COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.08.18

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第72号 48年間で5分の1に減少してしまった  『日本の農業就業人口299万人』

 江戸時代には士農工商と、武士に次ぐ身分を保障されていた農民。それが、いつしか農業就業人口は299万人(農林水産省)と、ピーク時の1454万人(1960年)から48年の間に、およそ5分の1に減少した。

 全就業人口6451万人(総務省統計局)の4.6%にしか過ぎない。
しかも、農業就業人口に占める65歳以上の高齢者の割合が60%であり、このまま放置していると農業就業人口は確実に200万人を切る。わが国の職業問題を基本に考えるよりむしろ、産業別労働力のゆがみ、ひずみともいえるのが現状である。

 この数字を追いかけていくと、大まかな計算ではあるが、現在の食料自給率(カロリーベース)40%は、10年後に確実に30%を切る。

 さらに日本の人口は、今後、大幅に減少すると推定されているので、2012年に200万人を切ると予測される農業就業人口は、20年には150万人を割り込む可能性がある。マスコミがどんなに騒ごうが食料の自給率は減少の一途をたどり、われわれの家計の食料に占める割合、つまりエンゲル係数は近未来的には50%を超えることも起こり得る。

 私の故郷、鹿児島県を例にとると、農業人口は8万8000人。県の人口が157万人なので農業人口率は5%。このなかで他の業種と見合うだけの収入を得ているのは、わずか3800人。つまり4.3%の人しか農業単独で生計を立てるのは不可能な状態となっている。

 根本的には若者の意識レベルを変革し、特に小中学生に危機感を持ってもらうための農業教育を迅速に開始し、労働人口比率の側面から打開策を講じなければ、前途は真っ暗といっても過言ではない。

 アメリカの食料自給率120%、フランスの100%をはじめ、先進国は圧倒的に食料供給が安定している。どこかの総理大臣が、先進国首脳会議で最重要課題と意気込んでいた環境問題。結局、満足な成果を挙げられなかった。

 日本にとって必要なのは途上国首脳会議に参加し、安定した食料の供給を踏まえながら、農業人口増の強力なカリキュラムを作ること。明日からでも対応しなければならない。まさに崖っぷちである。


2008年8月19日号