の強力なカリキュラムを作ること。明日からでも対応しなければならない。まさに崖っぷちである。


2008年8月19日号


2008.08.11

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第71号 メダル獲得と経済の関係  『日本の金メダル114個』

 いよいよ北京オリンピックが始まった。開催国・中国と日本のメダル獲得数に関心が集まるが、それだけではない。五輪でのメダル獲得数は国家の経済状態を反映するといわれるだけに、躍進著しいアジア各国と景気失速のアメリカの対比にも注目したい。

 現在、オリンピックは28競技、302種目である。ちなみに日本は、前回のアテネ大会で久しぶりに16個という、東京オリンピック以来の金メダルを獲得した。今回は、米国の金メダルの数を中国が上回るようなことになるのであろう。

 日本は1912年からオリンピックに参加しているが、今までに獲得したメダルの総数(夏季)は何個なのだろう。その答えは金が114個、銀が106個、銅が115個、つまり、延べで335人しかメダリストが誕生していないことになる。

 ちなみに、20年のベルギー(アントワープ)大会での、テニスの熊谷一弥と柏尾誠一郎が初の日本人メダリストである。
日本に初の金メダルをもたらしたのは28年アムステルダム大会、三段跳びの織田幹雄と200メートル平泳ぎの鶴田義行であり、水泳王国ニッポンの伝統はこの後、ロサンゼルス大会、ベルリン大会と引き継がれる。

 バブルが崩壊した直後の92年、バルセロナ大会では金がわずかに3個、次のアトランタ大会でも3個と、やはり国の経済状態とメダル数は何らかの相関関係があるといってもいいのではなかろうか。となると今年の北京オリンピックと次回のロンドン大会は、現在の資源高、原油高、さらにサブプライムショックを考えると、せいぜい1ケタ。それも幼少期から指導教育を徹底して行われる柔道、レスリングをはじめとした個人競技にしか期待が持てないかもしれない。

 2016年には東京に誘致するという話があるが、高齢化社会の真っただ中に突入する時代に1964年並みのメダル数は悲しいかな不可能だろう。
五輪景気で国を活性化させるというのも長期的な視点においては、暴挙と思えて仕方がない。


2008年8月12日号


2008.08.04

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第70号 日本人の4人に1人がかかっている・・・  『水虫罹患率24.7%』

 驚くなかれ、日本人の約2800万人は水虫である。日本臨床皮膚科医会が大規模な水虫調査を実施、3万4730人に同意を得てフットチェックを行った結果、何らかの水虫が認められた人が8589人いた。

 その内容は足の水虫(足白癬)が5115人、爪の水虫(爪白癬)が1068人、併発が2406人だった。つまり、これを大ざっぱに罹患率に直すと、4人に1人(24.7%)となる。国民全体で単純に計算すると約2800万人が水虫ということになる。

 年齢別にみると足の水虫は30代から70代に多く、男性は50代がピーク、女性は60代がピーク。70代になると足の水虫、爪の水虫が併発するケースが多くなるという。

 基本的にこの水虫はカビの一種(白癬菌)によって生じるわけであるが、なんと土や犬、猫、牛などにも寄生している。日本人が靴を履くようになって通気性が悪くなったことや、靴下の材質によっては撥汗性が低かったり、雑菌が増えたりということが見受けられるようで、今後とも足の皮膚疾患の患者は減る傾向にない。特に梅雨時から夏にかけてがもっとも危険だ。プールやはやりのエステティックサロンなども絶好の感染経路となる。
従って、まめに足を洗い、感染に気がついたらすぐに外用薬を塗布することが必要だ。

しかし、かゆみや湿疹が出るまでに一定の潜伏期間があるのがクセもの。その潜伏期間中に他の指に感染していたり、左右の足に感染したり、家族に感染させていたりするのが、この病の恐ろしさである。
放置して黄色ブドウ球菌に感染するとリンパ管炎を起こす場合もあり、足が腫れて歩行も困難になるという。
糖尿病を患っていたりすると足を切断する例もあるというから侮れない。

 これほど水虫患者が多いとなると、日本の会社も労働者の疾患対策として、職場でのサンダル履きを励行するなど、真剣に対策に取り組むべきときではないだろうか。


2008年8月5日号


2008.07.28

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第69号 景気悪化で中止の憂き目  『花火大会年間7000件』

 江戸時代から日本を代表する伝統芸能ともいえる花火大会が、不況のため続々と中止になっている。

 社団法人日本煙火協会のデータによると、1年間で開催される花火大会は7000件程度。隅田川花火大会のように約2万発というものから、数百発程度の小さな規模のものまでまちまちである。

 花火大会の際には、打ち上げ場所と建物などの間に安全な距離(保安距離)を確保しなければならないため、大きな河川や海岸が選ばれる。
しかし、首都圏のある花火大会では、河川の横にマンションが建設され、保安距離が確保できなくなったことで中止となった。
 また、ある大会は自治体の予算がなくなったり、スポンサーの協賛金(寄付)が獲得できなかったなどの理由で中止に追いやられた。

 花火大会というイベントは景気に非常に左右されやすい。このところの企業業績の悪化、あるいは消費の低迷で、特に地方の中小の花火大会の減少が目立つ。今後とも協賛金集めに四苦八苦するのは間違いない。

 減少の背景には、小泉内閣時代に進められた地方自治体の合併問題もある。約3200の市町村が約1800に減少した結果、支援を取りやめた自治体が出てきているのだ。

 花火は火薬を扱うため、製造保管などの厳しい法規制のもと厳重に管理されている。業界では、170社、市場規模が150億円前後の市場である。したがって零細規模の業者が多く、大きな業者でも従業員20人程度で、脈々と花火文化を受け継いできた。今後の花火大会を考える上で、原油高による製造、運営コストの上昇は深刻だ。特に花火は金属を混ぜ合わせて固めたものであるだけに、金属価格の高騰は痛手となる。

 また、イベント開催時の警備などの安全対策費用などを考えると、この夏の風物詩の運営方法も柔軟に考えなければならない時期にきている。
例えば、埼玉県秩父市では、プライベートな花火大会を受け入れており、誕生日や結婚記念日などのイベントでの利用も出始めている。

 日本の歴史と伝統を守る上でも、何とか存続して欲しいものだ。


2008年7月29日号
 


2008.07.14

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第68号 安価な中国産も値上げ削減運動に弾みつくか 『割り箸の消費量.年間250億膳』

 日本人が使用する割り箸の量は、なんと年間250億膳。1980年代に台頭したファストフード系の飲食店、弁当屋、持ち帰り寿司、コンビニなどの影響もあり、1人当たり年間200膳近くを消費している計算になるという。

 最近では、一流料理店などでもマイ箸、あるいは箸のキープなどが始められており、割り箸の使用量を減らそうという環境保護の意識が見受けられる。しかしながら、現在のところ削減される割り箸の量はその1%程度にしかならない。それでも2億5000万膳で、ゴミの量に換算すると年間650トンの減量にあたり、「箸も積もればCO2の削減」につながるともいえる。

 さて、この割り箸の大量生産の歴史は長く、大正時代にはすでに始まっていて、太平洋戦争後半に一時期生産中止になったものの、60年ごろからの日本人の外食化傾向により、生産量は急増した。国内の割り箸製造は、安価な大衆箸主体の北海道と、高級割り箸を主に扱う奈良県が中心で、98年にはこの道県で国内生産の70%を製造している。

 ところが90年以降、海外からの安い割り箸が大量に流入してきたために、北海道の生産業者が壊滅的なダメージを受け、今では国内製造のほとんどは奈良県産。その奈良県でも生産量は30%程度に減少した。

 国内の生産量は4億5000万膳(林野庁/2005年度)と推定される一方で、海外からの輸入は245億膳と、そのほとんどを海外からの輸入に頼っている。輸入先は低価格を実現した中国が断トツで、全体の99.7%を占めている。

 その中国での生産制限などもあり、1膳0.8円程度であった割り箸も、現在では1.6円程度に跳ね上がった。たばこ同様、近未来的には、割り箸の高騰も避けられないのだろう。かといってナイフとフォークで丼物を食べるわけにはいかない日本人にとって、食文化に大きく影響しかねない状況まできている。

 近々、割り箸廃止運動やレストランや食堂で割り箸が別料金となる日が必ずやってくる。


2008年7月15日号


2008.07.07

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第67号 運転手の待遇改善を真剣に考えるべき 『タクシー強盗176件』

 横浜市で連続タクシー強盗犯の23歳の男が逮捕された。この男はひとりで9件のタクシー強盗を犯したと供述している。
先日も黒人米兵の強盗殺人事件で、残念ながら善良なタクシー運転手が殺害されたばかりだ。

 ここにきて、タクシーを対象とした強盗事件が首都圏を中心に多発。発生件数は増加の一途をたどっている。全国乗用自動車防犯協力団体連合会の調べによると、2006年の発生件数は176件で検挙率が65.2%。
タクシー事業者は運転手に防犯マニュアルを携行させる他、車内に防犯仕切り板(防犯ガラス)や緊急通報システムなどを設置して防犯対策に追われている。

 以前触れたように、日本全国のタクシー走行台数は21万9000台(04年度)、個人タクシー4万6360台(05年3月)で、小泉内閣時代の規制緩和により大幅に増加した。中にはリストラをされた若手の運転手から70歳を超える高齢者の運転手までまちまちである。

 最近は原油高の問題もあり、タクシーの走行原価が急騰している一方、乗車率の低下も著しい。
運転手の待遇は悪化の一途だ。

 タクシー業界は警察とも連携しており、犯人逮捕に一役買ったり、一般の社会人が犯罪に巻き込まれるのを未然に防ぐための警察への通報業務を担っている。それだけに、警察当局や税務当局が何らかの策を打ち出して支援していくことはできないのであろうか。
国交省はタクシー台数削減を言い出しているが、これが待遇改善につながるかは疑問だ。

 タクシードライバーの平均所得は302万円(05年・厚生労働省統計)であり、全産業の平均所得の55%。年間の労働時間は全産業平均2184時間を上回る2388時間。昨年あたりから全国各地でタクシー運賃が改定されたが、それでも厳しい労働環境。北京オリンピックを前にして、外国人も増加するだけに、観光ニッポンという側面からも、当たり前のように使っているタクシー業界をもう一度チェックする必要がある。


2008年7月8日号


2008.06.30

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第66号 法的な対策が急務 『ネット通販の苦情・相談8万6000件』

 政府がようやく動き出した。サーバー管理を行っている各社に、とりわけ青少年のアクセスに関する規制を始めようとしている。これに対して各社は言論の自由だの憲法違反だのと反論をしているようであるが、これほどネット絡みの犯罪が続く中で、セキュリティーも徹底できないで利益を優先する姿勢を、民主主義的な議論とすり替えるのは納得できない。

 国民生活センターがまとめた2007年度のインターネット関連通販の苦情も急増している。これなどは法的整備を急いで欲しい。

 商品の未着から注文品の中身をめぐる苦情や相談が相次ぎ、なんと昨年度は8万6000件。05年度、06年度のネット通販(携帯電話含む)の苦情件数はそれぞれ3万9000件前後だったのだが、1年間で倍以上になったことになる。今年に入ってもこの苦情は増加し、過去最高を上回るペースである。

 国民生活センターによると、苦情内容は「代金を支払ったのに商品が届かない」「注文したデザインやサイズと違うものが届いた」、もっとひどいものは「代金を払った後に業者が倒産した」など。さらに無料の商品紹介サイトだと思っていたら、あとで数十万円の料金を請求されたというような詐欺的なサイトもある。

 ご存知の通りネット通販は、アマゾンジャパンや楽天といった大手から地方の小売店が生鮮品を販売するなどさまざまであるが、24時間営業でどこからでも買えるという利点を生かして、そのマーケットを広げている。

 今年度に予測5兆4000億円といわれる通販市場のなかで、ネットと携帯電話の通販市場は右肩上がりを続け、3兆3000億円と見込まれている。つまり、通販市場全体の6割がネットと携帯電話ということになる。

 一番の問題点は、ネットやカタログを含む通販自体にはクーリングオフの制度が適用されないことだ。つまり、買った段階で商取引が成立してしまうのだ。経済産業省は特定商取引法改正案を提出しているようだが、個人間取引におけるこのトラブルは当分増加の一途をたどるであろう。インターネットという魔物は放置していると、もろ刃の剣を持つモンスターとなってしまうのである。


2008年7月1日号


2008.06.23

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第65号 バリエーションの広がりに期待 『アウトレットモールの売り上げ5000億円』

 原油高で一般庶民の生活が苦しくなるばかりの時代にあって、アウトレットモールがブームになっている。ブランド品を格安で販売するアウトレットモールの市場規模はどんどん膨れ上がり、2008年はいよいよ5000億円に届こうとしている。北海道から沖縄まで、全国に約30のアウトレットモールがある。仙台ではこの秋に2つのモールが開業予定で、早くも競争激化が囁かれているほどだ。

 ひと昔前はアウトレットモールというと、キズ物があったり新古品といわれるものばかりで、商品の質がイマイチだったが、最近は模様変わり。アウトレット専用商品や正規販売店で売れ行きが鈍った商品がすぐに並んだりと、商品力がグッとアップしているのだ。

 4月には三井不動産が運営する「三井アウトレットパーク入間」がオープン。初日にはなんと4万人近くの客が押し寄せた。アウトレットの本場・米国では、モール数が約300といわれている。
人口も面積も違うが、約30の日本ではまだまだ増えそうな雰囲気だ。
これまでは高速道路のインターチェンジに近い郊外型、地方型が主流だったが、今後はおそらく大都市圏のど真ん中にも出現してくるのではなかろうか。

 加えて、ネットによるセカンドユースの販売や口コミの販売や直接輸入ものの商品のディスカウント等の流通ルートを考えると、アウトレットモールは百貨店のマーケットを脅かす存在にまで発展するであろう。ブランド品だけでなくクルマや薬や輸入物の食料品、書籍など商品別にアウトレットッモールが出現すると、われわれ消費者の生活も少しは楽で楽しみになるかもしれない。アウトレットモールのバリエーション、扱い商品の多様化を期待したい。


2008年6月24日号


2008.06.16

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第64号 現代のフクロウ族が求めるサービス 『深夜営業店・週1回以上利用13.7%』

 ひと昔前は深夜族とかフクロウ族とかいって、深夜に起きている人は珍しい人種であったが、時代は様変わりである。マイボイスコムがウェブ上で行った調査(サンプル数1万4350人)によると、深夜(午後10時〜翌朝5時)に24時間営業店を週1回以上利用する人が13.7%もいた。
日本の人口に照らし合わせると、約1500万人が深夜に、週1回以上コンビニやその他の深夜営業店に出向いていることになる。

 原油高の折、水道・光熱費が軒並み上り、郊外型のレストランや一部のコンビニでは24時間営業を廃止する動きも出てきた。とはいっても、相変わらず深夜に活動している人たちにとっては、24時間営業店は必要なのであろう。

 さらにほぼ毎日、深夜営業店を利用する人が1.5%いるところをみると、ざっと200万人近い人が深夜活動派ともいえる。

 さて、深夜に利用する理由は「購入したいものがある」「仕事帰り」「外出のついで」など、通り道にある店を利用する人が多いようだ。また1割の人が答えた「なんとなく」という理由も、なんとなく分かる気がする。孤独なのかもしれない。

 深夜に閉まっていて困ったケースでは、1位が「薬局・ドラッグストア」2位が「ATM」と続く。要は薬と現金の必要に迫られるケースが圧倒的に多いということだ。

 今後、利用してみたいと思う深夜営業店とは、1位「薬局」、2位が「コンビニ」、3位が「病院」、4位が「銀行窓口・ATM」、5位が「郵便局窓口・ATM」、6位が書店、以下、銭湯、映画館、レンタルビデオなどと続く。エンタメ系の施設やアミューズメント施設への深夜ニーズがさほどない。この結果にほっとするのは、現代のフクロウ族がさほど遊興に染まっていないことであろう。

 一方で、深夜には利用しないという正統派は42.4%も存在している。
原油高や犯罪多発、人件費高騰といった現状からすると、24時間営業は見直され、最低限の必要なサービスしか残らなくなるのではないか。


2008年6月17日号


2008.06.09

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第63号 四川大地震の後遺症でさらに増える可能性 『中国のうつ病患者2600万人』

 出張で北京から戻ったばかりだが、巨大な国土の中国でも今回の四川大地震のダメージは大きい。特にオリンピックで海外のメディアが注目していることもあり、その対処には古今濤国家主席も国家的な広報という観点から頭を痛めているであろう。
 
 そんな中国でいま、注目されているのが、うつ病患者の急増だ。その数は2600万人を突破したとされているが、おそらく実数はその2倍、3倍であると推察される。

 うつ病は、中国人の考える現代病のひとつとしていわれているが、その他の現代病の中身を見てみると、痴漢やフリーター、子殺し親殺し、アル中まで、経済発展でなおざりにされた現代の人々の病気がラインアップされている。

 うつ病が原因の自殺者も急増しており、北京大学がまとめた統計によると、毎年平均28万人以上が自殺している。このうち女性が15万7000人で、男性よりも21%も多い。また、都市部より農村部の自殺率が3倍も高く、農薬を服用したりする自殺者が増えているという。

一方で、都市周辺部の自殺の原因も、ストレスとうつ病が全体の80%を占め、飛び降りなどを中心とした突発的なものが多い。

 おそらく、急速な経済発展を遂げた裏で、精神的な発展速度が物質的な発展速度に追いつかず、バランスを崩してしまうケースが多いのであろう。

 四川大地震で5000万人以上の被災者を出した中国は、日本と同様にあらためて地震国として再認識されたわけであるが、この地震が原因でさらにうつ病患者が増えることも予想される。

