COLUMN:日刊ゲンダイ「数字のホンネ」

 

2007.05.22

日刊ゲンダイ「数字のホンネ」第17号 2つの格差 『平均最低賃金673円/時給』

 賃金は、その国の経済力や文化度、今後の発展を見る上での大きな基準である。現在、政府では、最低賃金法の改正を進めているが、正社員・パート・アルバイト・臨時などの雇用形態や名称にかかわらず、最低賃金の問題は大きな矛盾をはらんでいるように思える。

 特定の産業ごとに設定される産業別最低賃金、地域の実情を考慮し決定する地域別最低賃金の2種類の最低賃金が存在するが、2つの大きな問題を抱える。
 
 ひとつは国内格差だ。最低賃金の全国平均は時給673円。1日8時間労働したとしても、日給約5400円。一ヵ月あたり22日間労働の平均で11万8800円、年収にして142万円にしかならない。
地域別最低賃金の最高額は東京都の719円。これに対し、最低水準の青森、岩手、秋田、沖縄の4県は610円と、109円の開きがある。東京都と沖縄の一ヵ月の賃金格差は1万9000円となり、1日1000円近い賃金格差が存在する。

 2番目の問題は国際格差。世界を例にとっても、先日大統領選挙が行われたフランスがトップで8.27ユーロ(約1347円)、イギリスが5.35ポンド(約1276円)と、日本は先進国で最低水準にある。

 こんな低水準では、労働意欲はそがれてしまう。もし、働く意欲を失った人々が、生活保護をうけることになったとすると、いったいどうなるのか。生活扶助を加えた生活保護費は約14万円。つまり最低賃金を1万4000円以上も生活保護費が上回ることになる。

 フリーター、ニートを合わせると500万人以上になるという。ただでさえ厳しい雇用環境にある彼らが、あまりの低賃金に労働意欲を失えば、社会的損失が大きくなり、社会コストは増大する。政府だけでなく民間企業もこの最低賃金の改善に積極的に取り組むべきだ。


2007年5月22日号