COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.04.22

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第57号 ネット社会の弊害 『一億総中傷国家・人権被害42%』

 私たちは生まれ持った永久の権利として、基本的人権というものを持っている。これは憲法で保障されている権利で、内閣府による「人権擁護に関する世論調査」で、この権利の存在を「知っている」と答えた者の割合が77.8%。知らない人が22.2%もいるというのは、いかがなものであろうか。

 一般的に、この基本的人権を侵されることを人権侵害と呼ぶが、この数年、特にインターネット等々の普及で人権を侵害される人が急増している。昨年6月から7月に全国の20歳以上の男女3000人を対象にした調査の結果、複数回答であるが、「あらぬ噂や他人からの陰口」を書かれたり言われた人が、全体の42%と過去最高となった。それ以外にも、「名誉・信用の棄損、侮辱」等も全体の20%で、前回の調査から8ポイントも上昇している。

 さらに加えてプライバシーの侵害やらイジメにもつながる悪口・陰口を入れると、実は身を守るために立派に裁判を起こしてもよいと思われる犯罪が急増している。しかもパソコンの掲示板や携帯電話など、急激に普及した商品であるために全国日本列島都市規模別にみると大きな差異はなく、しかも性別でみても年齢別でみても、ほぼ全般的にフラットにこの被害者は増えている。

 昔は新聞やテレビなどで「人権問題」とか「人権が侵害された」というニュースが報道されることがたびたびあったが、この数年、えん罪や障害者問題などを除いては次第に少なくなってきたとさえ思われる。
この国の特徴でもあろうが、「そのうちなくなる」とか「しょうがない」とか、「こちらにも非がある」とか、つまり、泣き寝入りをしている人が無数にいるのではなかろうか。特に悪口・陰口の類に関しては笑って見過ごせばいいという、妙に寛大な方々もいると思うが、これを野放しにしておくと子供のイジメの問題もなくならないし、一億総中傷国家が出来上がってしまう。

 約半数の人が「人権を侵害される事件が多くなってきた」と答えた原因を作っているインターネット関連の各社は、政府の規制が始まる前に、自主的にセーフティーネットを構築してほしい。


2008年4月22日号