 私の友人の中国大使館員は、こに地震の被害は向こう30年は続くと指摘する。中でも心配されるのは地震恐怖症と、地震をトラウマとした一種の精神病だ。物質的なダメージも深刻だが、精神的なダメージの大きさも見逃してはならない。


2008年6月9日号


2008.06.02

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第62号 いっそのこと無料で提供したらどうか! 『給食費の滞納22億円』

 私の小学生時代は、ひと月2000円程度の給食費を親にもらい、給食費袋に入れて学校に届けたものである。その給食費の滞納が大きな社会問題となっている。

 文部科学省が2007年1月に発表した全国調査で、滞納があったのは給食がある小中学校の4割を超える1万3907校。
その数は児童生徒の約1%にあたる10万人近くで、総額22億円あまり。
中でも沖縄県は全国平均を大きく上回る6.3%。これは東京都の8倍、金額にして2億6000万円に上る。

 義務教育だから給食という発想そのものが、本当に正しいのかどうかという問題もある。しかし、単純にモラルの問題で片付けてしまうのはいかがなものか。例えば、万が一、給食費の滞納が生徒に漏れた場合、いじめにつながるケースも考えられる。

 また、最近の倒産急増、失業者の増大を考えると、払いたくても払えない保護者も相当数いると考えられる。

 自治体の対応はどうなっているのか。千葉県では、保護者に学校給食申込書の提出を求める仕組みを導入した。宇都宮市では、昨年から保護者に給食費支払いの確約書を求めており、保証人を書く欄もある。広島県呉市では、支払い能力があるのに払わない世帯に対して、簡易裁判所に支払い督促を申し立てることにした。

 一方、良心的な学校では督促の家庭訪問を繰り返し、さらには校長のポケットマネーなどで学校に立て替えてきたところもあるようだ。

 払えるのに払わない家庭だけでなく、給食費を払いたいのに払えない貧困な家庭もあることを考えると、もし給食制度を続行するのであれば、一切タダにしたらどうか。

 小中学生を合わせて、約1000万人の児童生徒がいるとするならば、1日あたり30億円(1食300円)、春夏、冬休みがあるから年間200日と仮定して6000億円程度に予算を文部科学省が拠出すれば、給食は全員無料で食べられるはずである。全額が無理ならば半分の補助でもいい。

 道路財源などでおたおたと国会が空転しているが、未来を担う子供たちに給食費くらい賄えない国家では、とても先進国とはいえない。思い切りの悪い文部科学省と、国の将来に目の届かない政治家たちの能力の低さが給食問題につながっている。


2008年6月3日号


2008.05.26

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第61号 スタンド経営者の悲鳴が聞こえる 『セルフ式GS窃盗事件120件首都圏』

 全世界にとって石油は当面のエネルギーの主役であり、日本の将来を左右する存在である。この4月以降、ガソリン税をめぐるドタバタ劇で、ドライバーは散々振り回された。ガソリンスタンド(GS)も、値下げ、値上げのたびに大騒動に見舞われたが、それとは別に、現場では大変なトラブルが起き始めている。

 GSの数は全国で約4万3000店。ほぼコンビニの総数に匹敵する規模である。問題は、セルフ式といわれているGSでの窃盗が増加していることだ。十数年前からこのセルフ式は数を増やし、全体の10%強という数になってきた。私もよくゴルフ場の近所のスタンドで給油しているが、安くて便利で、重宝している。

 そのセルフ式GSで、2006年9月以降、首都圏だけでもなんと120件の窃盗事件が発生している。いずれの手口も未明から早朝の時間帯に複数の男が乗用車で乗り付け、バールなどで清算機を壊す乱暴さ。警察当局は大半は同一グループによる犯行の可能性が高いと見ているようだ。

 被害金額も増大化しており、1件あたり50万円から150万円、店側にとってみると、自動清算機や給油機も壊され、大変な痛手となる。さらに犯行時間は2、3分。手際のよさが目立つ。犯行に使う車両も盗難車のため、当局は頭を痛めている。

 1バレル=135ドルを超え、一説には200ドルまで行く可能性があるといわれているガソリン。レギュラーの金額は約170円、ハイオクに至っては200円を超える。と考えると、今後ガソリンスタンドで現金を狙うだけでなく、ガソリンそのものを狙う事件が出てくる可能性もある。本来は人件費削減のために経営されているセルフ式GSのリスクは極めて高くなる。防犯カメラや巡回式のガードマンを雇っても、このネズミのような窃盗団を検挙するのは困難であろう。
となると、ライフラインの低下とは思われるが、コンビニと同様に、24時間制を見直し、深夜営業を休止する動きが出てくるのは避けられない。原油高にGS窃盗の増加、スタンド経営者の苦悩は募るばかりだ。


2008年5月27日号


2008.05.19

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第60号 乳幼児だけでなく大人も集団感染 『百日咳の子供患者急増昨年の2倍664人』

 国立感染症研究所感染症情報センターの調べでは、百日咳の患者が今年は過去10年間と比較して急増していることが判明した。
国内の小児科3000カ所からの報告によると今年に入って確認された患者数は3月時点で664人。昨年同期の331人の約2倍。大人も含めた全体の患者数も急増しているといわれている。

 百日咳という風邪の一種のように思われるが、まったく異なる。症状こそ風邪に似ているものの、春から夏にかけてが流行のシーズンで、大人の場合は厳しい咳が何週間も続くが、比較的症状が軽いので何げなく放置しがちだ。このため百日咳に気がつかないケースが珍しくない。

 そのため、大人が感染源になって家に持ち帰り、ワクチンを接種していない乳幼児に感染させてしまう場合がある。感染した乳幼児は大人と比べると症状が厳しく、肺炎のほか、手足の麻痺、目や耳の障害など、後遺症が残るケースもある。さらにこのうち0.2〜0.6%の乳幼児は死に至ることもある。

 日本では生後3カ月以降に4回のワクチン定期接種の機会があるが、ワクチンの効果は日が経つにつれて減少するため、大人になってから感染してしまうケースが近年増加しているのであろう。

 大人への異例の集団感染が、大学のキャンパスなど各地で起きている。
たとえば香川大学では昨年の5月から6月、なんと120人の学生と教職員が集団で百日咳にかかり、10日間休講になった。また7月には高知大の医学部で、咳や鼻水が出ると訴える学生が146人も。調査してみるとその4割に百日咳菌の痕跡が見つかった。

 今後、この百日咳はどうなるのであろう。北里研究所では百日咳菌が変異して、ワクチンが効きにくくなっている可能性を指摘する。しかも、昨年の集団感染では菌がほとんど採取できておらず、変異菌が出没したかどうかも判明していない。咳やくしゃみの飛沫で感染力が強い百日咳であるが、乳幼児をお持ちのあなたは十分に気をつけなければならないし、少なくとも今年も百日咳が猛威を振るうことは間違いない。


2008年5月20日号


2008.05.12

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第59号 医療が危機的状況に陥っている! 『モンスター・ペイシェント禍』

 一昔前は病院や医者というと、憧れの職業であり、現実的に所得も一般サラリーマンなどよりははるかに安定し、高収入であった。しかし、最近は毎日のようにマスメディアが取り上げているように、病院の倒産、医師の賃金低下、加えて医療ミスなどのトラブル等、わが国の医療業界は戦後末曽有の危機にさらされている。

 さらに医療現場に目を移すと、こんなトラブルも多発している。入院患者とのトラブルで、「モンスター・ペイシェント」という利己的で理不尽な患者が看護師や医師を泣かせているのである。

 全日本病院協会の調べによると、その職員が患者やその家族から暴言や暴力を受けたケースが、昨年1年間で6882件に上っている。回答を寄せた1106病院の52%が「院内暴力があった」としている。

 暴言などの「精神的暴力」が3436件で最も多く、殴るなどの「身体的暴力」は2315件、「セクハラ」は935件に及ぶ。しかし、警察に届けたという病院は約5.8%、弁護士に相談したケースは約2.1%と、院内暴力に対しては事を荒立てることなく、内々で処理する病院がほとんどだ。
中には警察のOBを配置したりガードマンを採用したりして、このモンスター・ペイシェントの対策に乗り出している病院もあると聞く。

 「院内暴力」は年々、深刻の度を増す一方である。すでに患者は、病気を抱えて弱い立場にいるという時代ではないのかもしれない。大学病院の広報室に勤める私の友人の話によると、看護師や事務局のスタッフはもっとひどい目に遭っているともいう。

 医療業界を取り巻く危機的状況は、モンスター・ペイシェントの出場だけにとどまらない。勤務する病院の医師が足りない。したがって患者が他の病院に転院し、経営不振に陥るケースが後を絶たない。帝国データバンクの調べでは、2001年から2007年の間に、210件の医療機関が倒産した。10年後には病院の数は8000から9000程度になり、現在の2割減となってしまうという。これは明らかに国家の責任、つまり厚生労働省の無計画さにあると断言できる。
医療行政を根本から見直さなければならない時期に来ている。


2008年5月13日号


2008.04.28

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第58号 四半世紀前に比べ6倍に急増した背景 『国際結婚4万4701組』

 少子高齢化で、一説によると50年先は日本の人口は1億人を切るといわれている。GDPを維持するためにはそれなりの人口(マーケット)が必要である。

 国際結婚というと、いまでも驚きの目で見られるが、2006年度の厚生労働省の調査によると、結婚総数73万組のうち、4万4701組が国際結婚だった。7200組しかなかった1980年と比べ、四半世紀でなんと約6倍に急増しているのだ。
 
 夫が日本人の場合、結婚相手の出身国籍はフィリピン1万2150組、中国が1万2100組、韓国・朝鮮6041組、タイ1676組、ブラジル285組、アメリカ215組、ペルー115組、イギリス79組、その他が3300組となっている。圧倒的にアジア諸国が多い。

 一方で、妻が日本人の場合は、相手方の男性の国籍は韓国・朝鮮が2325組、アメリカ1474組、中国1084組・・・・となっている。

 さて、この国際結婚急増の背景にはいくつかの理由があると思われる。
かつては結婚適齢期の女性人口が男性人口を上回っていたので、女性は男性に求めた条件が甘かった。ところが、バブル以降、3高などといって、女性の求める配偶者への条件がシビアになったことや、女性の経済的条件が豊かになったことで、女性の晩婚化が進んだ。
つまらない男と結婚するよりは一人暮らしの方がハイソなどというわけだ。で、結婚したくてもできない男たちがアジア女性と知り合い、結婚にいたるケースが相当あるのではないか。

 地方の男性にとっては、嫁探しが大変なこともある。東北などで農業を営む独身の男性にとっては、嫁不足が深刻な問題になっている。こうした地域では、農協や自治体を中心に中国やフィリピンなどのお見合いツアーを実施。これが一定の成果をあげたせいかもしれない。

 つまり、相手の人柄や相性などが気に入って恋愛結婚になるケースも少なくはないが、この国際結婚の背景にはどうも社会的要因、経済的要因が反映しているように思われる。これからもこの傾向は続くのだろうか。


2008年4月29日号


2008.04.22

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第57号 ネット社会の弊害 『一億総中傷国家・人権被害42%』

 私たちは生まれ持った永久の権利として、基本的人権というものを持っている。これは憲法で保障されている権利で、内閣府による「人権擁護に関する世論調査」で、この権利の存在を「知っている」と答えた者の割合が77.8%。知らない人が22.2%もいるというのは、いかがなものであろうか。

 一般的に、この基本的人権を侵されることを人権侵害と呼ぶが、この数年、特にインターネット等々の普及で人権を侵害される人が急増している。昨年6月から7月に全国の20歳以上の男女3000人を対象にした調査の結果、複数回答であるが、「あらぬ噂や他人からの陰口」を書かれたり言われた人が、全体の42%と過去最高となった。それ以外にも、「名誉・信用の棄損、侮辱」等も全体の20%で、前回の調査から8ポイントも上昇している。

 さらに加えてプライバシーの侵害やらイジメにもつながる悪口・陰口を入れると、実は身を守るために立派に裁判を起こしてもよいと思われる犯罪が急増している。しかもパソコンの掲示板や携帯電話など、急激に普及した商品であるために全国日本列島都市規模別にみると大きな差異はなく、しかも性別でみても年齢別でみても、ほぼ全般的にフラットにこの被害者は増えている。

 昔は新聞やテレビなどで「人権問題」とか「人権が侵害された」というニュースが報道されることがたびたびあったが、この数年、えん罪や障害者問題などを除いては次第に少なくなってきたとさえ思われる。
この国の特徴でもあろうが、「そのうちなくなる」とか「しょうがない」とか、「こちらにも非がある」とか、つまり、泣き寝入りをしている人が無数にいるのではなかろうか。特に悪口・陰口の類に関しては笑って見過ごせばいいという、妙に寛大な方々もいると思うが、これを野放しにしておくと子供のイジメの問題もなくならないし、一億総中傷国家が出来上がってしまう。

 約半数の人が「人権を侵害される事件が多くなってきた」と答えた原因を作っているインターネット関連の各社は、政府の規制が始まる前に、自主的にセーフティーネットを構築してほしい。


2008年4月22日号


2008.04.14

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第56号 喫煙者減少し、税収大幅アップ 『たばこ1箱1000円時代到来』

 またもや愛煙家にとって酷な話ではあるが、どうやら、たばこは数年後に「1箱1000円」時代を超えそうな気配になってきた。そんな状況になると、まず若者がたばこを買えなくなる。高齢者も同様だ。

 日本学術会議のシュミレーションでは、現在1箱当たり189円のたばこ税を300円引き上げた場合、喫煙者は約300万人減り、3300万人強になる。たばこの消費量も2700億本から1910億本に。

 一方で、税収は大幅にアップする。年間2.24兆円(2005年)が4.29兆円になる。2兆円を超す税収増が見込める計算である。

 京都大学大学院経済学研究科が昨年発表した喫煙に関するアンケート調査では、もしたばこの値段が1000円になった場合、9割以上が禁煙をするという結果もある。
J−CASTニュースによると「本数は減ると思うが、たぶん大事に吸う」「1000円になって禁煙した、というのは貧乏くさくてカッコ悪いから、なる前にやめる」「最初は減ると思うが、すぐに元に戻ると思う。しかし、もったいないから根っこまで吸ってしまい、健康を害するのではないか」など意見はまちまち。

 世界に目を向けてみると、ほとんどの先進国でたばこの価格は日本の2倍から3倍である。例えば、ニューヨークでは1箱あたり約800円。イギリスでは1100円、フランスでは850円、ドイツでは710円、イタリア、スイスではちょっと安くて520〜560円。いずれにしても大変な高額商品となっている。

 日本国家としては税収は大幅に増えるし、国民の健康も保護できるという観点からすぐにでもたばこの値上げをしたいところではあろうが、政治家にもいろいろと都合があろうかと思う。

 ちなみに私も喫煙者であるが、さすがに1箱1000円になると月3万円から5万円、なんと年間50万円程度の出費になる。こうなってくるとたばこを吸うか海外旅行に2回行くかという選択になるので、結論としては・・・・・・パイプに替えるかもしれない。


2008年4月15日号


2008.04.07

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第55号 携帯コミュニケーションの弊害 『デートDV 被害者13%,加害者12%』

 「DVを考える若者フォーラムinちば」が昨年、千葉県内の大学生881人を対象にデートDV(ドメスティックバイオレンス)の実態調査を行った。

 この調査によると、交際経験のある648人中、加害経験が79人(12%)、被害経験が86人(13%)となっている。加害の内容は「はたく」31件、「モノにあたる」21件など。性行為を迫られて嫌だといえなかった女性も74人いる(ちなみに男性は24人)。
ほとんどの被害者は2人の問題だからとか、我慢すればよいと思ったと、相談しないで泣き寝入りするケースが多い。

 一方で、内閣府が昨年行ったインターネット調査でも(10代から20代の未婚の男女対象、男性128人、女性130人)男性42%、女性25%が、いつも気を使わされ、束縛されたり強制行為を経験したと答えている。特に「別れたら死ぬ」「家に火をつける」などの脅迫は女性5%、男性4%が経験している。

 このデートDV増加の大きな要因のひとつは携帯電話ではなかろうか。
携帯電話が男女間の支配者意識を助長しているのだ。今回の内閣府の調査でも「電話に出なかったり、メールにすぐ返信しないと怒られた」というのは男性45%、女性32%が経験。さらには全体の4%の女性は専用の携帯電話を持たされていたという。

 携帯電話を通した2人の関係で何を強要されているのだろうか。服や髪形などの好みを押し付ける。感情の起伏が激しく突然怒りだす。手をつないだり腕を組んだり日常的にいつも体を触れている。これなどは携帯電話での2人の距離感と実際に出会っている時の意識の揺れを生んでいるのであろう。
バーチャルとリアルの生んでいる問題のようにも思える。つまり、携帯電話の頻度と実際に出会う頻度のギャップがDVを生むといえるのではないのだろうか。

 そういえば、一昔前は付き合っている対象者以外の異性とコミュニケーションを取るのは手紙か公衆電話くらいのもので、携帯電話は一見、コミュニケーションツールとしては便利だが、男女の関係においては複雑なシチュエーションを提供しているツールにもなるということだ。


2008年4月8日号


2008.04.01

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第54号 ヒカリモノが激減! 『2006年関サバ漁獲量99トン』

 このままだと回転寿司のマグロが1皿1000円を超えてしまう、と知人の寿司屋が嘆いている。マグロだけではない。今年は大分県佐賀関で水揚げされる高級魚、関サバの漁獲も激減している。いうまでもなく、地球温暖化の影響である。

