COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.07.10

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第24号 最大のエイズ危機 『HIV感染者・AIDS患者数1358人』

 1358人。この数字は、2006年1年間に報告されたHIV感染者とエイズ患者の合計数である。患者数が406人、HIV感染者数が952人で、ともに過去最高となってしまった。
患者・HIV感染者数は、95年の464人から10年余でなんと3倍に激増している。とくに04年からは患者・感染者数が1000人を超える深刻な状況が続く。マスコミが騒がなくなって久しいが、日本は今、最大のAIDS危機を迎えているのだ。

 急増の原因はさまざまあろうが、「感染防止のカギであるコンドーム着用率に問題がある」(ある専門家)との指摘が出ている。

 見逃せないのは、成人向けサイトやビデオ・DVDにおいて、コンドームを使用する場面がほとんどないことだ。その手の業者がより刺激性を高めるために、より若者を取り込むためにコンドームなしの無防備な状態での映像を垂れ流しにしている。

 エイズ動向委員会の調査によると、感染経路は約87%が性的接触によるもの。そのうちの6割強は同性間での性的な接触である。異性間では若い世代に感染者が多いのが特徴。コンドームなしのセックスに走る若者が多いからではないか。

 そんな現状を改善しようと、コンドーム関係の啓蒙イベントもあちらこちらで開催されている。しかし、コンドームの消費量は年を追うごとに減り続けているのが現状だ。厚生労働省の調査によると95年に約5億9000万個だったコンドームの国内出荷数は、05年には約3億5200万にまで減っている。10年間で4割もの大幅減少だ。

 ニューヨークではこの春から市ブランドのコンドームが登場し、バーやレストラン、医療施設、学校などで無料配布されているという。性病やエイズ予防の対策のひとつだ。

 前出の専門家は、「HIV感染者はある一定の数字になると等差級数的に拡大していく」と警鐘を鳴らす。いま、食い止めないと取り返しのつかないことになる。行政の責任は重大だ。


2007年7月10日号