COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2008.01.08

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第44号 救急救命士が2万人を超えた! 『救急車出場件数対前年比5万件減の523万件』

 最近、街中を走る救急車の数が減ったように思われる。年間の救急車の出動件数は平成18年中で523万件。対前年比5万件も減少している。驚くべきことに、この数字は昭和38年に救急業務が法制化されて以降、初の減少となる。

 減少した原因と背景は、主に交通事故の件数が減少したこと、また救急車の適正利用の普及、さらに平成18年度はインフルエンザが大流行しなかったことなどが考えられる。

 救急車は約6秒に1回の割合で出場しており、なんと国民の約26人に1人が搬送されたことになる。現場到着まで約6分で、携帯電話や写メなどの普及により、救急車が事故現場へ到着するまでの時間がさらに早くなったと思われることを考えると、わが国の救急態勢の高度化が着実に進展しているといえよう。

 平成19年4月現在、救急隊数は4940隊と、5000隊に迫っている。救急隊員も着実に増加し、なかでも救急救命士の資格を有する消防隊員は初めて2万人を超えた。また、救急救命士のいる救急隊は全体の85%に及び、4200隊近くが救急救命士を擁している。したがって、応急処置の内容も一段と高度になり、この組織の充実のおかげで、年間交通事故死亡者数も激減したといえる。

 さらに数字を追いかけると、救急隊員数は5万9491人、救急救命士数は2万59人、一般的に救急隊員は3人で稼動することが多いが、そのうち1人は救急救命士である。器具によって気道を確保したり、薬剤投与が可能であったり、静脈路を確保したりと、医療特定行為によって命をとりとめた人もおそらく数千人になるであろう。

 各消防機関の実施する応急手当て普及講習の受講者数も年々増加し、平成18年中で150万人に迫っている。
つまり、救急車が到着する前に幸いに心臓マッサージ、人口呼吸などの応急手当てを受ける人も今後増えてくる。ここ3年でピークを迎える団塊の世代の退職者の社会参加意識が強ければ、日本全国の人命救助にかかわる大きなインフラとなってくるのではなかろうか。


2008年1月8日号