 「今のままではマグロだけでなく、サバもイワシもサンマも、このエリアでは幻の魚になってしまう」(関係者)と危ぶむ声も出始めている。

 本来、関サバの漁期は秋から春先までだが、この冬の海水温が上昇したため、関サバそのものが回遊しなくなったという。2003年度に241トンあった漁獲量は、2006年度には99トンと大激減、2007年度はさらに下回るという。

 問題なのは、魚が減れば漁師も減るということだ。折からの原油高もあって、燃料費も出ない、魚がいないのではどんな漁師も食い上げ。佐賀関の1984年の正組合員数は648人いたのだが、現在は半減して372人。平均年齢も逆に高齢化してしまい、60〜70歳が中心となった。この現象は何も大分だけにとどまらず、日本全体の漁業の問題となってくるのは必然。

 日本周辺海域の年平均海面水温は過去100年間で1.6度上昇しているが、東北沖の太平洋や北海道の釧路市沖では逆に海水温の上昇がみられないため、今年あたりはサバがよく取れているという。例えば北海道の釧路市では以前ほとんどサバの漁獲がなかったのだが、2005年は約3400トン、2006年は約1900トンを記録し、簡単にいうと大分で泳いでいたはずのサバが北海道にすみかを変えたと考えられる。

 単に関サバの漁獲量減を海面水温の上昇だけで説明するのは、まだ結論が早いとはいうものの、いずれにしても日本全体で数百あるといわれる漁場の漁獲量の減少傾向は否めない。さらに漁師の高齢化も深刻な問題である。

 私はヒカリモノが好きで、回転寿司に入るとサバ、イワシ、コハダなどを食べているが、来年再来年と年を追うにしたがって、ヒカリモノこそが海のダイヤモンドと化す、嘆かわしい日が来るに違いない。


2008年4月1日号


2008.03.25

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第53号 シニア族にますます高まる健康志向 『フィットネスクラブ売上高2886億円』

 4月から「特定健康診査・特定保健指導」が始まる。この制度が追い風となって、日本のあらゆる会社がシニア向けの健康支援プログラムなどを始めようとしている。それにともなってフィットネス業界やスポーツ用品業界もシニア向けの営業を強く促進している。

 健康志向は強まる一方だ。昨年は「7日間集中してエクササイズすればダイエットが可能」をキャッチフレーズに「ビリーズブートキャンプ」がテレビ通販で爆発的な人気を呼んだ。映像ソフトも見る間に100万セットを売り上げたという。
ま、ブームが去るのも早かったが・・・・・・。

 1980年代のバブル時代、年間200施設が新規開業して活況を呈していたフィットネス業界は、バブルの崩壊とともに大低迷期に突入したが、十数年経って再びにぎわいをみせ始めている。

 続々と定年退職を迎えつつある団塊世代や、急速な高齢化、さらに医療費の負担などの増加を考えると、今後どんどんフィットネスクラブやスポーツクラブがシニア世代の会員を増やしていくのは明らかである。

 平成17年の経済産業省による特定サービス産業実態調査のフィットネスクラブ編では、40歳以上の個人会員数が約155万人で、総個人会員数約385万人の4割を占める。これに法人会員利用のシニア世代も加わればかなりのものになるだろう。

 経済産業省の特定サービス産業動態統計調査では、平成19年の総売上高は2886億円。いわゆるメタボリックシンドローム対策として、またストレス解消として都市型のクラブは続々と会員を増やし、いまや接待先にまでなっているという。

 私なども確実にメタボのひとりであるが、いまだにたばこも酒もやめられずにいるのは、ストレスを発散させる方法を見つけられずにいるからである。

 政治も経済も不透明感が強まっている。この先、社会不安が増せば増すほど、個人の「守り意識」から一段と健康志向が強まり、フィットネスブームに拍車がかかる。
世の中の風潮が薄っぺらな「健康至上主義」に走らなければいいが。


2008年3月25日号


2008.03.18

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第52号 ネット利用者は常に被害の恐れ 『不正アクセス認知件数1818件』

 耳慣れない言葉ではあるが、平成12年2月に施行された不正アクセス禁止法。IDやパスワードなどの不正な使用やその他の攻撃によってアクセス権限のないコンピューター資源へのアクセスを行うことを犯罪とした法律である。そもそもこの法律自体が施行されて数年間経っており、ドッグイヤー的にいえば、数十年前の法律ともいえるほど老廃化している。

 不正アクセス行為の認知件数は年々増加している。警察庁によると、平成17年に592件であった不正アクセス行為の認知件数が平成18年には946件、昨年は1818件と、ここ数年倍増に近い数値を重ねている。

 不正アクセス後の犯罪行為で最も多いのはインターネットオークションの不正操作件数。平成18年の593件から昨年は1347件。次いでオンラインゲームの不正操作が246件。インターネットバンキングの不正送金は前年の39件から113件と急増。水面下の数をカウントすれば、おそらくこの数倍の不正アクセスが行われているともいわれている。

 これはそもそもハッカーによるハッキング犯罪であるが、その定義は他人のID、パスワードを盗み取り、その者になりすましてアクセスを認知する高度な犯罪である。認証サーバーをだまし、そのシステム内にある端末を不正に利用するなど、高度に学習をした犯人によるものである。

 不正アクセス禁止法によると、罰則規定は1年以下の懲役または50万円以下の罰金と極めて軽い。一家に1台パソコン、1人1台携帯電話の時代になっている今日、ハッカー等の犯罪者とそれを利用する一般庶民の知識の差は、大人と乳幼児ほどの開きがある。パソコンや携帯電話などのメーカー側でよほどのセーフティネットされたものが販売されない限り、インターネットに手を出した瞬間にハッカーのターゲットになるというケースは今後とも増加するのであろう。

 警視庁では平成12年にハイテク犯罪対策総合センターを設立し、優秀な技能者を数千人採用しているが、不正アクセス犯とのイタチごっこは終わりそうにない。


2008年3月18日号


2008.03.11

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第51号 首長は「宣伝部長」になった方が評価される時代 『宮崎県庁観光客1カ月3万人』

 ご存じの通り、宮崎県がすごい。いったい県知事の役割というのは何なのだろうか考えさせられる。就任2年目となった宮崎県の東国原英夫知事は八面六臂の活躍ぶりだ。

 県をひとつの会社としてたとえるならば、県知事の役割は社長であり、総務部長であり経理部長であると思う方がほとんどであろう。実際、現在の宮崎県の状況は、知事イコール広報室長、あるいは宣伝部長の役割も兼ね備えている。

 たとえば、県庁によると1日平均300人から600人だった県庁見学ツアーの参加者が1000人に達している。つまり1カ月に3万人の県庁観光客が訪れることになる。
もちろん、知事のイラストなどが入った商品は昨年の5月頃から前年比5倍の売り上げで推移し、現在に至っても、このブームは尻上がりに伸びている。

 プロ野球などのキャンプで、宮崎県の来訪者が増えたため、昼間はキャンプに行き、夜は宮崎県のお土産を買うという相乗効果型のマーケットが誕生している。さらに県の観光リゾート課によると、昨年は社会人や学生を合わせて446団体が宮崎県で春季キャンプを実施し、キャンプによる経済効果だけで125億円。もうこうなってくると、巨大な宮崎デパートの誕生である。主力商品の地鶏や東国原英夫グッズ、いわゆる“そのまんま経済効果”といわれるマーケットは日本全国に勢いを広げている。

 テレビの番組表で東国原知事の名前が出ていない日を探せないほど、毎日宮崎PRのためにテレビに出ずっぱりの日々である。

 宮崎県のPR効果はいまや九州全土に及ぼうとしていて、「ANAセールス」の九州ツアーの参加者が対前年同期比110%で推移しているし、九州圏内のホテルも土曜日、日曜日は徐々に満館になっていると聞く。

 昨年、財政破綻で有名になった夕張以外にも1000に近い市町村が、財政が窮乏し破綻寸前にあって、県知事はもちろんのこと、市長、町長、村長にいたるまで、経済部長というよりは宣伝部長という役割に徹した方が、行政の責任者として評価される時代なのかも知れない。


2008年3月11日号


2008.03.04

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第50号 独身オトコよりも犬や猫がカワイイ! 『ペットを飼う独身女性「恋人が欲しい」55%』

 相変わらずペットブームが続いている。完全に把握しきれない数字も含めて、どうやら3000万匹以上の猫と犬が日本で愛玩されているらしい。

 不動産開発会社「リブラン」の研究所が昨年11月、首都圏の20歳から44歳の独身女性にインターネットで調査した結果、現在、彼氏のいない人に恋人が欲しいかどうかを聞くと、ペットを飼っている女性は約半数の55%だった。裏返せばペットを飼う女性の約半分は「ペットがいるから男はいらない」というふうにも読み取れる。
ちなみに、ペットを飼っていない女性は71%が「欲しい」だった。

 さらに、結婚を「非常にしたい」と答えたのは、ペットのいない女性で29%、ペットのいる女性は7ポイントも少ない22%だった。つまり、ペットのいる女性は結婚願望も比較的弱め。ペットとの生活がボーイフレンドや結婚への関心をうせさせ、面倒くさい男と生活を共にする必要はない、と考えている。

 考えても見れば、男女平等の世の中とはいえ、炊事や洗濯、育児などはまだまだ女性の負担になるのが現実。
たとえ恋愛中であっても、会いたくない時にデートに誘われたり、さして行きたくもない店での食事など、時間を拘束されるのも気が重い話なのであろう。

 最近、街を歩くとゴールデンレトリバーやポインターなどの大型犬と早朝散歩をしている女性の姿もチラホラ目につく。また、駒沢公園辺りに行くと、小さな犬とペアルックでベンチに座る女性がいたいりする。今やペットは男性よりも完全に愛される存在となっている時代である。

 ペットを飼う理由はさまざまであろうが、独身男性にチャンスがあるとすれば、この回答に注目したい。独身女性がペットを飼い始めた理由でもっとも多かった「一人で暮らすのは寂しいから」というもの。

 こうなってくると答えはひとつ。まず好みの女性がいたら、ペットの有無を聞くこと。次にもし、その女性がペットを飼っていなかったら、あなた自身が可愛いペットになるしかないのである。「彼女ナシ独身男」の最大の強敵は、犬や猫だということをゆめゆめお忘れなく。


2007年3月4日号


2008.02.26

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第49号 薬物はときには国家を滅ぼす! 『覚醒剤の検挙人数年間1万3000人』

 クマネズミと少女売春と覚醒剤の密売は、複雑化した日本社会の中で、それなりに姿かたちを変え、闇の中でその繁殖率を高めている。

 今回、取り上げるのは覚醒剤。先日、都内有数の住宅地である世田谷区を舞台に公然と密売を行っていたイラン人が検挙された。客は会社員やOL、さらに大学生である。この事件の場合、ボスといわれるイラン人が携帯電話で客と売買交渉をし、薬物の保管先と住居を兼ねたアパートから覚醒剤を持ち出して買い主と接触する。
近所に小学校や中学校があり、売買の場所は主婦などが利用する生活道路とくれば、ほとんど疑う人もいない。

 密売人の背後には大掛かりな密売組織があることが簡単に予想がつく。しかも年間売り上げは数億円といわれる。

 一連の薬物事犯の検挙者数は、覚醒剤、コカイン、ヘロイン、アヘン、大麻などの合計で年間1万5803人(平成17年)である。芸能人が大麻で逮捕される事件も相次いだ。

 薬物がときには国家すらも滅ぼすということは、すでに歴史で証明されているが、薬物の中でももっとも恐ろしいといわれる覚醒剤が全体の8割を占めて、1万3346人と圧倒的な数となっている。

 警察庁刑事局組織犯罪対策部では、来日外国人による不法輸入の取り締まりを強化している。イラン人、ブラジル人など、海外の薬物密売組織への対応は積極的ではあるが、残念ながら大きな効果はみられていない。

 知人の医師から、日本人はこの手の薬物を使用した場合、酩酊状態よりも覚醒状態を嗜好する民族である、という話を聞いた。依存性が強く、いったん毒牙にかかったら、地獄から抜け出せなくなってしまう。さらに覚醒剤犯の増加は、次の凶悪犯行を誘発する恐れがある。これ以上、事態を放置してはダメだ。一日も早く有効な対策を講じていかなければならない。


2008年2月26日号


2008.02.19

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第48号 住宅不況でダチョウが人気 『ダチョウ飼育場日本全国450ヵ所』

 行政不況ともいわれる昨今であるが、中でも建設業界の売り上げ不振は著しい。住宅建設許可がシビアになるだけではなく、認可が遅れるため全国の戸建て業者をはじめ、マンション業者まで、2年前、3年前の建設ラッシュがウソのように、大幅な売り上げ不振にあえいでいる。

 そんな中で、ダチョウを飼育する建設業者が急増中だ。全国で450ヵ所の飼育場があるという。なぜダチョウなのか。それにはいくつかの理由がある。ひとつは折からの健康ブームにあって低カロリーであること。
しかも鉄分やミネラルも牛や豚と比べて、かなり豊富。2つ目の理由は、肉がやわらかく臭みもないこと。全国チェーンの外食店やスーパーから肉の引き合いが相次いでいる。

 さらに良いことに、繁殖率も高い。ある業者は10羽のひなを入手し、せんべいや野菜をエサに今では35羽になっているという。

 ダチョウ自身の適性も大きい。気候の変化に極めて強く、極端な話、零下から夏の猛暑まで耐えられる。性格的にも寂しがり屋で、一度飼うとオリから逃げようとしないらしい。

 このダチョウブームに建設業者だけでなく、各自治体も注目し始めている。例えば山形県の朝日町は、閉校になった県立高校の跡地を県内の建設業者に無償で貸与し、地元特産のリンゴで育てたダチョウの肉を「アップル路鳥」としてPRしている。

 さらに山形県の建設会社は約3ヘクタールの敷地に「しろとりだちょう村」を建設し、週末には100人以上の来場者を迎えている。ダチョウの肉を加工したサラミやダチョウの皮の財布、ダチョウの卵を使ったアイスクリームなどアイデアも豊富だ。

 考えてみると、3年ほど前、BSEがわが国で問題になった頃、牛以外の肉を確保するために候補のひとつとしてダチョウの肉というのも議論された。今回のブームをきっかけにダチョウの肉の認知度が上がり、外食チェーンがメニューに加えたり、有名人のダチョウ肉ダイエットでも始まれば、日本人の食源のひとつとして広く普及するかもしれない。


2008年2月19日号


2008.02.05

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第47号 米クリスマスセール同様の巨大なニューイヤーマケット 『小中学生のお年玉2500億円』

 萎縮する日本経済の中で、無視できないマーケットがある。
お年玉の“市場規模”だ。

 小学館が昨年、小学生に実施した調査によると、別居している祖父母からもらったお年玉の金額は平均約1万1500円。その他の親戚からは約1万9000円。ちなみに隣近所の人からは約3300円で、それ以外の知り合いから約5500円と大変な臨時収入となっている。

 調査を始めた2003年と比べると、祖父母や親戚は600〜900円増、一方、隣近所の人に関しては800〜900円ほど少なくなっている。また、もらったお年玉の総額は平均2万5300円で、2003年より1500円も増えている。

 少子高齢化を境に悩ましい問題もいくつか抱えている。例えば、自分の家には子供がいないが、3人の子供を持つ友人がお正月に遊びに来たとしよう。正直に言って金銭的にも負担だし、先方からのお返しもない。こうした場合のお年玉に関するマナーについても、儀礼的なものなのか、義務的なものなのか、子供の権利なのか、はっきりとしたルールはない。さらに1、2歳児などのプレゼントやお年玉のありがたみがわからない子供たちにはどう対応していいかも難しい問題である。

 さて、もし1人が平均2万円のお年玉をもらっていると仮定すると、小中学生のお年玉市場は2500億円もの市場となる。このお年玉の大半は一体全体何に使われるのであろうか。オモチャや洋服、あるいはゲームセンターなどの遊興費だと仮定すると、アメリカのクリスマスセールと同様に、実は想像以上に大きなニューイヤーマーケットが存在していることとなる。

 お年玉をあげることが必ずしも義務でないとするならば、子供たちに読んでほしい本をプレゼントしたり、見てほしい映画のチケットをプレゼントしたりして、大人たちから子供たちへ金銭感覚より、文化感覚をプレゼントするのもひとつの知恵ではなかろうか。


2008年2月5日号


2008.01.29

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第46号 受験生のために積極的な情報公開を! 『大学・短大「経営困難」98法人』

 受験シーズンが本番を迎えている。受験生はもちろん、両親にとっても試練の季節である。

 そんな中、東京福祉大総長の女性教員に対する強制わいせつ事件が発覚した。総長の立場を利用した卑劣な犯罪だ。この数年、全国のキャンパス内での教員によるセクハラが続出しているが、トップまでもが手を染めていたのだから、言語道断である。

 大学の質の低下を如実に示す事件だが、実は大学をめぐっては、さらに大きな問題が指摘されている。経営危機である。日本私立学校振興・共済事業団の判定によると、全国の大学・短大あわせて98法人が「経営困難状態」にあり、うち15法人は「いつつぶれてもおかしくない」という報道があった。「経営困難」は全体の約15%にあたる。

 その背景には18歳人口の減少と大学の急増に伴う経営環境の悪化がある。15年前に200万人を上回っていた18歳人口は、07年度は130万人まで落ち込んだ。大学の供給過剰という状況の中で、赤字私大はいまや3割を超すという。

 早稲田、慶応を筆頭に一部の有名私大に志願者が殺到し、立志館大(広島)のような地方の無名私大は経営破綻に追い込まれた。これが現実だ。全入時代を迎えようとしているが、大学間の格差は確実に、急速に広がっている。

 問題は、危ない大学の情報が公開されていないことだ。誰だって「経営困難」と判定された大学・短大になど行きたくはないだろう。セクハラ事件や大麻不祥事などは学校名が報道されるから、志望校選びにあたって受験生にとっての判断材料になる。

 ところが、経営実態となると、ほとんどブラックボックスの中であるから、判断のしようがない。
「なんとか合格したはいいけど、その後で廃校なんてことになったら目も当てられないよ」
 ある受験生の父親が嘆いていたが、まったくその通り。

 私学経営には年間で3280億円(07年度)もの助成金が交付されているのだ。文部科学省や私学事業団も、もっと受験生サイドに立って、情報開示に努めるべきではないか。


2008年1月29日号



2008.01.22

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第45号 タスポ導入でどうなる? 『たばこ自販機56万台』

 喫煙者がどんどん追い込まれている。新幹線、タクシーなど禁煙エリアが日に日に拡大。愛煙家は肩身の狭い思いをしながら、煙モウモウの喫煙スペースで一服というありさまだ。

 そんな状況の中、今年、全国に導入されるたばこ自動販売機の成人識別カード「タスポ」をめぐる騒ぎが大きい。カードがないと自販機でたばこが買えなくなる。その一方でカードの普及が進まなければ、コンビニエンスストアなどの店頭販売のシェアが高まる可能性もある。そこで、たばこメーカーとコンビニを含めた販売店の思惑が錯綜しているのだ。

 たばこの自販機は全国に何と56万台。業界の調べでは自販機の購入シェアは66%。金額ベースで約51%を占める。もしもタスポが普及しなければ、この巨大な市場はコンビニと販売店に流れ込むことになる。童顔の大学生に「申し訳ありませんが高校生にはたばこを売れません」とか、「身分証明はありますか」など、こんな会話のやりとりで店員とトラブルが起きかねない。

 たばこメーカー各社も対応に追われている。マイルドセブンなどのパッケージ販売をする際、キャラクターものの付録を付けたり、コンビニなどの店内に専用棚を設置したり、基本的には自販機より店頭での販促に力を入れているようにみえる。

 昨年12月、タスポの申し込みが始まった宮崎、鹿児島では、カードの普及を図るべくPRイベントを開催。街頭で顔写真を無料撮影するなどの申し込み拡大に向け必死だった。

 タスポが東京をはじめ首都圏のビックマーケットで導入になるのは7月以降。マネーカードを使い慣れている若者やビジネスマンはすんなり使いこなしていくだろうが、高齢の愛煙家は戸惑うのではないか。

 ちなみに、私は愛煙家である。たばこ=不健康というシンプルな図式も分からないではないが、たばこ=文化であった昔を懐かしんだりもする。マナーも守っている。そうした喫煙者を排除するような風潮が高まることだけは避けてもらいと願っている。


2008年1月22日号


2008.01.08

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第44号 救急救命士が2万人を超えた! 『救急車出場件数対前年比5万件減の523万件』

 最近、街中を走る救急車の数が減ったように思われる。年間の救急車の出動件数は平成18年中で523万件。対前年比5万件も減少している。驚くべきことに、この数字は昭和38年に救急業務が法制化されて以降、初の減少となる。

 減少した原因と背景は、主に交通事故の件数が減少したこと、また救急車の適正利用の普及、さらに平成18年度はインフルエンザが大流行しなかったことなどが考えられる。

 救急車は約6秒に1回の割合で出場しており、なんと国民の約26人に1人が搬送されたことになる。現場到着まで約6分で、携帯電話や写メなどの普及により、救急車が事故現場へ到着するまでの時間がさらに早くなったと思われることを考えると、わが国の救急態勢の高度化が着実に進展しているといえよう。

 平成19年4月現在、救急隊数は4940隊と、5000隊に迫っている。救急隊員も着実に増加し、なかでも救急救命士の資格を有する消防隊員は初めて2万人を超えた。また、救急救命士のいる救急隊は全体の85%に及び、4200隊近くが救急救命士を擁している。したがって、応急処置の内容も一段と高度になり、この組織の充実のおかげで、年間交通事故死亡者数も激減したといえる。

 さらに数字を追いかけると、救急隊員数は5万9491人、救急救命士数は2万59人、一般的に救急隊員は3人で稼動することが多いが、そのうち1人は救急救命士である。器具によって気道を確保したり、薬剤投与が可能であったり、静脈路を確保したりと、医療特定行為によって命をとりとめた人もおそらく数千人になるであろう。

 各消防機関の実施する応急手当て普及講習の受講者数も年々増加し、平成18年中で150万人に迫っている。
つまり、救急車が到着する前に幸いに心臓マッサージ、人口呼吸などの応急手当てを受ける人も今後増えてくる。ここ3年でピークを迎える団塊の世代の退職者の社会参加意識が強ければ、日本全国の人命救助にかかわる大きなインフラとなってくるのではなかろうか。


2008年1月8日号


2007.12.18

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第43号 日本の電柱3300万本『ロンドン、パリは無電柱化率100%』

 イギリスの友人からいきなり「日本の空は汚いね」と言われた。
空間に張り巡らされている電線のせいである。

 そういえば、国土交通省が推進している無電柱化はどうなっているのであろうか。海外に目を向けるとロンドン、パリは無電柱化率100%、ベルリンは99.2%、ニューヨークは72%。一方、東京23区における無電柱化率は、なんと7.3%(05年)で、欧米の主要都市と比べて大きく立ち遅れている。日本全国の市街地平均は1.9%と、電柱と電線だらけなのである。

 日本全国にある電柱の本数は、電気事業便覧によると電力会社10社合計で、約2080万本(05年3月)。さらに電力会社の他にNTTも保有している。この数は04年度末の数字で、東日本が約570万本、西日本が618万本、おおまかであるが、全国の電柱の本数は約3300万本という数字である。つまり、日本人の人口に対して4人に1人が電柱を持っていることになる。

 電柱は、公共の場所に立ているとは限らない。個人の私有地に立っている電柱は1180万本。電柱の3本に1本は、個人の敷地に立っている。電力会社は、それぞれの個人には電柱敷地料という名目で1年間に電柱1本につき1500円、支線(電線)1本につき1500円、合計3000円を3年分まとめて9000円、振り込んでいる。
 
 国土交通省は1985年度から関係事業者と連携し、電線電柱の地下空間活用(電線共同溝の整備、無線電柱化)を促しているが、04年度末には約6200キロの地下敷設を実施してきた。

 子供の頃は電柱にのぼっておふくろに怒られたり、お正月ともなれば電線に凧がひっかかったり、散歩中の犬がオシッコをひっかけるなど、懐かしい思い出のある電柱だが、都市景観という美意識の議論をするならば、わが国は後進国と言われてもしかたない。

 交通や防災の面からも問題が指摘されている。街づくりビジョン全体の見直しが急がれる。


2007年12月18日号


2007.12.11

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第42号 30代の本離れ進む『1ヵ月本を読まない人52%』

 まったく嘆かわしい数字である。読売新聞社の、読書に関する全国世論調査の結果によると、なんと、1ヵ月のうちに本を読まなかった人の数が、前回調査に比べ3ポイント増え、52%となった(10月28日掲載)。2人に1人はまったく活字に触れずに生活しているというわけである。

 年代別では高齢者ほど本離れが進んでいる。70歳以上が66%、60歳代が55%、50歳代は51%。ショッキングなのは、30歳代が44%で、前回の調査と比較すると8ポイントも増えてしまったことである(40歳代45%、20歳代43%)。

 読書人口は国家の文化を支え、道徳を支え、教育を支え、福祉を支える重要な数字ある。それなのに、この結果はどういうことか。

 本を読まなかった理由(複数回答)は、情けないことに「時間がなかった」というのが49%で、対前年比4ポイントアップと最も多く、次いで「本を読まなくても困らない」20%、「読みたい本がなかった」19%などの順となっている。

 やはりここでも、パソコンと携帯電話の影響が出ているのではなかろうか。通勤電車の中で、携帯メールを打ち、帰宅してテレビを見、就寝前にパソコンを開いていたのでは、活字に触れる時間など、持てるはずもあるまい。

 ちなみに読みたい本の分野を3つまで挙げてもらったところ、「健康・医療・福祉等」が25%でトップとなった。
これは高齢化社会市場の影響もあることながら、あわせて自分の健康を懸念する人が日本全体に増えている結果であろう。

 活字離れを起こした国家の最大の悲劇は、活字によって培われる想像力を失うことである。つまり、目の前の事象にとらわれ、一歩二歩先の予測すらつかない国民が6000万人いるということは、ある種、文明の後退をも感じさせる。

 携帯電話の通話料やパソコンの通信コストに加え、外食費、しまいには医療費も家計に重くのしかかる今、真剣に活字文化への接近を促す対策を講じなければならない。公共の図書館の開館時間を長くするとか、各企業レベルで読書を勧めるとか、それぞれがもう少し活字のありがたさを見直して欲しいものだ。


2007年12月11日号


2007.12.04

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第41号 学校相手の“クレーマー”が急増『モンスター・ペアレンツ認知59.7%』

 モンスター・ペアレンツという言葉をご存知だろうか。
幼稚園や小学校、はたまた高校から大学まで、学校に対し激しくクレームや要求、場合によっては暴力沙汰を起こす父兄のことをいう。

 キャリア・マム(マーケティング、コンサルティンブグ会社)が実施した実態調査では、調査対象者の59.7%がモンスター・ペアレンツの存在を知っていた。
さらに強烈なのは、実に30%近くがモンスター・ペアレンツが周りにいると回答したことである。

 具体的なクレーム先は34.7%が担任の教師、次いで32.2%が校長もしくは園長、15.3%が保育士、5.1%が担任以外の教師、4.2%が教育委員会に直訴、というパターンである。その内容は多岐にわたる。
通勤に間に合わないから通園バスを早く寄越せ、あるいは運動会の競技の内容の変更、教室の雰囲気に対するクレーム、テストの出題に関するクレーム、ひどいものでは給食のメニューから校則の変更まで。

 これらのモンスター・ペアレンツの特徴は自分の家庭が世界の中心であると考えているところである。私の友人のある校長は、「年々そういう親が増えている」と嘆いていた。
つまり、家庭内での教育はほっぽり投げて、気に入らないことがあると担任や学校にとどまらず、教育委員会、文部科学省にまで突撃をする。まさにモンスターなのである。

 一方で、自分の子供のことを学校に任せないで、自分で教育する親も出現している。
「いじめ問題」などの決定的な対処の方法もないなか、親が学校に対する不信感を持つという現象は、わからないではない。しかし、核家族化して、先生と親との間にサンドイッチになってしまった2000万人以上の子供たちが、モンスター・ペアレンツ以外に頼るべきものをなくしてしまったこの国の将来が危ぶまれる。


2007年12月4日号


2007.11.27

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第40号 山村留学のススメ『参加の小中学生806人』

 ゴキブリとクワガタの区別がつかない。桜と梅の違いが分からない。海水は浮力があって体が浮くことを知らない。流れ星を見たことがない。

 挙句は、餃子を植物だと思っている、など主に大都市の小中学生の自然離れ現象は年々激しくなる一方だ。

 わが子を自然とともにたくましく育てたい、自立心を育てたい父兄にオススメなのが、山村留学である。2006年度の山村留学参加者の数は小中学生合わせて806人。
小学生552人、中学生284人だった。現在山村留学を受け入れているのは全国で27都道府県。小学校127校、中学校56校である。

 長野県のアルプスのふもと、旧八坂村は山村留学発祥の地である。今年で32年目になるこの制度は、財団法人「育てる会」が実施し、この村にある山村留学センターで子供たちは集団生活をしている。またある生徒は2〜6人に分かれて農家に泊まる。

 このセンターから5キロほど歩くと留学先の八坂中学校に着く。そこは全校生徒42人の中学校。4分の1程度は山村留学生が占めている。部活動は吹奏楽とバドミントンの2つだけ。ほとんど地元中学校生と区別のない生活を送る。山村留学の基本は1年間だが、翌年も継続するケースが圧倒的に多い。受験期になると親元に帰り受験勉強に集中するパターンだ。

 ちなみにこの山村留学の費用は月々8万円。一見、高いようだが、子供たちが商業化された街に無防備に放出され、ゲームやファッションや添加物だらけのファーストフードにお小遣いを支出することを考えれば、はるかに経済効果があるのではなかろうか。

 私のビジネスパートナーの、キョードー東京の嵐田会長のご子息は、この山村留学で鋼のような精神と肉体を備えた子供に育てられた。

 通勤電車で疲れ、携帯電話で耳鳴りを起こし、上司と部下の間でサンドイッチのようになってしまっているあなたも、少しでもエネルギーが残っているうちに、ホンの3週間、休みをとって大人の「山村留学」を実行してみてはいかがだろう。


2007年11月27日号


2007.11.20

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第39号 2年連続減少「焼酎ブーム」の行方 『焼酎市場3326億円』

 帝国データバンクによると、2006年の焼酎メーカー上位50社の売上高合計は、3325億7800万円となり、対前年比1.4%減となった。2年連続で前年割れである。上位50社のうち、九州・沖縄地区の企業は前年と同じく43社。このうち増収企業は前年の35社から9社減って26社となった。

 売上高トップは、麦焼酎「いいちこ」を擁する三和酒類、2位は「博多の華」「鍛高譚」を擁するオエノングループ、3位は「白波」を擁する薩摩酒造だった。

 最近の焼酎市場を引っ張っているのは、芋、麦、そば。県別のメーカー数を見ても分かる。1位が芋焼酎を主力とする鹿児島県勢。2位は麦焼酎を主力とする大分県勢、3位は芋・そば焼酎主力の宮崎県勢という順番になっているのだ。

 ご存知の通り、04年にピークを迎えた焼酎ブームは、2年連続で前年実績を割ったものの、03年以降、いまだに清酒の出荷量を上回り、消費者に定着したことは間違いない。当時は健康ブームをベースに焼酎ブームをつくったが、マーケットが急激に拡大したこともあり、原料の芋不足のため出荷量を制限した。昨今では、耕作面積の拡大などで芋不足については解消されたもよう。

 一方で、原材料価格の上昇と海洋投棄禁止による搾りかすの処理費用の増加で、値上げの動きも出てきている。価格に敏感な消費者の今後の動向が注目されるところだ。

 それだけに、今後は首都圏や関西圏、東北地方、北海道エリアへのマーケテイング戦略が安定成長のカギになる。加えて、韓国、中国、ベトナムなどへのアジアマーケットへの目を向ける必要も出てくるだろう。

 鹿児島出身の私が利用する鹿児島空港のみやげ物売り場には焼酎がズラリと並ぶ。そのラベルがこの3年間で4倍にも5倍にもなっているように思える。マーケットが一気に拡大して経営者が傲慢になると、ブランド戦略を怠って商品構成が複雑になり過ぎるケースがある。身を引き締めて、むしろ主力商品を強化することが今後の安定成長のカギとなるはずだ。


2007年11月20日号


2007.11.13

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第38号 中国文化の浸透 『中国語教育市場37億5000万円』

 2008年の北京オリンピック開催を控え、日本国内で中国語学習ブームが再燃している。日本の語学教育の市場規模は、2006年度に対前年比5億円マイナスの8126億円。このうち、なんと99%以上が英語。市場の2位は中国語の37億5000万円だった。全体の市場規模が微減の中で、中国語のみ増加。おそらく2010年には、50億円を突破するだろう。

 授業に中国語を取り入れた私立校や幼稚園も増えている。さいたま市の淑徳与野中学校は、3年前の開校時から課外授業の一環として中国語を必須科目に指定した。

 高知県の明徳義塾中学校・高等学校は、小学生を対象に外国語暗唱大会を行ったが、その中で10人以上の小学生が中国語の課題で応募した。高知市内には中国語を授業に取り入れている公立の小中学校があり、日本の中では最もすすんで中国語を取り入れているといえよう。

 一時、アメリカ・コンプレックスからか、子弟をアメリカンスクールに入れバイリンガルに育て、ひいてはアメリカの大学に進学させるという風潮があった。最近は、中華学校に入学を希望する日本人が増えている。東京・千代田区にある東京中華学校にも、日本人の入学希望者が集まり大人気。小学校から高校まで全体280人のうち、なんと約3分の2が日本国籍である。

 言語習得は、ただ単にランゲージ・バリアを取り除くだけでなく、言葉に合わせて文化や習慣も身に付く点で重要である。健全な形の国際化は社会に広がりをもたらす。その意味では、若者層への中国文化の浸透は結構なこと。

 ただ、その一方で日本文化を積極的に広める努力も必要だろう。日本の教育機関は、学費だけでなく生活費等も面倒をみて、日本語を学ぶ各国の学生を積極的に招いたらどうか。


2007年11月13日号


2007.11.06

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第37号 音楽業界にも格差社会 『1年間の新人歌手数324人』

 カラオケの普及で、国民全体が歌手といってもいいような時代だ。しかも持ち歌が多く、100曲、200曲を歌いこなすアマチュアシンガーは、ざらであろう。

 2006年度の新人歌手のデビュー数は、再デビューの56人も含めて324人だった。歌手を採用する音楽ディレクターの採用基準やレコード会社の採用教育費や新人歌手に投資するコストなどもあり、年ごとにバラつきはあるものの、この3年間、ほぼ300人前後で推移している。

 一方で、レコード店舗の販売の売り上げは低迷。TSUTAYAやHMV、タワーレコードなど、上位10社のチェーン店の売上高合計は前年度比6.8%減となっている。

 ところが、インターネット経由で携帯電話や携帯デジタルプレーヤーなど、モバイル、PCに配信された音楽の売上高は534億円と急増。2005年に配信を始めた「iTunes」などは「iPod」との提携で利用者数を急速に伸ばしており、恐らくシングルCDの売上高を来年は逆転するだけでなく、はるかに引き離すことになるであろう。

 また、「iTunes」と契約をしているレコード会社も100社に上り、携帯電話向けの配信が全体の90%に拡大している。着うたフルなどの普及で若者のCD離れが進む。

 そんな中で新人歌手が良い作曲家と良い歌に恵まれ、デビューし、ヒット曲を出すのは至難の業。よほどの個性派でない限り、音楽史上の記憶に名前を残すことは困難である。古くから活躍したビッグネームや、大なり小なり万単位のファンクラブを持つ歌手や、偶然に恵まれ、映画やテレビコマーシャルがヒットしたりする以外に、新人歌手が業界にとどまることはほほ不可能と言ってもいい。

 音楽業界の中にもさまざまな形で格差社会が構築されつつある。


2007年11月6日号


2007.10.30

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第36号 マネーレス時代の到来 『SuicaとPASMO1ヶ月の決済件数1920万件』

 古き良き日本は、父親の権限がきちっとしていた。給料日に、茶色い封筒と手土産を持った親父が家に帰ってきて、その封を切るとそこからお札とコインが出てきて「今月分の給料だよ」とお母さんに渡すことで、父親の権限というのは子どもにも誇示できたものである。ところが、今やキャッシュレスからマネーレスの時代へと変わりつつある。

 カードによって買い物をし、生活をしていくことで、財布の中に10枚のカードはあっても、10万円以上持っている人は少ない。さらに、そのカードがIC化され、統合されることで、やがては本当に現金のなくなる時代(マネーレスの日々)が近づいてくる。

 2007年3月に首都圏の私鉄などの交通機関は、ICカード乗車券「PASMO(パスモ)」のサービスを開始した。JR東日本の「Suica(スイカ)」との相互利用を始めたのだ。ICチップを埋め込んでセンサーのかざすだけで改札を通る、このカードを持っていれば路線の壁を越え、首都圏の鉄道やバスなど、ほとんどの交通機関で利用できるのだ。更にはJR西日本の「ICOCA(イコカ)」やJR東海の「TOICA(トイカ)」を加えたJR3社での相互利用を始まる。つまり「Suica」1枚でなんとJR各線1200駅で乗降が可能となる。

 このことのによって携帯電話に「Suica」機能を搭載した「モバイルスイカ」や駅の売店やコンビニエンスなどで使える「Edy(エディ)」や「ハナコ」などの多くの電子マネーが、やがては融合していくのであろう。

 ちなみに「Suica」は9月までに加盟店舗が2万2000店を超え、1ヵ月当たりの「Suica」と「PASMO」の決算件数は1920万件に達している。

 われわれが概念として持つ交通乗車券が、完全な電子マネーと変貌し、そこに生活消費のすべてが統合されることで、確かに便利な時代が到来するのであろうが、個人認証の問題やセキュリティーの確保など、社会的なインフラとして定着させるために同時進行して行わなければいけない課題も多い。パソコンや携帯に続いて、無防備に普及を急ぐと、その裏で失うものも多いことを注意しなければならない。


2007年10月30日号


2007.10.23

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第35号 洗浄トイレはどこまで進化するか 『洗浄便座普及率65.3%』

洗浄便座(トイレ)の普及がめざましい。一般家庭の洗浄便座の普及率は平成19年3月度の調査で65.3%。つまり一般世帯の2000万世帯程度は洗浄便座を取り付けていることになる。加えて、デパートやホテル、旅館、ゴルフ場に至るまで、商業用施設への普及率も一般世帯以上に早まっているという。

 洗浄水量の業界標準は10年前まで1回当たり13リットル。これは4人家族のモデルケースで、年間約2万円の水道代がかかっていた。それが最近の最新式の洗浄トイレでは、1回あたりわずか6リットルで用をたせる。洗浄水槽の進化はもちろん必要な水の量だけでなく、今後もより一層ハイテク化するのは間違いない。たとえば音楽や照明と連動し自動的にフタが開く。あるいは便座に腰掛けた瞬間に体脂肪率や体温、脈拍などを測る医療用への革新。さらには便器の材質も陶器から汚れがつきにくいアクリル樹脂への変化など。

 一方で、諸外国では相変わらず不衛生なトイレや水の出ないトイレなど、どうもトイレに関心がないようだ。これはトイレのコマーシャルが、特に欧米では難しいせいもあるのだが、それ以上に清潔好きな日本人の民族性と洗浄トイレが、ピッタリはまって市場を形成した、ということであろう。

 私などもそうであるが、洗浄トイレはかなり習慣的な要素が強く、このトイレに慣れてしまうと一般のトイレでは用がたせなくなるという人も多いし、さらに高齢者や身障者に至っては生活必需品となっている。一方で、ハイテク化が進むにつれて、洗浄ボタンやその機能を指示するボタンも複雑化しており、あやまって緊急ボタンを押したり、女性用のビデのボタンを押したり、洗浄のための水温をあやまって設定したりするケースが見受けられる。よりシンプルなボタン操作も今後の課題となってくるであろう。

 課題はあるが、この洗浄トイレ、日本が世界に誇る文化と言っていいのではないか。


2007年10月23日号


2007.10.16

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第34号 買うから借りる時代に 『レンタカー35万5000台』

今年の夏休みに北海道でゴルフツアーを考えて、札幌からレンタカーを借りようと思ったが、まったく予約ができなかった。調べてみると、実は日本全国でレンタカーは大賑わいなのである。

 全国レンタカー協会の調べによると、2006年3月末の国内レンタカーの台数は35万5000台。前年度末より7%増加。なんと10年前の1.4倍になっている。

 かたや06年の新車の販売台数(軽自動車含む)は、05年に比べ4.1%減の561万8500台と20年ぶりの低水準。今、日本人は目覚めたかのように、「車は買うより借りた方が得かつ合理的」という考えに変わってきたのであろう。個人だけでなく、ビジネスシーンも同様だ。

 これはガソリンの高騰も関係している。1バレル=100ドルを予測する経済学者もおり、そうなるとレギュラーガソリンの価格は1リットル=200円を越す。加えて駐車場代やら保険、車検費用などの維持費を考えれば、マイカーを手放し、必要な時だけ借りるレンタカー派が増えてもおかしくない。毎月の会費と利用時だけ料金を支払えば済むカーシェアの動きも加速していくだろう。

 さて、買うより借りる時代の到来で、もうひとつ重要なことは大量生産、大量消費の不合理な経済体制にくさびを打つことが出来ることである。壊れかけたこの国のコミュニテイーを再生産する意味でも、レンタカーをはじめ、めったに使わないものを共有で購入するというのは納得のいくシステムであろう。

 その一方で、お隣中国では昭和60年代の日本と同様に、競い合うように車とマンションが売れている。モータリゼーションが本格化してきているのだ。レンタカー志向の高まりと国内の新車販売低迷という事態が続けば、日本の自動車メーカーの中国依存度はますます高まっていく。


2007年10月16日号


2007.10.02

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第33号 遅寝早起きの弊害 『日本人の睡眠時間6時間以内41%』

早起きをして朝刊を片手に散歩していると、夜更かし組が帰宅する。昔であればせいぜい徹夜マージャンくらいで、ほとんどの人は健全な睡眠についていたはずのこの国は、今や世界で最も眠らない国となった。

 ちょっと古いデータだが、ACニールセン(2004年インターネット調査)によると、最も睡眠時間が短いのは日本人で、総人口の41%が6時間以内の睡眠時間となっている。残業で帰宅が遅くなるビジネスマンや、TVの深夜番組やネットにはまる若者たちの睡眠は削られる一方だ。

 街も眠らない。コンビニ、ガソリンスタンド、ファミレス、ネットカフェ、サウナなどが、高騰した地代を補うために、こぞって24時間営業している。

 NHKの国民生活調査でも、1960年に8.13時間だった日本人の平均睡眠時間が2005年には7.22時間。この傾向は年々続き、10年には6時間台に突入するといわれている。

 さらにカラダに悪いのは、遅寝早起き傾向だ。12時以降に就寝する人の順位でみると日本は世界で6番目。ちなみに1位はポルトガル、2位台湾、3位は韓国。7時までに起きる国をあげると、1位インドネシア、2位ベトナム、3位がフィリピン。日本は世界8位であるが、両方のベストテンにランクインしているのは日本だけである。つまり12時過ぎに寝て7時までに起きる、というのが今の日本人の平均睡眠パターンといえそうだ。

 この睡眠時間の減少が深夜の犯罪の増加に始まり、子供たちの健全な成長を阻害しているとすると、24時間という営業体制は産業界全体でチェックして見直すべき国家的課題といえる。「深夜国家」といわれる不健康なイメージも至急改善すべきではなかろうか。
国家も人も、「寝る子は育つ」のである。


2007年10月2日号


2007.09.11

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第32号 高齢化社会に最適のペットは? 『ガラパゴスゾウガメの寿命175年』

スポーツベントから音楽イベントまでプロデュースしているのだが、もっとも切なくつらいイベントは葬式である。
特に独り身の高齢者のペットの葬式などはいたたまれない。

 どうせペットを飼うのであれば、やはり寿命の長いペットの方が悲しい涙を流さなくてすむ。手間がかからず、かつコミュニケーションが取れれば、高齢化社会にとって最適なペットといえるのではあるまいか。

 寿命だけで言えばガラパゴスゾウガメがナンバーワンだ。彼らの平均寿命は175年。どんなに長生きをしても彼らに先立たれる可能性はない。ただし、ワシントン条約保護対象動物なので個人の飼育はできない。

 オススメなのが、意外や意外、フクロウである。フクロウの平均寿命は70年。夜行性のあなたにはピッタリである。ブームにもなったチンパンジーは50年。コミュニケーションも取れるし、オススメのペット。家庭のペットとしてはほぼ不可能であるが、ゾウなどは100年は堅い。

 手っ取り早く子供の愛玩動物としてハツカネズミやハムスターなどを購入される方も多いが、彼らの寿命はせいぜい2年から3年がいいところで、今年のように異常気象で高温が続くと、その寿命もおぼつかないものになる。

 さて、動物の寿命には2つの考え方があり、ひとつは動物園やペットなど、飼育管理される動物群で、この場合の寿命は「生理的寿命」と呼ばれ、ある意味、生命をコントロールされた寿命のことをいう。かたや野生動物など、子育て等の生物的な役割を果たして一生を終えるのを「生態的寿命」という。

 生態的寿命は生理的寿命に対して、平均的に半分ほどの長さしかないといわれている。つまり、われわれ人間も本来は50歳前後が生態的寿命のはずであるが、社会的なさまざまな仕組みで保障されているがゆえに人生80年時代を迎えているのかも知れない。

 最後に、ペットを購入する際には、現在の年齢を確認してから購入することをオススメしたい。残る寿命を知っておかないと、結局はペットに先立たれ悲しい涙を流すハメになる。


2007年9月11日号


2007.09.04

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第31号 サラリーマンの実像がクッキリ 『時間感覚<早出=6時18分>』

 友人のさだまさしさんとよく血液型別時間感覚の話をする。その中でよく話題になるのが、時間の受け止め方、感覚は、曖味な人とシャープな人では大いに異なるということである。

 それを如実に示したのが、シチズン時計の「ビジネスパーソンの“時感”」アンケートだ。時の記念日(6月10日)を前にビジネスパーソン400人を対象にしたもので、その結果が面白い。

 ビジネス行動で使われるいくつかの言葉を、サラリーマンはどう受け止めているか。

 まずは「早出」。その答えは午前6時18分。次に「朝イチでミーティング」の朝イチ。これは7時54分。
知人が「中央線の快速は6時過ぎには座れない」とコボしていたが、これだけ早くに出社していれば、座れないのも当然だろう。

 「残業でちょっと遅くなる」のちょっとは、1時間が40%、1時間30分が22%。なんと2時間という人が30%もいる。働き過ぎを象徴しているようだ。

 電話の「ちょっとお待ちください」は、約20〜30秒が53%を占めている。問題は12%存在する1分以上という層である。1分以上も待たされては、印象を悪くするに決まっている。「ちょっとお待ちください」は絶対に30秒以内のレスポンスが必要だ。

 それでは「近いうちに食事に行きましょう」の近いうちは?
全体の43.5%が1カ月後、25%が1週間後、2〜3カ月後が12%である。通常、ビジネスで営業を伴った場合の「近いうち」は、1週間以内でないとその約束は成立しないといわれている。気をつけたいものだ。

 「時間感覚は人それぞれ」と言ってしまえばそれまでだが、ビジネスに関する限り、よほど感覚を研ぎ澄まさないととんでもない失敗を犯すことになる。


2007年9月4日号



2007.08.28

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第30号 社会的インフラとしての可能性 『タクシー台数22万台/2005年度』

 最近、タクシーに乗ると、イヤな気分になることがある。転職して間もないのか、道路事情も分からず、ルート判断もきちんとできない運転手、ナビゲーションを頼りに前を見ないで急ブレーキを踏む運転手など、「他の車にすればよかった」と悔やんでしまう。筆者の周りからも同じような声をよく聞く。

 交通政策審議会(国土交通省の諮問機関)の小委員会は、タクシー運転手になれる条件の厳格化などを提言した。今は第2種運転免許を持っていれば、誰でも運転手になれるが、このザル法を改め、過去の交通事故歴などを条件に加え、問題のある運転手や事業者を排除するのが狙いだ。

 タクシー市場は2002年、小泉内閣による自由化で数量規制が撤廃された。よって2001年度に20万8000台だったタクシー台数(個人タクシーを除く)は、2005年度には22万4000台に増加。また、タクシーが起こした人身事故は2001年度の2万6000件が、2003年度には2万7300件に。タクシー台数の約10%が交通事故を起こしている事になる。

 一方で、大量輸送機関としてもタクシーの役割は大きい。年間の輸送人員は約24億人。国民1人当たり年間20回乗っている計算だ。この数字はJRの86億人と比べるといかに大きいかがわかる。

 タクシーの中では、ドライバーと乗客のコミュニケーションがある。これを社会的なコミュニケーションメディアとして有効に生かせば、乗客にとっても地域社会にとってもメリットは大きい。いろんな人生経験を積んだドライバーとの会話によって、客は新たな知識を吸収できる。

 ドライビングテクニック、タウン情報、人物情報、トレンド情報など、情報の穴場である。それだけではない。ドライバー同士の連携を強化することで、犯罪対策や災害対応、社会福祉などの面での可能性も広がる。

 長引く景気の低迷により、タクシー会社及び個人タクシーの経営状況は、極めて厳しいものとなっているのは分かるが、実はわれわれの生活の中に浸透したインフラだけに、もう一度見直さなければならない点は多い。


2007年8月28日号


2007.08.21

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第29号 フリーペーパー生き残りの条件 『2億9375万部』

 居酒屋に行っても喫茶店に行っても、ホテルのロビーに行っても、飛行機に乗っても新幹線に乗っても、日本中フリーマガジンだらけである。

 つい最近まで有料が当たり前と考えられていた雑誌が、どんどん無料化している。情報がインターネットをはじめ、無料で手に入る時代になってきたということだ。

 日本生活情報誌協会によると、2006年の調査で無料紙誌は950社、1200紙誌にも及ぶ。その総発行部数たるや、2億9375万部となり、部数はどんどん増加している。以前、私のいた会社も広告収入で雑誌を出版しているため、価格は圧倒的に低かったが、ここ最近ではまさに無料ビジネスモデルが他の出版社でも確立した感がある。

 一方で、2002年の調査をみると、無料紙誌を発行している会社は1061社、2億2087万部となっており、この5年間でフリーマガジンを発行する社数は減少している。おそらく紙・新聞系のフリーペーパーから、雑誌の体裁のフリーマガジンに移行する過程で、資本力の少ない会社が淘汰されたのではないかと思う。

 実は、広告主にとっても効果の有無は評価しづらい。そのため、創刊から数カ月の間は創刊効果で広告収入は取れるものの、その後廃刊に追いやられるメディアも少なくないとみられる。

 原宿や青山で最近見かけるサンプルショップも同様であるが、最終的には顧客データの蓄積と自宅や会社配送などの流通システムが整ったメディアの生存率は高くなるであろう。

 発行意図を明確にし、読者層を絞り込み、なおかつ的確な流通経路を押さえ、無駄な印刷をしない、というのが生存する4つの条件。いずれにしても地球環境保護のため、紙の無駄な消費をなるべく抑えなければならない時代にあって、良心的なフリーペーパー・フリーマガジンのみが生存を許されるのである。

 また、タダだからといってフリーペーパーをヤミクモに手にする日本人のケチくさい好奇心が広告効果に結びつくかどうかも、大げさではなく国家レベルの問題である。


2007年8月21日号


2007.08.13

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第28号 下半身ビジネスの膨張 『性風俗マーケット3兆円/年間売り上げ』

 事務所がわりにしているホテルで夕方から深夜にかけて、片手にポーチを持った女性が、ロビーから平然と客室に向かう。

 いわゆるデリヘルといわれるセックスの宅配便である。実はこのデリバリーヘルス、窓口数・サービス時間・平均待ち時間で平均的客数を推測した試算によると、その年間売上高は2兆4000億円(2005年)。大きな自動車メーカーの売上高にも匹敵する。

 試算を行った門倉貴史氏の「世界の<下半身>経済が儲かる理由」によると、ピンクサロンが6457億円、ファッションヘルスおよびイメージクラブが6780億円、さらにSMクラブを加えるとなんと3兆円を超えるマーケットに発展している。

 公衆電話ボックスの周辺にチラシやビラを貼り付けるという原始的な営業スタイルが大きく変化。携帯電話やウェブビジネスの拡大で、営業がはるかに効率的になった。その一方で、低単価で性風俗を楽しむマーケットが構築された。こうした環境の変化がマーケットの成長をもたらしている。

 しかし、この市場で働く女性(男性もいるだろうが)は、基本的には人と接する接客業なので、マーケットが拡大するにつれて起きるトラブルも日増しに増えているようである。

 デリバリーヘルスの繁盛店の目安は客単価の平均が2万円、客数が15人(15本)と1日あたり30万円程度。つまり7人のデリヘル嬢を雇用し、それぞれが2人ずつの営業をすると、年間売り上げが1億円を超える。そこから女性への人件費や送り迎えする車などの諸雑費を引くと、経営者の年収はラクに2000万円を越える。ネットによる顧客アドレスの獲得や同様にネットによって紹介する女性を増やしていけば、おそらく年収1億円程度の経営者はザラにいると思われる。

 もはやわが国の文部科学省の予算程度にまで発展した下半身マーケット。野放図な拡大は、国家レベルの品格を問われることになってくる。


2007年8月13日号


2007.08.07

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第27号 9年連続3万人超の現実 『自殺者数3万2155人/年間』

 1998年に年間の自殺者数が3万人をを超え、その後も高い数字が続いている。06年は3万2155人。9年連続で3万人を超えてしまった。

 自殺の動機としては、健康上の理由、経済・生活問題、家庭問題の3つが上位を占めている。最近は小学生や中学生の自殺が増加、20代、30代のネット自殺も社会問題化している。

 わが国の自殺死亡率はとても先進国とはいえない高い数字にあり、先進諸国ではロシアに次いで第2位だ。  

 06年度における自殺者の概要をみると、19歳以下が623人、20歳代が3395人、30歳代4497人、40歳代5008人、50歳代7246人、60歳以上1万1120人と、高齢化につれて増えているのが分かる。

 世代別に自殺の特徴をみると、中高年は経済問題や健康問題。うつ病や不眠症などの病を患い、周辺に相談せずに自殺する人が多い。青少年の特徴は、大人に比べ自殺未遂者が多い点だ。進学や健康、人間関係などの理由から衝動的に自殺の道を選ぶケースが多い。

 注目したいのが職業別の人数。「無職者」が全体の47.9%、1万5412人にも達する。「有職者」が38.4%だから、10ポイント近くも多い。雇用環境の厳しさが自殺に結びついていると思われる。

 もう一点、見落としてならないのが遺書の有無。遺書を残した人が1万466人であるのに対し、遺書なしが2万1689人と倍以上なのだ。
衝動的に命を絶ってしまっているということか。

 9月10日から9月16日は自殺予防週間。内閣府は自殺対策推進室を設け、事細かにデータを分析し、マニュアルを作成している。しかし、政府レベルの対応では、流れを食い止めることは期待薄。それはこれまでの取り組みをみれば明らかだ。

 残された人々の苦痛は想像を絶するものがある。政治や行政に期待できないのなら、民間で有効な対策を打ち出すしかない。


2007年8月7日号


2007.07.31

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第26号 避雷針も万全ではない 『落雷被害600億円超/年』

 一見遠いようで、実は身近にある危険で忘れがちなのが、落雷による被害である。消防庁によると、落雷による火災は過去3年で705件。
気象庁が調査した落雷による施設破壊などの直接被害額は推計で年間600億円を超すという。

 ゴルフ場でプレーヤーを直撃する雷、「誘導雷」としてIT化が進んだビルの中の機器を壊し、すべてのシステムに損傷を加えるもの、電車の運休など被害の種類は数限りない。気象庁によると、落雷が年間で最も多い6、7月は1日で数万回発生している。

 警察庁の調べでは、05年度、雷で死亡した人は6人。だが、発生件数は最近になって劇的に増えている。01年度から04年度にかけての落雷事故発生件数は64件、84件、35件、99件と2ケタだったが、05年度は、なんと661件と大幅に増えているのだ。

 地球環境の異変が原因で、大気が不安定になり、われわれの常識の範囲内の予測をはるかに超えた数字となったのである。

 対策も心もとない。日本では、建築基準法で、高さ20メートルを超える建物には、避雷針の設置が義務付けられている。大半の都市住民は「避雷針があるから大丈夫」と思っているだろうが、これとて万全ではない。避雷針に落ちた雷がすべて吸収されず、周辺に飛散する「2次落雷」の被害が指摘されているのだ。

 この2次落雷対策や、ビル内のIT機器を破壊する誘導雷対策など、手をつけるべき課題は多い。

 地震、雷、火事、親父・・・・。このうちパワーが衰えたのは親父だけである。雲の核兵器ともいうべき雷の被害をいかに防ぐか。
効果的な対策が望まれる。


2007年7月31日号


2007.07.24

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第25号 社会的損失の拡大を防げ! 『携帯電話リサイクル回収台数662万台』

 2006年度の携帯電話の販売実績は4726万台(ガートナージャパン調べ)。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクをはじめ、通信各社は色、デザイン、機能はもちろんのこと、最近ではシルバー携帯やキッズ携帯まで買い替え需要マーケットの拡大に必死である。

 一方で、携帯電話機のリサイクルの実績は年々低下しているのが実情だ。ちなみに2006年度の回収台数は本体662万台、電池が347万台。00年度の回収台数1360万台と比べ、回収台数が激減している。

 この携帯電話のリサイクルを阻んでいるいちばんの原因は、「電話帳として残しておきたい」、あるいは「思い出のコレクション」などのデータ保存だ。

 第2位の理由は個人情報の漏洩問題である。ネプロジャパン及びネプロアイティの調べによると、リサイクルをしないと答えた人のうち、男性の38%、女性の62%が、携帯からの情報漏洩を意識している。

 メール機能やカメラ機能の充実、さらには動画等々の搭載により、個人情報の蓄積は飛躍的に増加している。当然、これを守ろうとする意識が強くなれば、回収率の低下に拍車がかかるのは歴然だ。

 写真などはSDカードなどの記録媒体に保存して、本体の物は削除すればいい。電話番号、メールアドレスなどの個人データは、買い替え時に新しい携帯にデータを移し、本体内のデータはすべて削除する。
「それでも個人情報の流出がご心配のお客さまには、携帯本体を粉砕するサービスもあります」(大手携帯会社)

 利用客のちょっとした意識改革で、リサイクル率を高めることは可能なのだ。
4700万台中4000万台が机の中にしまい込まれ、天然資源の回収が遅れることの社会的損失を考えるべきだろう。


2007年7月24号


2007.07.10

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第24号 最大のエイズ危機 『HIV感染者・AIDS患者数1358人』

 1358人。この数字は、2006年1年間に報告されたHIV感染者とエイズ患者の合計数である。患者数が406人、HIV感染者数が952人で、ともに過去最高となってしまった。
患者・HIV感染者数は、95年の464人から10年余でなんと3倍に激増している。とくに04年からは患者・感染者数が1000人を超える深刻な状況が続く。マスコミが騒がなくなって久しいが、日本は今、最大のAIDS危機を迎えているのだ。

 急増の原因はさまざまあろうが、「感染防止のカギであるコンドーム着用率に問題がある」(ある専門家)との指摘が出ている。

 見逃せないのは、成人向けサイトやビデオ・DVDにおいて、コンドームを使用する場面がほとんどないことだ。その手の業者がより刺激性を高めるために、より若者を取り込むためにコンドームなしの無防備な状態での映像を垂れ流しにしている。

 エイズ動向委員会の調査によると、感染経路は約87%が性的接触によるもの。そのうちの6割強は同性間での性的な接触である。異性間では若い世代に感染者が多いのが特徴。コンドームなしのセックスに走る若者が多いからではないか。

 そんな現状を改善しようと、コンドーム関係の啓蒙イベントもあちらこちらで開催されている。しかし、コンドームの消費量は年を追うごとに減り続けているのが現状だ。厚生労働省の調査によると95年に約5億9000万個だったコンドームの国内出荷数は、05年には約3億5200万にまで減っている。10年間で4割もの大幅減少だ。

 ニューヨークではこの春から市ブランドのコンドームが登場し、バーやレストラン、医療施設、学校などで無料配布されているという。性病やエイズ予防の対策のひとつだ。

 前出の専門家は、「HIV感染者はある一定の数字になると等差級数的に拡大していく」と警鐘を鳴らす。いま、食い止めないと取り返しのつかないことになる。行政の責任は重大だ。


2007年7月10日号


2007.07.03

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第23号 ブログ大国の虚実 『日本語ブログ37%/7200万件』

 日本は世界でも名だたるブログ大国だ。

 世界中に存在するブログの総数は7200万件を超え(米テクノラティ社調べ)、来年には1億件を超える勢いである。そのうちの37%が日本語(日本人)で占められ、英語のブログの36%を上回り、世界1位となっているのだ。

 ネットの影響で活字離れが指摘されて久しいが、若者たちの間に文字に親しむ現象が起きている。それも絵文字、顔文字などネット社会ならではの独自文化が広がっている。

 コミュニケーションツールとしてのブログは、旧来の媒体を凌駕しつつある。たとえば、普通の感覚であれば、「愛する」という言葉をメールの活字で打つよりは、手書きの手紙で送ったり、日記にしたためたほうが、その思いは遥かに深く伝わるし、残ると思う。が、今はコミュニケーションが軽薄化しているせいか、ブロガーが愛用する「IT活字」が主流だ。

 ブログをめぐっては、さまざまな事件も起きている。掲載した内容に反発する連中が非難、中傷の類のメールを集中的にに送りつけ、機能停止や閉鎖に追い込む「炎上」が後を絶たない。ネット社会特有の歪んだ現象だ。ブログは、個人が事由に表現できる場であるとともに、集中砲火のリスクが付きまとう場でもあるのだ。

 その一方で、個人情報保護法がとやかく言われる時代にあって、自らの情報を写メールや絵日記で公開するという神経には、どうにも納得できないものがあるのも事実だ。政治家やタレント、文化人までもが、自らのプライバシーのヒントになる情報を公開している。そのおぞましさ、下品さを感じるのは私だけだろうか。そこには、ギリギリの情報を露出すれば、反応は一段と大きくなる、人気化するという誤解が存在しているように思える。

 いろんな問題をはらみながらも、ブログ文化が着実に浸透、育っているのは間違いない。それが社会のコミュニケーションをより多様化し、重層化していくことになればすばらしい。そのためには、リスク回避策や最低限のルールづくりが欠かせない。ブロガーの知恵の出しどころだ。


2007年7月3日号


2007.06.26

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第22号 あまりに寂しいフトコロ事情の改善策 『サラリーマンの小遣い4万8800円』

 サラリーマンの小遣いが3年連続で増えた。GEコンシューマー・ファイナンスが全国の男性サラリーマン500人を対象に年1回実施している調査で明らかになったものだ。

 それによると、1ヵ月の小遣いは平均4万8800円。昨年より3300円アップした。とはいえ、バブル期の90年には7万6000円だったから、まだ6割強にしか回復していない。

 年代別ではやはり20代が最も多く5万6100円。逆に最も少ないのが40代の4万2100円だった。その使い道は、「昼食代」が55.6%。1回の昼食にあてる額は590円で昨年より60円減っている。飲み代は1回平均4380円で、こちらは700円減少だ。

 小遣い4万8800円というと、1日あたり1600円強だ。ここから昼食代を差し引けば1000円しか残らない。これでは仕事帰りの一杯もままならない。「働けど働けどなお・・・・・」が大方のサラリーマンの実感ではあるまいか。

 そんな厳しい懐事情を改善するにはどうしたらいいか。ひとつは出費を抑えることだ。ここは金銭感覚にシビアなOLたちの知恵を参考にしたい。筆者のサラリーマン時代の後輩OLは、週に3回は弁当持参だった。彼女は「量が決まっているし、おかずも自分で決められるからヘルシーだし、おカネもかかりません」と言っていた。倹約と健康管理の一石二鳥というわけだ。そして、ランチを外で食べたつもりで、弁当持参の日は500円貯金をしていた。

 上司の活用という手もある。これは飲み代の節約だ。できれば、他部署の上司に飲みに連れていってもらう。これだと直属の上司のグチに付き合わなくても済むし、社内コミュニケーションにもなる。
あとは、図書館の活用。「最近は登録しておくと、新刊などの希望する本を事前に予約しておくことができるんです。それが入るとメールで連絡してくれます」と、別のOLが教えてくれた。

 もうひとつは副収入の確保である。それには、ボーナスを徹底活用するしかない。株でもFXでもいい。30万円程度でいい。しっかり吟味して、うまく回す。
ミニ投資で経済感覚を養うのだ。仲間と副業の起業を考えるのも、ひとつの手。

小遣い不足は自分の才覚でやりくりするしかない。


2007年6月26日号



2007.06.19

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第21号 スキミングの怖さ 『クレジットカード不正使用被害額105億円/年』

 休みを取っていた日曜日の午前中、突然、カード会社から電話が入った。まさかとは思っていたのだが、偽造カードの不正利用による被害にあっていた。本当の話である。

 クレジットカードの不正使用の被害額は、平成18年度には年間105億円超。そのうち半分は偽造カードによるものである。特にスキミングといわれ、キャッシュカードの裏側の磁気テープのデータを読み取る行為が後を絶たない。カード所有者もまったく知らない間に高額な商品を買った事にされてしまう。置引きにあったり引ったくりにあったり、車上狙いと異なり、ごく普通にクレジットカードを利用し、精算時にスキミングされ、カード会社からの請求書を見て青くなるまで気がつかない。

 このスキミングには、CAT(クレジットカード使用時に使われる信用情報紹介端末機)の中にスキマーが仕掛けられているパターンと、店員が店の奥に持ち帰りハンドスキマーを使って顧客情報をスキミングする手口などさまざまである。

 過去に、ゴルフ場でのロッカーに監視カメラを設置し、プレー中にロッカーの中の財布からキャッシュカードをスキミングする手口もあったが、この手口も最近はさらに悪質化している。
あらかじめ仕掛けたスキマーを無線で操作するという、窃盗犯からすれば極めてリスクの少ない犯罪となっているのだ。
かつては海外での被害が多かったものだが、今ではむしろ国内のほうが危険地帯といえる。

 いずれにしてもスキマーをCAT内部に設置するという作業が必要なわけで、ゴルフ場や飲食店、ホテルなど犯人が事前に忍び込む必要がある。カード決済のできるすべての店は、もっともっとセキュリティーを強化しなくてはならない。

 ちなみにクレジットカードには盗難保険がついており、60日から90日間の保険適用期間内に不正使用されたと申し出れば保険が適用される。

 オレオレ詐欺の被害総額と偽造カードによる被害総額が合わせて500億円を超える犯罪大国ニッポン。カードを持つことは、今ではステータスというよりリスクですらある。
カード会社にはスキミング撲滅の対策を一日も早く講じてもらいたい。


2007.06.05

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第19号 この20年で半減 『公衆電話39万台』


 最近、公衆電話を使ったことありますか?

 1900年に国内で初めて公衆電話(当時は自働電話といった)が登場してから約100年が過ぎた。今では、街中でも探すのが大変なくらい見かけなくなった。採算の取れない公衆電話は撤去されていくからだ。

 NTT東日本・西日本によると、NTTが発足した1985年当時に91万台あったが、06年3月末には39万台と半減した。どうりで見かけなくなったわけだ。
減少の理由はハッキリしている。携帯電話の急速な普及に伴う利用数の激減だ。当然、公衆電話事業は大幅な赤字。05年度には144億円に達したという。

 収益性を考えれば、赤字事業を継続するのは困難だ。しかし、公衆電話ならではの役割があるのも事実。災害時の緊急連絡手段がその最たるものだ。
 
 たとえば、新潟中越地震の時も携帯電話がまったく回線使用不可能となり、一般電話も断絶し、緊急連絡を必要とした人々が集まったのは公衆電話だった。公衆電話は地震などの非常時に、一般電話や携帯電話が規制されても、つながりやすい「優先電話」の側面を持っている。そのため地震の時の避難経路などを記した防災マップに、公衆電話の場所が記されていることも多いし、いざというときに電池が切れたりもしない。
また交通事故や犯罪などの緊急時の通報にも役に立つ。

 普段は携帯を家に置き忘れたときぐらいしか、思い出さない公衆電話だが、その存在価値は大きい。道路や水道、ガス、公園、トイレと同様に、なくてはならない社会的インフラなのである。

 どうしたら公衆電話の減少に歯止めをかけられるか。それには災害時、緊急時以外の利用メリットを打ち出すことが欠かせない。
低料金だけでは勝負にならない。たとえば、大型のディスプレーを装着して、番号をプッシュするだけで必要な情報をプリントアウトできるようにするとか、携帯よりも便利な新サービスは考えられないのか。知恵の出しどころである。


2007年6月5日号


2007.06.05

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第19号 この20年で半減 『公衆電話39万台』

 最近、公衆電話を使ったことありますか?

 1900年に国内で初めて公衆電話(当時は自働電話といった)が登場してから約100年が過ぎた。今では、街中でも探すのが大変なくらい見かけなくなった。採算の取れない公衆電話は撤去されていくからだ。

 NTT東日本・西日本によると、NTTが発足した1985年当時に91万台あったが、06年3月末には39万台と半減した。どうりで見かけなくなったわけだ。
減少の理由はハッキリしている。携帯電話の急速な普及に伴う利用数の激減だ。当然、公衆電話事業は大幅な赤字。05年度には144億円に達したという。

 収益性を考えれば、赤字事業を継続するのは困難だ。しかし、公衆電話ならではの役割があるのも事実。災害時の緊急連絡手段がその最たるものだ。
 
 たとえば、新潟中越地震の時も携帯電話がまったく回線使用不可能となり、一般電話も断絶し、緊急連絡を必要とした人々が集まったのは公衆電話だった。公衆電話は地震などの非常時に、一般電話や携帯電話が規制されても、つながりやすい「優先電話」の側面を持っている。そのため地震の時の避難経路などを記した防災マップに、公衆電話の場所が記されていることも多いし、いざというときに電池が切れたりもしない。
また交通事故や犯罪などの緊急時の通報にも役に立つ。

 普段は携帯を家に置き忘れたときぐらいしか、思い出さない公衆電話だが、その存在価値は大きい。道路や水道、ガス、公園、トイレと同様に、なくてはならない社会的インフラなのである。

 どうしたら公衆電話の減少に歯止めをかけられるか。それには災害時、緊急時以外の利用メリットを打ち出すことが欠かせない。
低料金だけでは勝負にならない。たとえば、大型のディスプレーを装着して、番号をプッシュするだけで必要な情報をプリントアウトできるようにするとか、携帯よりも便利な新サービスは考えられないのか。知恵の出しどころである。


2007年6月5日号


2007.05.29

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第18号 紙消費大国 『日本の紙・板紙消費量1人当たり246.8キロ/年』

 日本は驚くべき紙浪費国だ。

 本来IT社会が進化すると、ファクシミリやコピーによる紙の使用量が減少し、地球環境の保護に役立っているはずである。ところが、日本における紙と段ボールなどの板紙の年間消費量は、なんと一人当たり246.8キロ。世界6位だ。4人家族でいえば1000キロ消費という計算になる。雑誌1冊の平均重量を800グラムと仮定すると、年間1250冊もの雑誌を消費していることになるのだ。

 駅、レストランなどに設置して無料で配布される雑誌から、週末の新聞に大量に挟み込まれる折り込みチラシ、IT機器等についてくる膨大な量の説明書。無駄が多すぎる。ちなみに国家レベルでは、年間でパルプを1000万トン以上、紙を3000万トン以上生産し、ほぼ九州と同じ面積の森林を燃やしているという説もある。

 その一方で、日本の古紙(再生紙)の輸出量は急増しており、中国を中心としたアジア諸国向けの輸出量は、1999年の28万トンから2006年には3700万トンと、140倍以上の数字となっている。古紙再生技術では先進国なのである。

 だったら、再生紙の国内需要を一段と増やすべきだ。名刺からトイレットペーパーにいたるまで、再生紙利用が広がっているのは事実だが、完全に徹底できているとは言いがたい。
どうしても必要な場合を除き、紙は再生紙にする。消費者もこの意識を持つ。そうすれば、貴重な森林資源の消失を防ぐことができるし、無駄な生産、消費を抑えることにもつながる。

 オイルショックの時に主婦が顔色を変えて走り回ったトイレットペーパーのパニックを思い出して欲しい。あれから三十数年。現在も原油価格の高騰は避けられないし、将来予測もつかない為替の不安定な現状を考えると、この紙浪費大国の警戒感の薄さに警告を発せざるを得ない。


2007年5月29日号


2007.05.22

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第17号 2つの格差 『平均最低賃金673円/時給』

 賃金は、その国の経済力や文化度、今後の発展を見る上での大きな基準である。現在、政府では、最低賃金法の改正を進めているが、正社員・パート・アルバイト・臨時などの雇用形態や名称にかかわらず、最低賃金の問題は大きな矛盾をはらんでいるように思える。

 特定の産業ごとに設定される産業別最低賃金、地域の実情を考慮し決定する地域別最低賃金の2種類の最低賃金が存在するが、2つの大きな問題を抱える。
 
 ひとつは国内格差だ。最低賃金の全国平均は時給673円。1日8時間労働したとしても、日給約5400円。一ヵ月あたり22日間労働の平均で11万8800円、年収にして142万円にしかならない。
地域別最低賃金の最高額は東京都の719円。これに対し、最低水準の青森、岩手、秋田、沖縄の4県は610円と、109円の開きがある。東京都と沖縄の一ヵ月の賃金格差は1万9000円となり、1日1000円近い賃金格差が存在する。

 2番目の問題は国際格差。世界を例にとっても、先日大統領選挙が行われたフランスがトップで8.27ユーロ(約1347円)、イギリスが5.35ポンド(約1276円)と、日本は先進国で最低水準にある。

 こんな低水準では、労働意欲はそがれてしまう。もし、働く意欲を失った人々が、生活保護をうけることになったとすると、いったいどうなるのか。生活扶助を加えた生活保護費は約14万円。つまり最低賃金を1万4000円以上も生活保護費が上回ることになる。

 フリーター、ニートを合わせると500万人以上になるという。ただでさえ厳しい雇用環境にある彼らが、あまりの低賃金に労働意欲を失えば、社会的損失が大きくなり、社会コストは増大する。政府だけでなく民間企業もこの最低賃金の改善に積極的に取り組むべきだ。


2007年5月22日号



2007.05.15

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第16号 監視社会の到来 『防犯市場1兆5千億円』

 日本は「美しい国」どころか醜すぎるほどの犯罪大国となってきている。この犯罪大国にあって、防犯設備機器(防犯カメラや監視システム)等の関連市場が飛躍的に拡大している。2000年度に大台の1兆円を突破した市場は、現在1兆5000億円規模ともいわれている(日本防犯設備調べ)。

 その中で、一段と増加傾向を示しているのが防犯カメラだ。新宿・歌舞伎町では02年2月に50台の防犯カメラを利用したシステムの運用を開始。同地区の刑法犯罪認知件数は03年の2249件から、06年には1635件と抑制効果を上げている。最近では、子供を狙った悪質な犯罪が多発していることから、通学路に防犯カメラを設置するという例も珍しくない。

 防犯システムの大半は不審者の進入防止や検知、通話機能など、直接的にではなく間接的に効果をもたらす製品で占められている。
たとえば防犯カメラは監視員が24時間見張っていない限り犯罪抑止効果は望めないが、一方で犯人の特定という役割を担っている。実際、防犯カメラに記録された犯人の姿が特定されたことによって犯人逮捕に至ったケースも多々ある。
04年3月にスペインのマドリードで起きた列車爆破テロ事件も、スペイン駅構内の監視カメラから犯人が特定された。

 日本の公共機関でも導入に拍車がかかる。7月から東海道・山陽新幹線に投入される「N700系」には、安全対策強化のためすべての乗降口に防犯カメラが設置されている。

 防犯カメラ設置にはプライバシーの侵害などを理由に反対する人も少なくない。しかし、いまの日本社会は、特急電車の中の暴行、レイプを誰一人注意することもできない。もはや、防犯機器に頼らざるを得ない状況になってしまったのだろうか。

 凶悪犯罪の増加と、市民の無関心がもたらす先は監視社会の到来・・・・・。
考えただけでもゾッとする。


2007年5月15日号


2007.05.08

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第15号 個人授業の落とし穴と対策 『外国語教室受講者数956万人(06年)』

 イギリス人女性英語講師の痛ましい殺人事件は、いまだに解決に至っていない。この事件で一躍クローズアップされたのが外国人講師による個人レッスンだ。本物の外国語会話が見に付くからと、受講生の人気は高い。そこに落とし穴があったわけだ。

 さて、経済産業省の特定サービス動態統計によると、外国語会話教室に通う受講者の数(06年)は、なんと956万人(延べ人数)。
ちなみに売上高の合計は1364億円に達する。1人当たり数万円の授業料を払っていることになる。全講師のうち、外国人は6割以上を占めている。

 先日の女性講師が所属していたNOVAの場合、日本全国で約900校を持ち、講師を含む外国人の在籍者数は約7000人。講師の給料は大卒の場合で、月28万円程度。そこからNOVAが所有する講師用の寮代等々を差し引かれるので、決して高収入ではない。

 NOVAの講師に限った話しではないが、収入を補うために個人レッスンに走るケースは少なくないとみられている。受講生のニーズも高い。その一方で講師と受講生という関係を超えて、男女関係に発展してもおかしくない。

 グローバル化がますます進む中、英語はもちろんのこと、中国語や韓国語、ひいてはベトナム語などの習得が必要となる。外国語会話の習得を目的とした数々のビジネスモデルがこれからも展開されるであろう。
その裏側で、今回の事件のような国際問題に発展する事態も起こりうる。加害者と被害者が逆転するケースもあるだろう。

 それを前提とした対策をどう講じていくのか。教室外での個人レッスンの禁止など、種々の制度を見直して、受講生および講師の保護を行うといった対策が急務なのは言うまでもない。語学学校の認可、経営チェックなど行政レベルでの改善策も必要だろう。

 ただ、問題の本質は別にあるのではないか。やはり学校の語学教育の貧弱さだ。中高の英語教育で、日常会話ぐらいは見に付く教育システムの確立がもっとも必要だと思えてならない。


2007年5月8日号



2007.04.24

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第14号 女性スモーカー増加のワケ 『全国の喫煙者数2733万人』

 飛行機の中はもちろん、ホテル、レストラン、場合によってはマンションにおいて、スモーキングエリアが少なくなってきている。というよりも圧倒的に禁煙である。

 JTの2006年全体たばこ喫煙者率調査によると、喫煙者は男性が41.3%(2066万人)、女性が12.4%(667万人)、全体が26.3%(2733万人)。成人男女の4人に1人がスモーカーである。
1日に吸うたばこの本数が最も多いのが50代で、男性が25本。最も喫煙者率が高いのが30代(57.3%)である。

 たばこの総販売本数のピークは、1996年で3483億本。日本人1人あたり1日8本吸っていたことになる。そしてこのピークを堺に総販売本数も1人あたり消費本数も減少傾向に向かう。特に50代の喫煙率は前年比約7%の減少だ。

 昔は、未成年であるにもかかわらず親の目を盗んで、喫茶店にたむろしてたばこを吸ったものだが、その動機は、早く大人になりたいという憧れであったり、社会に対する反発だったような気がしてならない。

 最近は、どうも様子が違うみたいだ。たばこの銘柄数も増え、さらに嗜好にうるさい女性をターゲットにしたたばこが増えた。パッケージやデザインもおしゃれになった。こうしてたばこの選択肢が増える中、たばこをおいしく吸う純粋な嗜好者が増え、なんとなくスモーカー派が、禁煙ブームで激減したということではなかろうか。

 不思議なのは、50歳以上の女性の喫煙率が増加していることだ。さらに、全体をみても男性の喫煙率は年々減少しているにもかかわらず、女性の喫煙率が逆に年々増加の一途をたどっている。たばこという嗜好品がもし、ストレス解消の道具だとするならば、社会進出をした女性や、熟年女性のストレス度が日に日に高まっているということか。


2007年4月24日号


2007.04.17

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第13号 クルマ離れ深刻 『新車販売358万台』

 クルマ離れが深刻だ。日本自動車販売協会連合会が発表した06年度の国内新車販売台数(軽自動車を除く)は、前年度より8%強減って約358万台となり、4年連続で前年度比マイナスとなった。ピーク時の90年度に比べ231万台もの減少だ。

 中古車も売れない。
06年度の登録台数は17年ぶりに500万台を割り込んだ。頼みの軽自動車も07年度は2%以上の減少になるとみられている。

 実は、都内に住む私の友人もこの春、長年乗ってきたジープ・チェロキーを手放した。
「子供もいないし、ホント乗らなくなった。維持費、ガソリン代を考えると年間50万円以上かかる。もったいないから売っちゃいましたよ」

 彼の言葉の中に、クルマ離れの一因がある。コスト高である。
税金、保険、ガソリン代、駐車場代、高速代。都会生活では、クルマを持つことは、家計のリスク要因になっているのだ。

 もちろん、それだけではない。渋滞、飲酒運転取り締まり強化、駐車違反取り締まり強化など、クルマを取り巻く環境の変化も見逃せない。

 だが、最大の要因はなんといっても、魅力がなくなったことではないか。メーカーがどれだけ新車を投入しても、その販売効果は長続きしない。SUVがはやれば、各メーカーこぞって同じようなラインアップをそろえてくるから、とんがったクルマが出てこない。
慣れ親しんできたクルマが生産中止になって、知らない車名が氾濫しているメーカーもある。これでは販売店に足を運ぶ気にもならない。

 一方で、「若者たちを中心に関心がケータイやパソコン、AV機器などに移ってしまい、高額商品のクルマが見向きされなくなってきている」(知人のコンサルタント)という分析もある。
「週末はカノジョとドライブ」という時代ではなくなってきているのだ。

 ユーザーの関心を引き付ける魅力あるクルマづくり、画期的なカーライフの提案、これらをメーカーが行わなければ、クルマ離れは止まらない。
その結果、輸出、現地生産依存に拍車がかかり、国内生産、雇用に暗雲が立ち込めることになる。


2007年4月17日号


2007.04.10

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第12号 “ハデ婚”復活の兆し 『結婚式費用397万円』

 最近のカップルが、新婚旅行までも含めた結婚式にかける平均費用は、397万円(06年)と、再び増加傾向にある。
これは結婚情報誌ゼクシィの調査結果だが、前年よりも15万円アップした。

 景気回復ムードの中で、ひところはやったジミ婚は敬遠されているのだろうか。しかし、格差拡大で先行き不透明の時代の中にあって、若いカップルにとって400万円は極めて重いコスト負担である。

 数字をよく見ると、結婚式に際して親や親族からお金を借りた人が全体の75%を占め、平均援助額は約180万円である。としても200万円以上が、若いカップルの負担になる計算だ。もちろん、お祝い金で相当額は回収できるだろうが。

 気になる結婚費用の内訳を見てみると、増加の原因がハッキリ浮かび上がってくる。結納や会場費、婚約指輪代などは前年とあまり変わっていないのに、挙式、披露宴・パーティーの総額が跳ね上がっているのだ。招待客数は約75人で一緒だから、1人当たりの披露宴・パーティ費用が4万円から4万6000円にアップ。ハデ婚が復活し始めたかのようだ。

 本人たちの意向で華やかさを求める傾向が強まっているのか、親族の顔を立て、会社の上司の顔を立て、しかたなしに高額な結婚式に望んでいるカップルが多いのか。
定かではないが、本当に必要なコストなのか、疑問に思えてしかたがない。

 だいたい、いまや年間の離婚件数は26万組にも達する。結婚して5年未満で別れる人の数が4割近くになることを考えると、結婚式の高騰化を喜んでいるのは結婚産業だけではないか。

 友人のJTBメディアクリエーションの平尾政彦社長が「モバイルバード」という、パソコンや携帯から挙式や披露宴に参加するという商品を扱っている。遠方からはるばる出席するコストがかからないし、老人や体の不自由な人にとっても、実に合理的な商品である。こんなスタイルがあってもいい。

 手弁当で友人とパーティー形式の披露宴を行い、余ったお金をお世話になった母校や社会福祉施設に寄付するぐらいのカップルはいないものだろうか。


2007年4月10日号


2007.04.03

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第11号 就職する前に起業のススメ 『1円起業1613件』

 サラリーマンで上司に羽交い絞めにあい、部下に陰口をたたかれるよりは、ひとり気ままに好きな仕事をして食べていきたい。組織に所属する者の永遠の夢である。

 資本金1円で会社を設立できる特例ができてから、この1円起業は続々と増えた。この特例は廃止されたが、新「会社法」の成立により、1円起業は恒久化された。

 最低資本金等の規制に関する特例が施行されてから3年で設立された企業は3万6000社弱。うち1円会社は1613社。企業のリストラで現実に目覚め起業した中高年から趣味と実益を兼ねようとした主婦、ネット系で気楽にとグループで会社組織をつくった学生、既に一定の技研や研究成果を持ち合わせた大学の研究者など、その中身はまちまちである。

 私は以前会社勤めをしていた時から、後ろめたい気持ちもなく、別に会社を持っていた。なぜならば、会社の事業やビジネスモデルに属さない能力を生かす場面が多々あったからだ。

 知り合いのケースを紹介しよう。週末に高級花を育てるある企業の役員の蘭は、1本十数万円になるという。
iモードを開発し、ウーマンオブザイヤーを受賞した松永真里も、プロジェクトを離れた後に本を出版し、その印税や講演収入が、そこそこ生活の糧になったと聞いている。

 大学生諸君は就職をする際に、既に会社を起業しておいて、就職した会社と業務委託契約あるいは顧問契約という形をとった方が賢明なのではなかろうか。社員じゃなくても結構ですから、うちの会社と顧問契約を結んでください、と。

 会社の社長である以上、社会的責任はもちろんのこと、2年、3年、ひいては将来のことも考えた自己啓発や能力開発を余儀なくされる。
会社側にとっても新入社員の給料がたとえば25万円で年収300万円としたら、300万円の顧問契約を結べばいい。保険負担はなくなるし、失業保険もなくなる。
結果的に、日本全体のビジネスパワーを底上げすることになるはずだ。


2007年4月3日号


2007.03.27

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第10号 最近の口実はセクハラや横領 『振り込め詐欺被害総額249億円/年』

 1月からATMで10万円以上の現金振り込みができなくなり、窓口においても本人確認書類の提示が義務づけられるようになった。
これはマネーロンダリング対策だが、一向になくならない振り込め詐欺事件対策でもある。
 
 警察庁の調べによると2006年(1〜12月)の被害総額は249億7800万円。04年284億円、05年252億円に比べ、わずかながら減少傾向になっている。

 とりわけ、今年1月の認知件数は906件で、昨年同期の1416件に比べて37%減。
被害金額も17億円が10億円にまで減った。「ATMの振込額が制限された結果」(社会部記者)とみられている。

 そうはいっても、まだまだ多くの人が泣かされている事実は変わらない。振り込め詐欺といってもその種類は、電話を使った詐欺から架空請求書などの手の込んだもの、さらに無防備な状態で放置されているインターネットを使ったものなどさまざまあるが、何といっても、いわゆるオレオレ詐欺による被害者が圧倒的に多い。

 被害者層をみると、50歳以上の女性がほとんどの割合を占める。
以前は交通事故や病気などを理由に、急いで振り込ませた手口が多かったが、最近はセクハラや不正な使い込みなど会社内でのトラブルを口実にしたものが激増している。

 私の友人も先日、この事件に巻き込まれそうになったのだが、幸いにも母親から確認の電話が入ったため、被害に遭わずに済んだ。

 これだけ騒がれているにもかかわらず、振り込め詐欺事件がなくならないのはなぜか。手口が巧妙化しているだけではない。すぐに相手を信じ込んでしまう、性善説にも誓い日本人の人の良さと、過保護としか思えない親子関係が背景にある。

 この4月、新入社員が多く入ってくる。その親の年代は50代が圧倒的に多い。こうしたトラブルに巻き込まれないよう、たまには子供の私生活をチェックするのも手だてではあるまいか。


2007年3月27日号


2007.03.20

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第9号 ゴルフ場を公共施設に 『ゴルフ場倒産件数54件/年』

 2000年前半に負債1000億を超える超大型倒産が相次いだゴルフ場だが、2006年の倒産件数は54件(帝国データバンク調べ)。1件あたりの負債総額も117億円と、どうやら津波のような倒産の時期が過ぎたようである。

 最近、景気の回復とともに不動産価格も上昇し、06年からゴルフ場の会員権相場が少しではあるが持ち直した。特に大都市近郊など立地条件の良いゴルフ場においては、会員権が急騰。土日の予約が取りにくいコースも出てきている。宮里藍、横峯さくらを筆頭に、女子プロのスターが登場し、いったん消えかけていたゴルフブームに再び灯がともった格好だ。

 とはいえ、ゴルフ場の売り上げには限りがある。1日50組、200人のプレーヤーを入れたとしても、1日当たりの売り上げはせいぜい300万円程度。このあり得ない数字を1年実現したところで10億円にしかならない。
06年のゴルフ場経営者の負債総額は6355億円にも上る。

 ちなみにわが国では、現在でも2000を超えるゴルフ場が運営されている。単純平均で、1都道府県あたり40コース。多少の人気回復だけでは、これだけのゴルフ場が生き残れるとは到底思えない。

 だったら、発想を根本的に変えたらどうか。筆者の持論だが、土地の高い島国日本にあって、広大な土地を占有するゴルフ場は本来なら公共施設として設置すべきである。
あるいは、巨額の利益を得た企業が社会還元策のひとつとして、スポーツ施設という名目のゴルフ場を設置、低料金で運営するというのが理想形である。

 高齢化社会に突入したいま、アメリカ並みの安いプレーフィ(2000円ぐらい)で高齢者を受け入れる。あるいは、ふだん自然と接触する機会の少なくなった子供たちに500円、600円でゴルフ場を開放する。
その上で、税制面でもゴフル場法人税の減税化等を図っていくといった発想ができないものか。


2007年3月20月号


2007.03.13

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第8号 学力低下の深刻 『日本の学習到達度数学6位 読解力14位』

 ここ数年、子供たちの学力低下が深刻化している。それが顕著にあらわれたのが、経済協力開発機構(OECD)が2003年に実施した、学習到達度調査の結果である。
41カ国の計27万6000人の15歳を対象にしたものだ。

 2000年調査では、8位だった読解力の順位が、平均以下の14位に低下。数学(応用力)は前回の1位から6位に転落した。この現状に文部科学省も「日本の学力は今や世界のトップレベルとはいえない」と発表している。

 ちなみに数学は香港のトップに続いて、2位フィンランド、3位韓国となり、読解力は1位がフィンランドで以下、韓国、カナダ、オーストラリアと続いている。

 この調査をみる限りにおいては、フィンランドと韓国は世界的にトップレベルの学力を持った学生を育てているといえる。読解力は文章や図表を理解して利用し、考える能力のテストのようだが、このテストに必要なのは、創造力と分析力であり、いかに現在の丸暗記授業が無意味かということを象徴することにもなる。

 同時に行ったアンケートで、数学の授業が楽しみか、内容に興味があるか、という質問項目のすべてにおいて、日本の生徒は平均以下の回答となっている。学問が日常的にどう必要となるかという視点の欠落した詰め込み授業の結果といえるのではないか。

 また、学校の授業以外の勉強時間もOECDの平均が週8.9時間であるのに対し、6.5時間と30%もダウンしている。
これらの結果から想像できるのは偏差値を重視した詰め込み型の授業が、生徒の学習意欲を低下させるだけでなく、自発性を奪い、さらに社会人になってからも知識の応用の利かない人材を輩出してしまうという現状にほかならない。

 今日の「美しい日本づくり」に必要な学習とは将来を予測したり、危険を察知したり、人の痛みを理解する、そんな感性を持った子供たちの育成ではなかろうか。


2007年3月13日号


2007.03.06

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第7号 ながら運転の危険性 『自転車死亡事故年間814人』

 安全だと思われている自転車の死亡事故が急増している。
全国の自転車による交通事故の発生件数は、昨年1年間で17万4262件と、10年間で1.25倍に。さらに、814人の死亡者が出ている。
負傷者は17万4641人(警察庁調べ)。
 
 日本の現在の自転車保有台数は、(財)自転車産業振興協会の調べによると8664万7000台である。つまり、一家に2台自転車があるという自転車大国でもある。

 最近の自転車による交通事故の増加には、どうも最近流行のパーソナルメディアが絡んでいると思えてならない。

 携帯電話や携帯音楽プレーヤーを聴きながら全速力で学校に向かう高校生、携帯電話をかけながら自転車で買い物に行く主婦、2人乗りでメールをうちながら走る中学生。
 こうした『・・・・・・・ながらメディア』の登場により、頭の中はいわゆる非現在な世界となり、赤信号が見えないだけでなく、車や歩行者に対する注意力が散漫になっているのは間違いない。
ましてやボリュームを最大限に上げて走るのだから「危ない」という声や、ダンプカーの大きなクラクションすらも聞こえないであろう。
 
 自転車はヘルメットもつけない生身の体で運転するだけに、事故で転倒した際に頭を強く打って死に至るケースが多い。
ニューヨークでは、ヘッドホン着用の自転車運転者にたいして、罰金1万円をとるという法令の施行が検討されつつある。

 関係業界の利権もさまざまに絡んでくると思われるが、警察庁は自転車運転時のパーソナルメディア利用を禁止する条例を定めるべきだろう。


2007年3月6日号


2007.02.27

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第6号 犯罪対策の新兵器 『ケータイ110番554万件』

 21世紀のIT社会、国際化社会を象徴するような新種の犯罪の増加傾向と比例するかのように、携帯電話での110番通報が激増している。警察庁によると、1997年に187万件だった携帯電話からの110番通報が、2005年には554万件と8年間で3倍に増加。昨年は600万件に近い数字になっているとみられる。

 その中で、措置が必要となった有効な通報は全体の75%。イタズラや間違いなどの非有効通報は25%。
さまざまな問題はあるが、携帯電話の通報が社会的に有力な「警報インフラ」となっていることは間違いない。

 交通事故の死者数が6352人(06年=警察庁交通局)と激減したのも、この携帯電話の通報によって、事故現場に早く救急車が駆けつけることができたからではあるまいか。

 その意味では、今後も防犯や事件解決のための有効利用が欠かせない。イジメ、振り込め詐欺、恐喝といった犯罪を減らすための携帯電話通報システムをどう構築するか。

 たとえば、「近所の子供が虐待されています」という情報が入った時に、いちばん問題なのは、通報後の当局の対応スピードだ。昨年は警官が現場に到着するまでに平均7分10秒かかった。97年の5分45秒に比べ1分半近く遅くなっている。この改善が緊急課題だ。

 そこでヒントになるのがニューヨークで話題になっている新システム。
NY市は、911番(日本の110番)のコールセンターが、携帯電話で撮影した映像を受信するシステムの導入を発表した。街角で犯罪を目撃したり危険な状況に遭遇した市民が、携帯電話で映像を送るという世界で始めての試みである。

 日本でも第3世代携帯を対象に通報場所を通信司令室に自動表示するシステムの導入が決まった。携帯110番システムのさらなる改善、有効利用が望まれる。


2007年2月27号


2007.02.20

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第5号 近視国家の到来 『中学生視力1.0未満5割超』

 子供たちの裸眼視力が年を追うごとに低下している。

 文部科学省の「学校保健統計調査速報」(平成18年度)によると、子供たちの裸眼視力の低下が著しい。特に幼稚園、小学校、中学校、肉体的に成長期を迎える4歳から15歳までの子供たちだ。

 平成8年度、裸眼視力が1.0未満の幼稚園児は21.4%だった。それが10年後の平成18年度には24.0%に増加している。小学生は25.8%が27.2%。中学生の場合は49.8%が50.1%。
近視の生徒が中学生全体の5割を超えてしまったのだ。

 高校生に至っては58.7%が裸眼視力1・0未満。
このままでは、メガネっ子ばかりの近視国家になってしまう。

 この問題についてはいろいろと要因があると思うが、テレビあるいはパソコン、携帯電話などの「発光体メディア」に対する学校と親、社会の無防備な姿勢が最大の原因ではなかろうか。
どのチャンネルを回しても同じようなタレントが登場し、瞬間的な笑いを取るだけのバラエティー番組があふれかえっている。
それを無批判に受け入れてしまう子供たち。いや、親も一緒か。

 一家に1台だったパソコンがパーソナルメディアと化し、子供部屋に1台ずつ置かれ、親の目を盗んでゲームや猥褻なインターネットに時間を割く子供たちも増えている。
電車の中ではケータイのメールチェックと携帯ゲーム機に夢中になる。

 こんな状況が毎日繰り返されているのだから、視力が低下するのは当然だ。子供たちの視力低下は、社会的な警鐘として受け止めなければならない。パソコンをはじめとしたITメディアの副作用に対する無関心を放置していたら、子供たちはますます危険な状況に追い込まれていく。


2007年2月20号


2007.02.06

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第4号 「癒やし」ペットブーム 『犬・猫2500万匹』

 懐かしの映画「名犬ラッシー」のリメーク、ペット住居OKのマンション、ペット連れ込み可のカフェレストラン・・・・・・。
空前のペットブームが続いている。一時期人気だったゴールデンレトリバーなどの大型犬だけでなく、最近映画ではやった豚まで、日本は世界有数のペット大国である。

 ペットフード工業会による犬猫飼育調査(2006年度)によると、家庭におけるペットの飼育率は、犬が19.2%、猫が14.7%。飼育頭数は犬が約1209万頭、猫が約1246万頭。2種類合わせると何と2500万頭近く。その8割以上が室内で飼われている。

 ペット関連市場の07年売り上げ予測は3842億円(富士経済調べ)で、このうちペットフードの売り上げは3000億円市場に届こうとしている。この数字は、急拡大しているインターネットの広告収入の規模を上回るものだ。

 このペットブームの背景に何があるのか。
ドッグ・アイテムのブランドショップ、株式会社デザインエフを経営している大谷香奈子氏に話を聞いたら、格差社会の影響で「寂しい日本人が増えているのよ。好きだから飼うっていう時代じゃないのよね。」と不思議がっていた。
実際、飼い主の飼育意向理由の調査の結果は、犬の場合「癒されそうだから」との答えは約6割に達している。猫好きの飼育理由も同様だ。

 現代は依存症の時代である。携帯電話に依存し、パソコンの情報に翻弄され、格差社会で過酷な競争を余儀なくされ、会社で学校でコミュニティーでいじめられ、疲れ切った体で帰宅して犬や猫の頭を撫でる。こうした日常の中で、私たちはどこで自分を取り戻すことができるのであろうか。
犬や猫を抱きかかえる事だけでは解決しないと思うのだが。


2007年2月6日号


2007.01.30

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第3号 2020年には20万店に! 『中国コンビニ10,500店』

 中国で「便利店」が急増中・・・・。コンビニのことである。1996年に私がお手伝いしたローソンの上海1号店オープン以来、成長を続ける「便利店」マーケット。今では中国全土で1万500店(2005年末)に達した(ちなみに日本は約4万店)。
ローソンの新浪剛史社長は、「2020年には20万店舗に達し、中国は世界最大のコンビニ王国になる」と予測している。

 面白いのは、客の利用意識が日中で大きく異なっていることだ。「サーチナ総合研究所」と「マイボイスコム」が行った調査によると、利用する理由でもっとも多かったのは「近くにある」(約8割)で、これは日中ともに一緒。だが、中国では「店内が清潔・衛生的」27%、「商品の安全性や品質が良い」23%といった回答が目に付く。
日本ではわずか数%しかない。この差は、中国の店舗事情や、商品に対する安全性や信頼性の低さを如実に物語っている。

 さらに購入品目でも大きな差がある。飲み物やお菓子はともに人気だが、中国では生活用品が41%と、日本の3%を圧倒している。
歯ブラシやティッシュ、トイレットペーパーなどを、会社帰り(夜6時から9時の利用が48%)に買っている光景が目に浮んでくる。

 上海・浦東地区のオフィスビルに入っているローソンでは、ランチタイムともなると外資系企業に勤務するOLらが、弁当を手にレジ前に列をなしている。揚げパンなど中国人好みの商品をそろえて独自性を打ち出す地元資本のコンビニも登場。上海や北京など大都市では、すっかりライフスタイルの一部として溶け込んできた。今では熾烈な競争も繰り広げられている。

 とはいえ、12億の人口を抱える中国は広い。外国小売業の進出に関する規則の緩和など、コンビニが増える環境も整ってきた。沿海部だけでなく、中国全土で「便利店」の看板が見られるようになる日は遠くない。


2007年1月30日号


2007.01.23

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第2号 邦画躍進の支え役 『映画公開本数800本』

 約800本。2006年の映画の公開本数(見通し)だ。

 薄型テレビの大型化が進み、自宅でDVDで映画を楽しむ人が増えている。このブームは一見、映画産業にとってマイナスにみえるが、実は公開本数は03年の622本から、04年=649本、05年=731本と毎年増加しているのだ。
こうした中、06年は邦画の興行収入が21年ぶりに洋画を上回ることが確実視されている。

 公開本数が増加した理由のひとつに、女性監督の台頭が挙げられよう。
「ゆれる」の西川美和、「かもめ食堂」荻上直子など才能あふれる若手監督のスマッシュヒットも記憶に新しい。

 もうひとつの理由は、ファンドをはじめとした資金面での仕組みが出来始めたことである。それぞれのファンドは、○○製作委員会という名前で映画の予算を確保。膨大な予算が必要な映画という産業の下支えができているのだ。

 そして、このファンドが資金回収の目玉としてとらえているのが、セルビデオやDVDの販売による第2次販売収入である。コンビニや、TSUTAYAなど販売供給先が多様化してきたことで、第2次販売収入が確保されつつある。

 以前であれば、公開後1年から2年で民間のテレビ会社に放映権を売ってオンエアされるのが普通であったが、最近は公開されてから2、3ヶ月でDVD化され、店頭に並べられる商品も少なくない。話題性のあるうちに商品化されることで、客が飛びつくというわけだ。
このトレンドでいうと、公開日にDVDで販売する、あるいは公開よりも先にDVDが販売される、といった日も遠くないように思われる。

 ちなみに国内の映画館の数は約2900(05年)。入場者数は約1億6000万人(同)で、前年の94%にとどまった。邦画の健闘で06年はどうなるか。

 最近の傾向からハッキリしてきたのは、家庭でのDVD鑑賞が映画産業を下支えしているということ。なんとも皮肉な現象ではないか。


2007年1月23日号


2007.01.16

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第1号 親指文化の悲劇 『携帯メール1日120通』

 ハリウッドスターや人気女優らが登場し、ファッション性、機能性をアピールする携帯電話のCM、広告があふれかえっている。若者達はこぞって新機種に飛びつく。いったい、どんな使い方をしているのか。

 興味深いデータを紹介しよう。女子高生、女子大生の多くが、メール料金の格安プランを使って、5,6人の友達相手に1日120通ものメールを発信しているというのだ(着メロ配信会社調べ)。
朝、昼はもちろんのこと、授業中もあたり前。読者の皆さんが接待をしたり、残業にいそしんでいる夜の10時から12時にかけてがピークだ。
全体の8割近くが、この時間帯にコミュニケーションをとっているのだ。

 ウチは息子だから大丈夫。いやいや、そんなことはない。メールの頻度は1日10通程度と落ちるが、通話回数は女子大生と同程度だという。

 友人の杉並区立和田中学校、藤原和博校長にこの話をしたら、
「今の現象は“親指文化の悲劇”ですよ」
と指摘していた。現実社会と向き合うことをせずに親指でひたすらキーを叩き、携帯電話を通じて仲のいい友達とのみコミュニケーションを築く。
電車の中で、一心不乱にキーを叩いている姿は不気味ですらある。

 カノジョたちにとっては、なくてはならないツールなのだろうが、イジメや受験勉強の悩みの解決ツールにはならない。
逆に陰湿なメールでのイジメを深刻化させてしまいかねない。

 携帯依存から離れ、目の前の両親や社会に向き合うようになれば、イジメをはじめとする諸問題がもっと目に見えやすい形で現れてくるはずだ。
みなさんの娘や息子の親指の裏側に隠れたその文化が、実は若者のコミュニケーションを完全に社会から隠蔽する道具になっているのだ。

 番号ポータビリティー制実施で、どこが勝った、負けたなんて取るに足らない話。利便性と娯楽性を追及した携帯文化の裏側に、若者をむしばむ深刻な問題が潜んでいることを忘れてはならない。


2007年1月16日号